【日本株】ロードスターキャピタル(3482)の中間決算 - 利上げの影響は?
ロードスターキャピタルが今年度の中間決算を発表していますので、その件について書いてみたいと思います。
※ 念のため、私が個人的に考えていることですので、外れることがあるかもしれません。ご注意ください。
では、ポイントから。
① 中間決算は、とても好調だった!
② 利上げの影響は、(リーマン・ショックなどの特別な出来事がない限り)軽微だと思います。むしろ、利上げ後に金融市場が大きく変動したことで、日銀の利上げペースは(当初の想定よりも)スロー・ペースになるのではないか?
③ リスクとしては、(利上げよりも)日本経済が再びデフレに逆戻りすることではないのか?
④ 現在の同社の株価は「割安」では?
と、いった内容です。
では、早速。
1.中間決算は好調!
同社の今年度の中間決算は、売上げが152億円(対前年同期比+4.6%)、営業利益が48億円(同+13.1%)、当期利益が29億円(同+24.0%)と非常に好調な決算でした - 営業利益と当期利益の伸び率が大きく、しっかり利益が拡大している点がとても心強いです。
また、ROEも29.5%で、とても高い収益性を実現しています - 営業利益率が32.0%、当期利益率が19.4%と驚異的な数字ですので、これがROEを押し上げています。
通期の会社計画は、売上げ376億円、営業利益115億円、当期利益69億円となっています。中間決算時点の進捗率にすると、それぞれ40.4%、42.1%、42.9%となります。
バランスシートに「629億円」の販売用不動産があり、しっかり含み益が出ているということなので、その一部を売却することで通期の売上げと利益は十分に達成できると思います - 特別なこと(リーマン・ショックなど)がない限り、(多分)想定通りの業績が発表されるのだろうと思います。
要は、「とても手堅く経営されていて、順調な業績だ!」ということだろうと思います。
2.利上げの影響はどうなのか?
(上記のように)足下の業績は堅調なのですが、それでも気になるのは「利上げの影響」だろうと思います。
その点はどうなのか?
結論として、(予想外の出来事がない限り)日銀の利上げは(同社の業績には)ほとんど影響なく、(同社の業況は)今後も順調に進んで行くのではないか、と推測します - 少なくとも、見通せるタイム・スパンにおいては。
むしろ、利上げ後に金融市場が大きく変動したことで日銀の利上げペースは制約される可能性があり、(それが)不動産市場にとっては(意図せず)プラスになったのではないか、とも思っています - 低金利が予想以上に継続されるので。
ちなみに、利上げによる影響は、①借入金利の上昇(=利払い負担の増加)、②銀行の融資姿勢が変化(=厳しくなる)することで資金調達が難しくなる、③不動産の買い手が資金調達しづらくなることで不動産の売却価格が低下する、などがあると思われます。
しかし、現状の0.25%への利上げや、近い将来のさらに0.25%の利上げでは、(同社にとっては)①の影響は軽微でしょうし、②と③の状況にはならないと思います。
特に、(同社の場合)保有不動産が東京5区を中心としたオフィス・ビルと、インバウンドの恩恵を受けるホテルですので、「同社は、勝ち組のエリアで戦っている」状況であり、日銀が(あと0.25%の)利上げに動くくらい(の好況)の方が業況は良いのではないかと思うくらいです。
むしろ、リスク・シナリオは「日本経済がデフレへ逆戻りするシナリオ」の方ではないかと思っています。
以下は、過去3年間の消費者物価指数(除く生鮮食品とエネルギー)の「伸び率」です - トレンドをわかりやすくするために、6ヶ月単位にしています(年率換算はしていません)。
グラフの通り、消費者物価の上昇率は段々と低下してきており、直近の6ヶ月間(2024年上期)だと0.7%の上昇です(年率にすると1.4%)。2022年から始まった国内の物価上昇は、ひょっとして終焉に向かっているのかも・・・と思えるくらいです。
この原因は「国内の個人消費が弱く、スーパーなどBtoCの事業者の方々が販売価格を上げられない」ということです - 要は、国内は再びデフレに逆戻りするリスクがあるということ。
日本のインフレは、円安、原油高、(輸入する)食料品の高騰などによる「輸入主導の国内インフレ」でした。一方で、(上記のように)国内の物価状況はどんどんデフレ的な水準へと後戻りをしているのが現状です。
もし、原油や食料品の高騰が終り、円安が円高に反転したりすると、輸入インフレは終焉します。そして、「国内のデフレ圧力が露わになる」という可能性があります - これが、可能性がそこそこ高く、大きなリスクになり得るシナリオではないかと思っています。
このシナリオの場合、不動産価格を押し上げてきた「インフレ > 金利」という環境が崩れる可能性がありますので、(同社を含め)不動産(および株価)にとっては結構なリスクになるかもしれない、と考えています。
3.で、同社の株価はどうなの?
最後に、同社の株価について考えてみたいと思います。
結論を先に書いておくと、同社の時価総額は現在(8/21)512億円なのですが、フェア・バリューとしては下限が465億円、上限が758億円くらいのレンジではないかと考えます。個人的には650~700億円くらいがフェアではないかと考えています(あくまでも、個人的な考えです。外れている可能性も十分にありますのでご注意ください)。
8/21現在、同社の株価は2,389円。時価総額にすると512億円です。PERは5.7倍、PBRは1.86倍となっています。
同社のROEは29.5%あり、2015年度以降の当期利益の伸び率は年率換算で35%あります。通常であれば、もっと高いマルチプルになると思うのですが、「不動産ファンド」的な事業であるため、上記のようなマルチプルになっているのだろうと推測しています。
問題は、「それって割安なの? それとも、妥当な価格なの?」という点だろうと思います。
上記した「465~758億円」というレンジに評価したロジックを書いておきたいと思います - やや我流のところがありますが、ご容赦ください。
基本的に、2つのシンプルな方法です。
ひとつは、「含み益を加味したバランスシートの価額」を計算しています。すると、「465億円」となり、これが下限だろうと考えます。
上記の図は、同社の2024年6月末のバランスシートです(シンプルにしていますが)。
少し加筆しており、それはバランスシートにある「販売用不動産 629億円」に、「含み益 250億円(40%と推測)」を加えています。
そこから負債を引くと、残るのは「株主の保有分」になるのですが、これが465億円になります。シンプルな引き算ですが、同社が保有する不動産をスナップ・ショットで評価した値です - 下限の目安になるのではないかと考えています。
もうひとつは、同社の今後の利益(=当期利益を使用)を一定の資本コストで割り引いて求めた現在価値です。
すると、579~758億円の水準になりそうです。
こちらは、「資本コスト」と「利益の成長率」をどのように見立てるかによって値が大きく異なります。
ここでは「資本コスト=15%」としています。通常、上場企業の資本コストは8%前後が一般的だと思うのですが、「不動産の価格変動リスクを背負っている」ということから、15%と高いレンジにしてみました。
一方、当期利益の成長率ですが、年率10%、15%、20%の3通りで計算しています - 向こう5年間はその成長率。6年目以降は、5%成長が続くという前提です。その上で、今期の当期利益を(会社予想の)68.95億円として計算しています。
その結果が、利益成長が年率10%の場合、579億円。15%だと662億円、20%だと758億円となります。
それぞれのフェア・バリューを(当期利益68.95億円に対する)PERとして表すと、8.4倍、9.6倍、11.0倍となります。
PERにすると、9.5~10.0倍くらいがフェア・バリューではないかということで、650~700億円と前述しました - 株価にすると、3,031~3,264円です。
ご参考までに、同社と同業他社のPERを下記しておきます - 同社のPERは、10倍くらいあってもいいような感じもするのですが、いかがでしょうか?
こうした理由から、個人的には、同社の現状の株価(2,389円、512億円)は「割安」なのではないかと感じています。
投資家心理としては、「利上げ懸念があるので手を出しにくい」や、「東京の不動産は結構、上がったので・・・」といったことが気になりますので、株価が動くには時間がかかるかもしれません。
それでも(少なくとも)継続的にウォッチする価値がある会社さんだと感じています。
と、こんな感じです。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。