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【日本株】ソニーグループ(6758)- コンテンツ・クリエイターとしての可能性。

昨日、ソニーが米国の映画館運営会社「アラモ・ドラフトハウス」を買収するというニュースがありました。

そのニュースを見て、「ソニーの可能性」という言葉が頭に浮かんだので、そのあたりのことについて書いてみたいと思います。

特に、「コンテンツ・クリエイターとしてのソニーの可能性」という視点です。

では、早速。


ソニーの課題

ソニーが現在、直面している最大の課題は「成長が鈍化した」ということではないかと思っています - なので、「会社を成長させる道筋」を見つけないといけない、と。

以下は、2007年3月期~2025年3月期(会社予想)の売上げ、営業利益、当期利益の推移です。直近の3~4年は成長率が鈍化しています - 特に、利益が鈍化しています。

2022年3月期~2025年3月期(予)の成長率は、売上げ(年率)7.5%増に対して、営業利益2.0%増、当期利益1.6%増となっています。

同社の決算短信から数字を抜粋
同社の決算短信から数字を抜粋
同社の決算短信から数字を抜粋

部門毎に分解すると、以下のようになっています - 2022年3月期と2025年3月期(会社予想)の比較です。

同社の決算説明会資料より数字を抜粋
同社の決算説明会資料より数字を抜粋

部門についての注釈です。
(注1)「金融」部門はこの中に含めておりません - ソニーが金融事業を切り離す方針のためです。

(注2)部門名について少し注釈を加えておくと、「カメラ・テレビ等」となっているのは正式名称「エンターテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)」のことで、ソニー株式会社が中心となっている事業部門です。いろいろな製品を開発・生産しているのですが、カメラが重要な製品になっていることと、昔からやっているテレビなど家電製品もここで生産していることから、「カメラ・テレビ等」とわかりやすく記載しています。

(注3)同じように「イメージング等」というのは正式名称「イメージング&センシング・ソリューション」のことです。カメラに使うイメージ・センサーなどのデバイス(電子機器)を開発・生産している部門です。

部門名の注釈です。

2022年3月期と2025年3月期(会社予想)を比較すると、ゲームが売上げを牽引しています。しかし、営業利益では減益となっており、これが「成長鈍化」の大きな要因です。

ソニーの看板商品で、世界シェア50%を占めるイメージ・センサーも売上げ・利益ともに拡大しています - ただ、足元はスマホの販売が世界的に低迷しているため、一時期ほどの勢いはありません。

あと、音楽は堅調に売上げと利益を伸ばしているのですが、映画とカメラ・テレビ等が足を引っ張っており、トータルだと「成長の鈍化」となっています。

「営業利益の伸び」をグラフ化したのが以下になります。

同社の決算説明会資料より数字を抜粋

音楽とイメージング以外は、利益がマイナス成長です。

これが、ソニーの課題であり、株価が今ひとつ上がってくれない原因だと思っています。

ソニーをハードとソフトに分けてみた!

ソニーは、「エレクトロニクス・カンパニー」と呼ばれてきましたので、ハード製品の印象が強いのですが、現状、ハード製品よりもソフト製品(=コンテンツ・ビジネス)の方が大きなウエイトを占めています。

ゲーム、音楽、映画を「コンテンツ・ビジネス」と定義し、カメラ・テレビ等とイメージング等を「ハード製品ビジネス」とした場合、売上げと営業利益は以下のようになります - 2025年3月期の会社予想の数字です。

同社の決算説明会資料より数字を抜粋
同社の決算説明会資料より数字を抜粋

コンテンツ・ビジネスが全体の3分の2を占めており、「実は、ソニーはコンテンツ・クリエイティブ・カンパニーだ!」ということです。

そして、「そう定義することで、大きな可能性が見えるのではないか?」というのが、この note の趣旨です。

こちらのデータを見てください - 経済産業省が2021年12月に公表した「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」という資料から抜粋した世界のコンテンツ市場の規模です。

経済産業省「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」資料より抜粋

世界のコンテンツ市場は、2016年が9,420億ドル(106兆円@112円)、2020年が9,090億ドル(97兆円@107円)、2025年(予想)が1兆830億ドル(168兆円@155円) - とても巨大な市場です。

ソニーのコンテンツ3部門の売上げ合計が7.4兆円ですので、遥かに大きな市場規模になります。

そして、その世界のコンテンツ市場の内訳が以下になります。

経済産業省「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」資料より抜粋

映像が約50%を占めており、最大のコンテンツになります。そして、大きく伸びる予想になっています - 映像は、テレビ、映画、ストリーミングなど。

ゲームは(やや規模は小さくなりますが)順調に市場を拡大しています。

音楽はさらに小さな市場になりますが、2025年に向けては拡大すると予想されています。

いずれにしても、多くの新興国が経済発展を遂げている中、映像、ゲーム、音楽などのエンタメ・コンテンツへの需要はどんどん大きくなっていくと思われ、「それを誰が獲るのか?」ということだろうと思います。

そして、「ゲーム、音楽、映画を主力事業として持っているソニーの可能性」という話になるのでは、と。

特に、(個別事業として、それぞれの事業を展開するのではなく)3つのコンテンツを有機的に結び付けることで、より多くのお客様を、より強く惹きつけるエンタメ・コンテンツにできるのではないか、とも。

もちろん、そこには「クリエイターとしての力量」や、さらに上の階層にある「経営における戦略性」や「(しがらみを排除した)実行力」といった要素が決定的に重要になるとは思いますが。

実際に、ソニーがどこまで実現できるかわかりませんが、「大きな可能性」は存在するように思います。

アラモ・ドラフトハウスの買収から垣間見えるソニーの将来像

前述の道筋に沿って考えた場合、「アラモ・ドラフトハウスの買収」はソニーが創り出すコンテンツを顧客に届けるデリバリー・チャネルの買収になります。

あるいは、アラモ・ドラフトハウスは「食事をしながら映画を観る」というスタイルの映画館らしいのですが、ソニーはコンテンツだけではなく「体験」まで含めて創造しようとしているのか? といった憶測もしたくなります。

実際に、ソニーがどこまで”守備範囲”として考えているかはわかりません - パラマウント・グローバルの買収では、CBSやMTVといったチャンネル・ネットワークは売却する計画だと伝わりましたので。

それでも、(コンテンツ・ビジネスの市場が大きくなる中で)魅力的なコンテンツの創造と、それを有機的に活用するビジネスによって、ソニーの「可能性」は大きく広がるのではないかと考えます。

特に、ゲーム、音楽、映画が単独ではいずれも「オールド・エコノミー的な産業」になってしまうのですが、有機的につなぎ合わせることで「新しい価格設定力を持つビジネス」に仕立て直すことも可能なのでは? と考えます。

そんなソニーグループですが、6/14時点で株価は13,035円。PERが17.3倍で、PBRが2.1倍でトレードされています。ROEは13.1%ありますので、収益性も悪くありませんし、割高でもありません - と、言っても、現状の成長率だと決して割安ではありませんが。

ソニーの将来に対して「可能性」が具体化してくれば、とてもおもしろいチャンスになるように思います。

ソニーのM&Aの記事を読んで、頭に浮かんだことでした。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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