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【日本株】ファストリ(9983)の決算について。

10/10に、ファーストリテイリング(9983)が通期の決算を発表しましたので、今日はそのことについて書いてみたいと思います。


1.サマリー

先に、サマリーを書いておきます。

A) 決算は素晴らしい内容。特に、市場規模が大きな海外市場において高い成長を遂げている点が素晴らしい。

B)今期も売上げは9.5%成長と高い値を計画。ただ、中国ビジネスにやや不安が残るが、そこは同社の「現場力」に期待したいところ。

C)業績は素晴らしいのですが、PERが43.4倍(@10/11終値)とかなり割高。ここから参戦するのは、ちょっと怖い・・・?

D)同社が快進撃を続ける要因は4つ - ①大きな市場をカバーしている、②情報製造小売り業というカタチ、③強い現場力、④企業文化への投資。

では、以下で詳細を説明します。

2.決算は絶好調!

とても素晴らしい決算でした。

特に、①売上げが3兆円超え、②売上げ・利益ともにすごい成長率、③市場規模と利益率の大きな海外市場が事業の主軸になっている、といったポイントが目を引きました。

終わった期(2024年8月)の業績は、
 売上げ 3兆1,038億円 (前年比)+12.2%
 営業利益 5,009億円 (同)+31.4%
 当期利益 3,719億円 (同)+25.6%

売上げが2桁成長していること、営業利益が30%を超える成長をしていることなど、「すごい決算!」という印象です。

同社の決算短信の抜粋(2024年8月期)

売上げの構成は以下の資料のようになっていますが、海外事業が売上げで全体の51.9%、営業利益で61.7%を占めるまでに成長しています。市場が大きく、利益率の高い海外市場が売上げの半分以上を占めていますので、引き続き「成長期待」が持てるように思います。

同社の決算説明会資料より抜粋(2024年8月期)

以下は、主軸になっている「ユニクロ事業」の国内と海外の売上げの内訳です - ユニクロ事業の売上げは2兆6,440億円あり、売上げ全体の85.2%となっています。

海外事業の中で、規模としては「グレーター・チャイナ(中国・香港・台湾)」が最大なのですが、中国の景気失速によって、ここがやや心配なエリアです。

ユニクロ事業の地域別売上げ構成(2024年8月期)

以下は、売上げの成長率(終わった期) - 国内の成長率は低いものの、海外の成長率が軒並み2桁です。上記の売上げのグラフとあわせて見ていただくと、海外事業が同社の将来を牽引するのがよくわかっていただけると思います。

地域ごとの(前年比)売上げ成長率(2024年8月期)

以下は、営業利益率(終わった期) - ポイントは、すべての地域が15%以上(と、高い値)になっている点です。

同社は海外事業において、いろいろ苦労を重ねてきました(簡単に成功したわけではありません)。しかし、地道に試行錯誤や創意工夫を重ねてきた結果、すべての地域において営業利益が15%を超えるような高収益体質をつくり上げたことになります(すごい!)。

地域ごとの営業利益率(2024年8月期)

3.今期の業績は?

今期の業績予想も、なかなか高い値になっています。
 売上げ 3兆4,000億円 +9.5%
 営業利益 5,300億円 +5.8%
 当期利益 3,850億円 +3.5%

同社の決算短信の抜粋(2024年8月期)

唯一、心配なのは「中国のユニクロ事業」です。

終わった期、上期は好調だったのですが、下期は減収・減益と、後半が厳しかったようです。中国は景気が良くないので、その影響をかなり受けているようです。

店舗のスクラップ&ビルド、ブランディングの強化、各店舗のニーズにあった商品構成など、試行錯誤を重ねており、「着実に改善している」とのことなので、ここは期待するしかないという感じでしょうか - 同社の「強い現場力」の見せ所だろうと思います。

4.で、ファストリは買いなの? 売りなの?

個人的には「参戦しない」です。

仮に、すでに保有している場合でも「売却して、利益を確定する」です - ひょっとして、もう少し「上」まで行くかもしれませんが、そこは「潔く諦める」です - チャレンジャーでなくて、すみません。

業績はすごいのですが、PERが43.4倍(10/11終値)と高いので、かなり「割高」です。

株価の勢いがあるので、もう少し「上」まで行く可能性は十分にあると思うのですが、「どこでピークアウトするか?」がまったくわからないので、現状の54,490円で十分! という感じです。

※ あくまでも、個人的な意見なので正解ではない可能性も十分にあります。ご注意ください。

とは、言っても、別の考え方もあると思いますので、いくつかの材料を書いてみたいと思います。

ひとつは、数ヶ月~1年くらいの時間軸で20%程度のリターンを狙うのであれば、「あり」かもという考え方。

大型株ですし、業績は成長しています。また、世界中の機関投資家がウォッチしている企業ですので、株価の形成はかなり合理的になっていると思います - なので、よくわからない理由で大きく値下がりした! といったことが起きにくいので、そこは安心できます。

念のため、ちょっと長い期間の株価をチェックしてみます。以下は、1999年11月末から先週末(10/11)までのチャートです。

1999年11月末~2024年10月11日(月次チャート)

そして、上記の期間を「1年毎」に区切った時の「それぞれの1年の騰落率」が以下のグラフです - 1999年11月末~2000年11月末、2000年11月末~2001年11月末・・・といった具合。

1999年11月末~2024年10月11日を1年毎に区切り、
その1年間の騰落率をグラフにしています - 直近だけ~10/11まで。

(2013年以降はアベノミクスで株式市場が好調だったので)株式市場にいろいろな嵐が吹き荒れた2000年代(ネット・バブルの崩壊、リーマン・ショックなど)で見てみます。

勝敗は、7勝4敗となっています - 1999年11月~2010年11月の11年間。

そして、この期間の株価パフォーマンスは、+39.3%です。

この時期は、同社が「フリース」などの新商品を武器に、国内で急成長していた時期です - ただ同時に、海外市場にも挑戦していたのですが、その頃はなかなかうまく行かず、試行錯誤をしていた時期でもあります。

この期間、「1年」単位で見た時に、最高のパフォーマンスは2007年11月~2008年11月の+50.0%。反対に、最低は2000年11月~2001年11月の▲54.8%です。

このグラフを見て、「これくらいの下落なら耐えられそう!」と感じれば、「参戦あり」かもしれません - でも、ご注意ください。

反対に、勝率や下落率の大きさに「懸念」を感じるようであれば、「参戦しない!」だろうと思います。

もうひとつの材料は、2022年以降、日本の株価を押し上げてきた「日本のインフレ率は2~3%ほどあるが、ゼロ金利が続いている」という環境が今後も継続すると考えている場合です - 加えて、米国の株式市場が引き続き堅調に推移するという前提で。

この場合、ひょっとして、もう一段の日本株上昇があるかもしれません。その際には、ファーストリテイリングは最優先で買われる銘柄になるのではないか、と考えます。

と、このあたりが「考える材料」になるかもしれません。

どこまで参考になるかわかりませんが、個人的な考えです - ですので、「そんな考え方もあるのかぁ~」程度に読んでください。

繰り返しになりますが、PERが43.4倍(@10/11終値)ととても高いので、そこには注意してください。

5.最後に「なぜ、ファストリは強いのか?」について。

同社は、本当に素晴らしい企業で、世界中で「ユニクロ」のブランドを定着させています。

「同社の強さは、どこにあるのか?」について、自分なりの解釈を書いてみたいと思います。

主なポイントは、4つです。

① 「ベーシックで、カッコいいデザイン」という選択。
ユニクロはベーシックなデザインがベースです。だから、幅広いお客さんをカバーできる立ち位置を取れていると思っています - すべてのお客さんがターゲットになるので、市場がとても大きくなる。

② 情報製造小売り業の実現。
従来の「小売り業」から、「製造まで踏み込んだ事業モデル」に移行したことで、「良い品質」を維持したまま「圧倒的な低価格(=コスト競争力)」を実現しました。

上記①の「大きなターゲット市場」に対して、「圧倒的な価格と品質」で勝負している構図です - ユニクロの勝ち筋だと思います。

加えて、事業の規模が拡大する中で、同社の強みはさらに強化・拡大されています - 高品質・低価格・高デザイン性・ブランド力・現場力など。

③ 強い現場力。
同社の現場力は、とても強いように思います。

一昨年、急激な円安・ドル高が進んだ時、同社は「商品の追加生産」において、大きな為替差損を出してしまいました。商品が想定以上にたくさん売れた場合、「追加生産」が発生しますが、その「追加生産」分は事前の為替予約がされていません。よって、急激な円安局面と重なると、どうしても「為替差損」が発生してしまいます。

その「大きな損失」を経験した同社は、すぐさま「その対策」に乗り出し、翌年には「対応策」を完成させたようです。

同社の中(店舗も本部も含めて)には、こうした機動的でイノベーティブな現場力が存在するようです。

そして、その現場力が同社の創意工夫や試行錯誤の精度を飛躍的に高めているようです。

④ 企業文化への投資。
同社は、決算説明会の中で「企業文化の醸成と植え付け」といった点の説明に、とても多くの時間を使っておられます。強い企業にしていくためには、「企業文化」がとても重要だと考えておられるためだろうと思っています。

個人的に、「企業の盛衰を決めるのは、企業文化だ!」と思っています - 昔、勤めていた会社で、その神髄を経験したためです。

例えば、同社の理念や同社が信じる価値観を明確にして、それらが個々の社員にしっかり定着するようにいろいろな施策を打っておられるようです - ちなみに、そうした施策には小さくないコストがかかると思いますが、そこに重要性を感じ、実行しておられるのだろうと思います。

同社の現場力が強いのも、機動力があったり、目標を達成する執着心が強かったりするのも、根っこは「企業文化」のように思います。

「同社が強い」という事実。その根底にあるのは「同社の中には、勝つため・強い企業であるための企業文化がしっかり根付いている(経営陣が根付かせている)」という点だろうと思っています。

少し長くなりましたが、ファーストリテイリングの決算に関する(個人的な考えも含めた)おさらいです。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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