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【日本経済】鉱工業生産指数から「日本の経済」を考えてみた。

6月の鉱工業生産指数(確報)が発表されました。

鉱工業生産指数は、日本の製造業の景況を表すと同時に、経済の先行指標になるので、とても重要視されてきた経済統計です。

そのデータを使って、「日本経済」や「日本株」について少し考えてみたいと思います。

ポイントは、

① 6月の鉱工業生産指数は(前月比)▲4.2%の減少と、大きく落ち込んだ。

② 実は、日本の製造業はずっとダウン・トレンド(縮小傾向)である。日本経済にとっては、旧来の製造業から新しい産業へと転換していくことが重要なのではないか? また、日本経済を見る上で「製造業に過度に重きを置くスタンス」もひょっとして現実を見誤る原因になるのではないか?

③ それでも「成長している製造業」はあるので、そこが投資の狙い目になるかもしれない。

といった感じです。

それでは早速。


1.そもそも「鉱工業生産指数」って何?

鉱工業生産指数とは、鉱業と製造工業の中から代表的な製品を選び、その製品群の生産・出荷・在庫の状況を毎月、集計している統計調査です。

鉱業とは、金、銀、銅、石灰石、石油などの鉱物の採掘を行う産業。

製造工業(=製造業)は、自動車、電子機器、半導体製造装置などの重厚なモノから、家具、化粧品、玩具、食料品などの身近なモノまで含まれています。

平たく言うと、日本の採掘業と製造業全体(≒ 広く”ものづくり産業”)の業況を集計した統計調査です。

そして、「指数」のカタチで発表され、現在は2020年を100とした数値になっています。

鉱工業は日本のGDPの約20%を占めるのですが、それに加えて周辺業界である卸売業、小売業、物流業などにも影響を与えるため、とても重要視されてきた経済指標です。

2.6月の鉱工業生産指数は(前月比)▲4.2%と大きな落ち込みに。

6月の鉱工業生産は、▲4.2%と大きく落ち込みました。

落ち込みの原因は(製造業において)広範囲に生産が落ち込んだことですが、特に、①認証不正問題のあった自動車(▲8.9%)、②半導体製造装置が含まれる生産用機械工業(▲9.0%)は中国や台湾への出荷が減少、③集積回路(▲8.2%)など(好調のはずの製造業でも)生産が落ち込んだことが大きかったようです。

以下のグラフは「直近1年半」の鉱工業生産指数の推移です。2024年に入って指数が大きく落ち込んでいます。5月はかなり回復したのですが、6月に再び大きく落ち込んだといった推移になっています。日本経済がなかなか回復しない原因のひとつです。

経済産業省の発表データをベースに、当社にてグラフを作成

3.少し長い目で見ると、日本の鉱工業生産はダウン・トレンド。

鉱工業生産指数を「2018年1月~2024年6月」の期間でグラフ化してみました。

経済産業省の発表データをベースに、当社にてグラフを作成

グラフの通り、ダウン・トレンドになっています - 日本のものづくり産業は縮小しています。

具体的な指数は、2018年1月が112.3 → 2024年6月が100.0ですので、6年半で▲11.0%の減少となっています。

(前述の通り)日本の鉱業・製造業は「業界として縮小している」ということなのですが、より正確に言うと「日本の産業構造は、鉱業・製造業から他の産業にシフトしている」ということだろうと思います。

すると、「製造業が、日本経済を牽引する」とか、「企業の設備投資が増加し、日本経済の成長に寄与する」といったことは「可能性が低いのではないか?」と思ったりもします。

むしろ、より付加価値が高く、日本が勝てる分野へ素早くシフトすることの方が「日本経済の成長」につながるのではないかと思ったりもします。

オールド・エコノミー化した産業にこだわり、そこへ継続的な投資をすることが、日本経済の停滞の一因になり、賃金が上がりにくい構造をつくる要因になっていないか? という点が気になります。

ちなみに、(2018年1月~2024年6月の期間で)最も大きく落ち込んだ業界は、無線通信機、ボイラ・原動機、時計などの業種です - 以下、最大の落ち込みを記録した10業種をグラフ化しています。

経済産業省の発表データをベースに、当社にてグラフを作成

反対に、同期間に最も成長した業界は、事務用機器、電子応用装置、集積回路(IC)などとなっています - 以下、グラフです。

経済産業省の発表データをベースに、当社にてグラフを作成

大きく縮小している業界がある一方、大きく拡大している業界があるので、鉱業・製造業の中でも新陳代謝が進んでいるということだと思うのですが、「全体として鉱業・製造業は縮小している」「ひょっとして、新陳代謝のスピードが遅いのかもしれない」という点はやはり気になります。

それでも「成長している業種」の中には有望な産業・企業があると思いますので、それらの中に「有望な投資先」があるかもしれません - 改めて「業界を選ぶ」ことの重要性を痛感します。

4.直近(2023年1月以降)に絞ると、もう少し異なる構図になります。

最後に、「昨年1月~今年6月」の鉱工業生産指数から「期待できる業界」を考えてみたいと思います。

以下は、同期間に「最も生産が拡大した業種」のトップ20です。

経済産業省の発表データをベースに、当社にてグラフを作成

1位 航空部品、2位 集積回路(IC)、3位 機械工具といった順番です。

航空部品は+42.9%の伸びで断トツの1位です - 正直、こんなに航空部品が伸びているとは思いませんでした。

ちなみに、経産省が再び「日の丸航空機」のプロジェクトを進める方針のようですので、引き続き「航空部品」は注目かもしれません。特に、自動車がEVにシフトすることで、多くの自動車部品メーカーの仕事が無くなる恐れがあります。その代替として「航空部品」が計画されているのかな・・・と思っています。

また、工作機械受注のデータとも重ねながら注目セクターや注目企業を発掘するのもいいかもしれませんね - 少しトライしてみようと思います。

と、こんな感じです。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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