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「福岡をもっと感じ良くするために」ー文字の道具屋が作る「ロゴ」ができるまでー

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こんにちは!飛田ゼミなんでも取材班の大塚千尋です。

突然ですが、これらのロゴを一つでも見たことがある方!
福岡にお住まいの方々なら多いのではないでしょうか?

外に出れば、必ずしも目にする「ロゴ」がどのようにできているのかを
気にする方は少ないと思います。
しかし、無意識に見ているはずなのになんだか記憶に残る。
何度も見たり聞いたりするうちに親近感が湧く。ふと思い出す。
このように「ロゴ」が持つ力、文字が持つ力って凄いんです。

今回は福岡ではかなり有名な「ロゴ」を作るお仕事をされているカジワラブランディング株式会社の梶原道生さんに取材させていただきました。

はじめに

ー初めまして。よろしくお願いします。
梶原さん「こちらこそよろしくお願いします。」
ー今日は梶原さんに、私たちが普段見るロゴがどうやってできているのかやロゴが持つ力、文字の力についてお聞きしたいと思います。ではまず梶原さんのされているお仕事について伺ってもよろしいですか?
梶原さん「私は以前から、デザインしたものが短期で捨てられるのがもったいないなと感じていて、ずっと残っていくものはなんだろうということを常に考えていました。広告のポスターって役目が無くなったら捨てられるじゃないですか。でも、広告のデザインや言葉というのは伝え手が伝えたい内容を受け手に伝えることができる機能をもっていて、この機能を伝え手と受け手との関係性の中で感じ良く伝えるデザインにする仕事をしています。」

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今日は福岡市の薬院にあるお洒落なシェアオフィスにて取材させていただきました。

ーデザインにはもともと興味があったのですか?
梶原さん「図画工作は好きでしたが、小さい頃から人の名前を覚えたり、漢字を覚えるのが苦手でした。だから分かりやすいものにはすごく心惹かれていて、自分が分かるものだったらみんなもわかるので誰にでも分かるものを作りたいなと思っていました。」
ーデザインの勝手なイメージですが「難しい」とか「生まれ持った感性が富んでいる人じゃないとできない」ということは以前私も思っていました。
梶原さん「そうですよね。デザインしようとしたり、かっこよくしようとすると、一般性から離れていくことへの迷いが私にもありました。」
ーその迷いを自分自身で解決されようとしたのですね。
梶原さん「この仕事って図画工作のような仕事で私は大好きなんです。こんな楽しい仕事があるんだと思いました。福岡で19歳の頃、学生アルバイトからデザイン事務所に入れてもらいアシスタントから現場経験をつみデザイナーになり、25歳の時に東京の一流広告制作会社から引き抜かれました。有名なコピーライターとアートディレクターの元で、一流のクライアントの仕事を一流のクリエイター達と一緒にデザイナーとして仕事をさせていただきました。4年間の経験を積み福岡に戻ってからは、岩田屋の広告制作を行う会社でアートディレクターとデザイナーの両方を兼務した仕事をするようになりました。広告制作では、コピーライターの言葉を軸に”どのような表現で伝えるか”を対象者に合わせて最適にコントロールする仕事のやり方、文字の書体選び一つでメッセージの伝わり方が変わることを常に意識してこの仕事を続けています。」

ー文字への面白さはどのように気づいていったのですか?
梶原さん「そうですね。まず、言葉のメッセージ性を対象者に伝えるための表現方法が3つあります。
一つ目は、言葉を情緒的に伝えるために写真を撮って、文字を主役に写真を背景にする方法。
二つ目は、言葉の意味に親近感を持ってもらうためにイラストで表現する方法。
三つ目は、言葉の文字をタイポグラフィーの表現で作る方法です。
文字をレタリングや手書き、筆文字などの個性的な文字表現にしてストレートに目と脳にメッセージを焼き付けます。その方法を体験していく中で、同じ言葉でも伝え方を変えることで、全然印象や捉え方が違うということに面白さを感じました。」

ー小さい頃から文字に対して触れる機会が多かったのですか?
梶原さん「遡ると、小5ぐらいの頃に見たコカコーラーの文字がかっこいいなと感じていて、赤い紙で切り抜いて壁に飾っていました。スカッと爽やかな波打ったかたちの「見る」と「読む」の合体したものが面白いと感じていました。」

ー面白いと思ったことを今お仕事にされているんですね。
梶原さん「そうですね。でも最初のアシスタントの頃は、思い込みが強くてよく怒られていました笑」
ー思い込みが強いとやはり先入観が出てくるんですかね?
梶原さん「自分がそう思っただけで、他の人は違ったというような言葉の解釈の違いに悩まされることが多かったですね。なんで勘違いしたのか?なぜズレが生じたのか?の人とのコミュニケーションの難しさを考えさせられました。最近、私は社会のズレをなくす役割をロゴの仕事を通して担っていると思っています。」
ーそのまま相手に伝えるってよく考えるとかなり難しいことですよね。私も記事を書いていてしっかり伝わっているのか悩むことが多いです。
梶原さん「そうですよね。伝え手が思ってることが、そのまま受け手に伝たわるように手助けするのがデザイナーである私の理想の仕事です。例えば、伝え手の本当に伝えたい思いや言葉の意味を相手の頭の中に運ぶ行為を宅急便の段ボール箱だとすると、中身の本質が何かは箱を開けてみないとわかりません。その本質を見出し届けていく手段として、段ボールの箱にロゴやラベルで中身を暗示できるようにすることで、伝え手が思ってることの本質を受け手に思い違いしないように伝わる手助けをする。イメージや焦点のズレをロゴの最適解により解消していきたいと思っています。」

人々の「不」を解決するために梶原さんが大切にしていること

ー何かそういう経験をしたエピソードなどを伺ってもよろしいですか?
梶原さん「JR九州の2枚きっぷ4枚きっぷがありますよね。2枚きっぷというのは1人で使うと往復、2人で使うと行きだけ使えるというものです。4枚きっぷも同じような原理でお得に使えます。これらのポスターは掲載期間を過ぎると無くなりましたが「2枚きっぷ」「4枚きっぷ」という言葉は、その機能を表す役割に非常に役に立ちました。このロゴを見るだけで、何を表しているかがわかるという、見るから読むという導線が情報が溢れる社会の中で目印になりやすかったのです。」

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ーインスタグラムもそうですよね。写真を見て面白そうと思ったら文章を読むという導線になっていますよね。最近はTikTokなど見るだけのものが多いように思います。
梶原さん「文字を読むのがめんどくさいと感じる人が多くなってきたのでしょうね。「見る」はその行為だけで完結します。「なんで?」となりません。でも、その「なんで?分からない」ということを問い続けることが、本質へたどり着ける一つの道でしょうね。常に本質を追いかけなければ力はつきません。自分が納得しないことが大切だと思います。」

ー貪欲に追いかける姿勢は大事にしていきたいですね。梶原さんのロゴを作るフローの中でクライアントさんのことを一から全て聞いていくのも本質を見抜くためですか?
梶原さん「そうですね。ロゴを作っていくときは、まずそれぞれのクライアントさんの現状把握をしていきます。現状の立ち位置が皆さん違いますので、それを知ることから初めていきます。」
ーなるほど。
梶原さん「aさんの文脈を辿っていく感じですかね。この仕事を始めたきっかけ、トリガーをなる部分を引き出していきます。変遷がありながら今があります。だから過去の文脈が見れれば未来のニーズの先のビジョンが見えてくるんです。そうすると、因数分解的にどういうロゴにしたら良いのかが見えてくるようになります。」
ー自ずと方向性が定まってくるのですね。
梶原さん「そうですね。「不」のつく言葉は沢山あります。不便、不安、不満、不足、不潔、不能など満足されていない、解決されていない、足りない状況を埋めるために、まずその人の「不」を見つけていきます。これは皆さん無意識に行動しています。お腹がすいていたら食べ物に目が行ってしまうとか、服が買いたいからすれ違う人の服装を見てしまうとか。これも自分の中の「不」を無意識に感じて起こっている行動だと言えますよね。無意識で行動している部分の共通性をいつも意識して、あまり高いところを意識しないように、誰にでもあてはまる共通性を土台に考え、大衆性を大事にしています。」

印象に残る「ロゴ」ができるまで

ーそのように作られるロゴってどうやってできているのですか?
梶原さん「まずは判断軸のズレを見直します。私の場合は誰にでもわかるものを作るという軸ですね、これは常に意識しています。」
ーなるほど。
梶原さん「まず、誰のどのような不満なのか?対象者を定め、どんな「不」を解決するのか?どんな価値を提供できるのかを考えます。その後、独自の強みを考えていきます。皆さんコンビニなどで新商品を買うとき、その味を知らないけれど知っているロゴがついている会社の商品だったら挑戦してみよう!など、その人の不(足りないもの)にカチッとハマる鍵を見つけることができればそれは強みなんですよね。」
ー確かにそうかもしれないですね。
梶原さん「そして、次のポジショニングは競合がある中ではかなり重要です。例えばお茶だと、自分のお気に入りは”綾鷹”で、それがなければ”お〜いお茶”。たまに”生茶”といった自分の中のベスト3が無意識のうちにあると思うんですよね。それ以外は存在していないのと一緒です。製品と商品の違いを表すのにラベルが大きな役割を果たしています。それをはいでしまうと違いが分かりませんよね。」
ー製品から商品になるまでについて行く付加価値のうちの一つがラベルなんですね。
梶原さん「強みの陣取りの中でとても大切なんです。そして、最後に買った人にどんな印象を持って欲しいかの方向性ですね。」
ーこのマトリックスを見ましたが、ロゴによってかなり印象が異なりますよね。

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デザインの方向性を決めるために使用するマトリックス

梶原さん「そうですね。ここの真ん中に信頼があります。常に信頼がないと成り立たないのでこれは大前提ですね。そして横軸は「母性」と「父性」。縦軸は「公」と「私」。これに基づいて右上の範囲を見ると不思議なことに線がシャープだと「責任感がある」というイメージを抱くんですね。」

ー確かに大学のロゴもシャープなものが多いですね。
あ!ポークたまごおにぎりだ!この前初めて食べました。袋に書いてあったロゴを見て、すぐにどんな食べ物なのか想像がつきました。

梶原さん「そうですか笑それはよかったです。私は大体、頭文字から作っていくことが多いですね。ポークたまごおにぎりもポークの「po」を取って繋げて豚の鼻をイメージし、丸の形を卵形にしました。色も迷いましたが、目につきやすいたまごの黄色にしました。」
ーそうだったんですね。このロゴ自体が商品への信頼につながっているんでしょうね。
梶原さん「そうですね。でもロゴはただの目印にしか過ぎなくて、姿、形、行いのバランスが信頼の全てだと思います。それが徐々にその人らしさに繋がっていくと思います。
ーロゴってその人やその組織を印象付けるのにかなり重要なんですね。

「ロゴ」が持つ可能性を信じて

梶原さん「そうです。ロゴの潜在能力は凄いんです。逆にロゴが中身と合っていないせいで100伝えたいことがあっても20しか伝わっていないこともあると思うんですよね。機会損失になっているのはもったいないので、「なぜズレているのか?」のきっかけをこれから探っていきたいですね。」
ーそれは梶原さんが今後やっていきたいということですか?
梶原さん「そうですね。時代の流れでズレていくのは仕方ないですが、ロゴをもっと大切だと伝えていきたいです。昔バブル時代に、ロゴが大量に作られたんですよね。今、それを見たらなんだか滑稽に見えるんです。でも、誰もこのロゴおかしいとは言えないので、私が経営者にそのズレを伝え、解決していきたいと思っています。」
ーそのズレを解決することの梶原さんなりの意義みたいなものはありますか?
梶原さん「時代感がズレたロゴを現代のニーズにチューニングすると自然と焦点が合っていくんです。さらに仕事に必要な名刺、ユニフォーム、看板、車両などのツールが一貫性したクオリティーを持って再生すると、社長が目指す北極星と社員の道標の方向が一致しだすようになり、モチベーションが向上します。さらに、社会にも存在感が増してきます。

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クライアントのブランディングデザイン活用のために基本的なロゴの運用の仕組みを記載しているマニュアル

ー事業内容が何なのか、分かりやすいロゴを見ると、その人やその組織の内面がオープンになっているようで親近感が湧きますよね。SNSにも発信しやすいですし!
梶原さん「そうですね。このような原理原則がわかってきたので、デザイナーさんにもこの考え方を伝えていきたいなと思っています。基本の描き文字の教室を開いたりとか、今もしているんですけど笑」
ー私もぜひ参加したいです!

文字の道具屋が教えてくれた可能性の方程式

梶原さん「文字というものは、人間で言う骨にあたる「字体」と皮膚に当たる「書体」によって印象が変わるんですね。文字は線でそれが何を意味しているのかが分かります。水と空気ぐらい無意識だけれど、コントロールできるようになれば伝え方も変えることができるので面白いですよね。」
ー普通の白のTシャツでも、絵をつけるだけで可愛く見えたりカッコよく見えたりしますしね。梶原さんは文字を武器に仕事をしていると言う感じですかね。
梶原さん「僕自身が戦っている訳ではないので、武器というより「文字の道具屋」ですね。」
ーなるほど。ではロゴを作る上で大事にしていることはなんですか?
梶原さん「自分の作ったものに対して、ボケとツッコミはするようにしています。客観性を忘れずに作るために、焦点をずらさないためにとても役に立つので(笑)思い込みすぎないように気をつけています。」
ーでは、最後に学生に伝えたいことは何かありますか?
梶原さん「私は見えないものを見えるようにするのがデザイナーであり、価値だと思います。あるけど見えていない、潜在的なゼロからイチを生み出すことはとても大変なんです。でも、可能性の方程式でいうとゼロはイチにもなるし無限大にもなります。だから、目の前が最悪な状況であっても何が起こるかわからないので前向きに頑張って行って欲しいです。」
ーゼロに見えても可能性的にはゼロではないということですね。でも、いろんなことにチャレンジするのも勇気がいりますよね。
梶原さん「私はもともと自己肯定感が低いんですけど、どうやったら自分が嬉しくなるかを追求したら「役に立つ」ことが嬉しいと思ったんですよね。あなたが必要だとかいう経験を積むと満足感が増してワクワクエンジンがかかってくるんですよね。得意なことを見つけて得意なことに枝葉をつけるようにしたらいいんじゃないかと思います。最初から苦手なことをするのは嫌になりそうですからね。行けそうだな!っていう自信がついたら苦手チャレンジしてみるとか、うまくコントロールしていくといいかもしれませんね。」
ーなるほど。ワクワクエンジンかあ…私もまだまだ自分の可能性にかけてみようと思います。本日はありがとうございました。

最後に

今回取材を受けてくださった梶原さんはシンプルな格好で穏やかな雰囲気をまとい、こちらの話にも丁寧に耳を傾けてくださいました。

デザイナーさんというとどこかとっつきにくく尖っているという印象は、かなりテレビでの情報に引きつられていたのだと確信しました。(笑)ロゴとは単にデザインではなくクライアントの本質(見えないもの)を見える化し、誰にでも分かるものを作ることなのだと思います。

「そういうロゴが福岡の街に広がっていけば、もっと福岡が感じ良くなると思うんですよね。私はそうしていきたいです。」と語っていた梶原さん。梶原さんが言う感じ良いとは、見たことがないけれど見たことがあるような懐かしさを含み、見た人の記憶に残るものなのだと感じました。

ーーーーーーーーーーーーーWritten by CHIHIROーーーーーーーーーーーー


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