【HiHi Jets】Summer Paradise 2020で見せた「逆境を逆手に取る力」
8月18日から8月20日の3日間、計8公演のHiHi Jetsのライブの配信ライブで、我が自担たる猪狩蒼弥くんが繰り返して語っていた言葉がある。
「僕たちは、配信ライブを現場(=通常のライブ)の妥協という形にするつもりはありません。完成された、一つのコンテンツとしてお届けしています」
リアルタイムでリアクションができない形式上、受け取り手としてもその反応を伝える責務があるのではないか?という思いにかられ、配信ライブという形について私が思ったこと、HiHi Jetsの今ライブについて私が感じたことをまとめておく。
まず、配信ライブの長所と短所を記そう。
配信ライブの短所として
① 観客に”置いてきぼり感”を与えてしまう可能性がある
② 演者に観客のリアクションが届きにくい
③ カメラの切り取ったものしか写らないため自担だけを見ることができない
点がある。
逆に長所としては
① 観客によって不快な思いをすることがない
② 演者側が見せたいものを見せられる
③ 機会の平等性
等があげられる。
猪狩くんの主張はシンプルだ。配信ライブの良さを前面に出す。観客はベッドで寝ていても、家事の片手間でも、ポップコーン片手にコーラを飲んでいても、遊園地で列待ちをしていても良い。演者側は、観客なしでも完成されたものを提供する。
考えてみれば、受け取り手としては、この手の形は音楽番組等で慣れているのだ。それでなお、配信ライブにある種の寂寥感や、現場の下位互換というイメージがある原因の一つには、生でアイドルを見たい、という気持ちの他に、アイドルのライブの中での大きな楽しみに「ファンサ」があるからだと思う。ジャニーズのライブにおいて、ファンサは重要な要素の一つだ。
特にHiHi Jetsは、常々、観客参加型のライブを主張している。ライブで猪狩くんがよく使う煽り、「声を出している方を優先的にファンサ致します」にもそれは現れている。演者と観客が互いに盛り上げ、ライブを完成させる。それがHiHi Jetsが、特にここ2年間かけて作り上げてきた形、いわゆるHiHi Styleであった。
それが封じられた。配信ではこちらのリアルタイムの反応は向こうには届かない。「一緒に作り上げるライブ」は叶わない。
だが、そこで折れるHiHi Jetsではないのである!!!
配信でしかライブができないなら、配信でしかできないことをする。通常のライブにはない良さを生かしたライブをする。それがHiHi Jetsである。好き。
HiHi Jetsの配信ライブのお話に入る前に、まず私が思う配信ライブの長所、先に述べたなかでも特に③の内容に触れたい。IslandTVで猪狩蒼弥くん・井上瑞稀くん両名が語っていた通り、配信ライブは買いたいと思って購入さえすれば誰でも見ることができる。私はこれを、「機会の平等性」と名付けている。
通常のライブでは、ライブに行きたいと思って応募しても、「抽選」という壁が存在する。全公演観たい、そのためにお金も用意して時間も空けた、という人であっても、「運」という自分にはどうにもできない要素に左右されてしまう。それを乗り越えて一日公演を勝ち取ったとしても、「席番」もまた運に左右される。同じ料金を払っておきながら、1列目で間近にアイドルを見られる人がいる一方で、前の人の頭しか見えない人もいる。誠に不平等なシステムであり、辛酸を舐めさせられた経験は、ジャニオタであれば誰しもあるのではないか。
配信ライブはその問題を軽々とクリアする。買いたいと思えば買える、周囲の人を気にせずに観られる。お金と時間と意思さえあれば機会は平等に与えられる。ジャニオタにとって夢のようなシステムではないか。ちなみに私は夢の全通を果たしました!!!ずっと言ってみたかった!!!
ということで、私自身システム的には結構肯定的に見ていた。一方で、ライブの中身、ひいては今回のサマパラ全体について、冷ややかに見つめる自分もいた。今までやってきたJohnny‘s Happy Liveは1グループ持ち時間30分程度で、持っているオリジナル曲を披露していた。それなら、BSプレミアムで毎週金曜日午後6時から放映している『ザ少年倶楽部』とそこまでの差はない。しかし今回、単独ライブで、1時間30分、しかもそれが1日に多くて3公演、3日間で計8公演行われる。猪狩くんが出ているなら何回でも見られる気持ちではいるけれど、もしかしたらマンネリ化したり、飽きたりしてしまうのではないかという懸念があった。
しかし、その不安は初回からあっさりと裏切られた。HiHi Jetsの配信ライブから、配信における工夫を抜き出していきたい。セトリに関しては数々の先駆者の方々があげられているものをご参照ください。
① 日替わり、週替わりのセトリ、井上瑞稀くんの「ザ・みずき倶楽部 俺担にQ」
今回ライブで披露したのはソロ曲・ユニット曲、アンコール含めて23曲。その中で、日替わりが2曲(×2パターン)、回替わりが2曲(×3パターン)の計4曲に加え、井上瑞稀のソロ曲はファンからの投票で決まる形(4パターン、各公演指定された2曲から投票)であった。しかも、回替わり・日替わりにはオリジナル曲を持ってくる挑戦的な姿勢である。ガチャ構成は賛否両論分かれるところではあると思うが、配信において、(特に12時、15時、18時と連続で観る観客にとって)毎回、次は何をするのかとドキドキすることができた点でプラスに機能していたと思う。
あとシンプルに、ガチャ構成といっても、演者側は23曲準備すればいいところを+6曲練習して準備して、という手間をかけて、私たちにエンターテインメントを提供してくれている、その姿勢が好きだし、応援していてよかったと感じる点の一つだ。
② 映像との融合
猪狩蒼弥くんのソロであるKlaxon、猪狩蒼弥くん・井上瑞稀くん(ずきうや)のユニット曲であるENTERTAINER、メンバー紹介RAP・だぁ~くねすどらごんでは、ステージ上で行われる演出・映像に加えて、カメラで映したものに上から編集を加えて歌詞を出したり、エフェクトを加えたりしている。特に猪狩くんのソロ曲では、映像の上を金魚が泳いだり、紫色の幻影的なスモークが流れたり、自転車が横切ったりと、映像と合わせて初めて完成する演出が行われていた。ライブを見ているというよりもまるでPVを見ているような感覚になる。
(ENTERTAINERにしてもそう。この曲に関しては語りたいことが多すぎるので紙面を改めます。)
猪狩くんが作詞したメンバー紹介ラップ、通称だぁ~くねすどらごんは、メンバーの名前を覚えてもらうチャンスだ。一方で、C&Rで盛り上がる曲の筆頭なので、配信でやるには難しい曲でもある。この曲では特に、映像に浮かぶ歌詞が盛り上げに一役買っていたと思う。
ゴシック体のあのなんともいえない感じも絶妙だ。
③ カメラワーク
普段のライブでは、自分の好きなアイドルを中心に見る。それができないという欠点を、欠点と感じさせないための工夫が、HiHiのライブにはあちこちにちりばめられている。専門的な点は知識不足なため、カメラの数が、やカット数が、といったことについて語れるわけではないが、カメラの切り替えを頻繁に行い、右からの視点と左からの視点を交互に、引きと寄りをまんべんなく撮ってくださっていて、普段だったらぜったいにみることができない視点で撮影されていたのが印象的だった。
「駆ける」での映像と立ち位置を合わせた演出も、カメラの位置が意識されることで完璧なものになっていて、よりエモーショナルに引き立てられていた。
「peak」から「BUTTERFLY」、「baby gone」のつなぎでは光る横棒の組み立てを画面外で行い、その間猪狩くんが視点を引き付けていた。切り取られない空間をうまく利用するのも、配信ならではだ。
Johnny‘s King&Prince Islandで披露していたINST曲のリメイク版では、画面を2等分にし、鏡合わせのようになった世界で踊る猪狩くんと瑞稀くんの演出があった。一回ライブの会議覗かせてくれませんか、スタッフさん含めHiHi Jetsのまわりには創造性に富んだ方しかいらっしゃらないのでしょうか。多分、メインステージの真ん中側から両サイドを撮っているのでしょうが、あんな幻想的でSFチックな見え方になるなんて。本当におもしろいつなぎ方だった。
「Oh, Yeah!」は配信でしかできないカメラワークの代表。いつものライブでは、お手振り曲(踊るのではなくバルコニーや通路を回りながらファンサをして回る曲)として披露されるこの曲がセトリに入ってくるとは思わなくて驚いていたら、まさかの本人たちがハンディカメラで撮影を始めるという。床にカメラを置いて五人が寝転がる修学旅行スタイルを提案した方に金一封贈呈します。ありがとうございます。
④ 半円にもなる光る棒のやつ
これまでも、椅子を使ったパフォーマンスなど、HiHiのライブには新しいアイテムが用いられることが多いが、これが今回HiHiのライブを文字通り彩るアイテムの一つ。電飾ローラー、電飾バトンなど、ライブの中で光を上手に操るHiHi Jetsの新たな武器の登場だった。光る棒の視線誘導効果は偉大である。横に並んでいればなんとなく左から右に目が追うし、縦に2本あれば通路になる。丸くつなげれば見てほしい範囲を指定できるし、画面上でのインパクトは絶大だ。曲と相まってBUTTERFLYのとき、私にはあれがベッドルームに見えた。「Yes!」 ほど直接的な表現じゃないけどあれやってること「Yes!」と近くありません?
⑤ サイモンとジョニー
一番力を入れたとおっしゃるのに書き漏らすわけにいかない。幕間を上手くつなぐサイモンとジョニーのトーク。物語でもなんでも、作品、とくに映画やドラマ、本などの鑑賞に時間を要する作品で重要になるのが「緩急」だ。2018年のサマステについて取り上げられていた『Myojo LIVE! 2018 夏コン号』では、「ハッチャけトークのあとは、パフォーマンスでビシッとキメるのがHiHi流」と称されていた。そのスタイルは今でも変わらず、HiHiはライブに緩急をつけるのが上手だ。ギャグパートの思わずくすっと笑ってしまうゆるさがあればこそ、完成されたパフォーマンスのクオリティが際立つと言っても過言ではない。そういう意味で、外から見てもサイモンとジョニーはこのライブに欠かせない存在であった。メンバーからもファンからも愛されるキャラクターで、何度見ても飽きなかった。「友達申請」での伏線回収はまさかの展開でそこでも大変楽しませていただいた。
⑥ 新曲
これは自担語りになりますがいくらでも言わせてください。今回のサマパラ、前評判やレポでは、やっぱりマンネリ化が懸念されていた(当方調べ)。「新曲がない」という問題があったからだ。夏のライブは、ありがたい話、新曲披露とセットの部分があり、それがないのはディスアドバンテージにつながるという見方があった。各グループこの問題に対して、有名な、あるいはTHE・Johnny’sというイメージのある先輩方の曲を披露する、等の対策を講じ、それは成果を出していた。
HiHiにおいては新曲があることが確定していた。作詞作曲The Garry(=猪狩蒼弥くん)の2曲である。もう強い。さいつよです。プロは結果出す。新曲があるなら見ようと考える層は、一般層というよりもむしろある程度はHiHi Jetsを見たことがある、好きだという層だ。そういう層に、「猪狩蒼弥作詞作曲」というブランドは刺さる、と私は思っている。前回のFenceと全く違うイメージの曲であり、「Klaxon」、「ENTERTAINER」それぞれ別の色なのも非常に良い。何度も見たくなる。逆に配信ライブでHiHi見ようかな、と思ってくださった方にどう響いたかぜひ伺いたいところです。どうです、猪狩蒼弥くんというアイドルは。侮るなかれ、彼のなかでは「魅せたい自分」「伝えたいメッセージ」がはっきりしていて、だからこそ、「作詞作曲」という唯一無二の武器を手にし、それを上手く使いこなすことができる。もちろん、映像も演出も作詞も作曲も、彼一人では成り立たない。その中で、彼が自分の作品をしっかりと完成させ、周りの手を上手に借りて人を動かし、あの世界を完成させ、その中心に立つ。その作品が私たちに対して提供されることが、無上の喜びに思える。スタッフ様も含めて、いつも素敵な作品を本当にありがとうございます。
⑦アンコール・エンディング
HiHi Jetsは、配信でもアンコールをやってのける。「サヨナラの方程式」を最後の曲として歌った後、締めの挨拶、ついでアンコールの演出があり、アンコール曲として「Eyes of the future」を披露する。「配信だからアンコールができない?そんなわけないっしょ!」と言わんばかりの姿勢は、挑戦的で、でもどこか微笑ましい。「サヨナラの方程式」で別れを告げた後に、「Eyes of the future」で「I'm not say goodbye. これが最後じゃない」と歌う流れが好きでした。選曲と構成がずるい。
終わり方にもこだわりがあった。カメラを切り忘れた演技で終演後を少しだけ切り取り、作間くんがスイッチを切る形で終わる演出。普段であれば、「HiHi!」の掛け声の後、本日の公演は終了しましたのアナウンスで終了だ。終わってしまったさみしさを、くすっと笑いにかえてくれる粋な演出。雑誌『duet』で猪狩くんが語っていたようにおしゃれで、HiHiらしい、このライブの締めにふさわしい演出だった。
私が見逃していたり書き漏らしたりしている点もあるとは思うが、ざっと思いつく限りでも、これだけの工夫が詰め込まれたライブであった。配信にしろライブにしろ、「ファンと一緒に楽しむ」姿勢は一貫していて、「ファン参加型」のライブという根幹はぶれずに達成されていた。与えられた環境を嘆くだけではなく、むしろプラスに変えて大成功を収めたこのHiHi Jetsの姿勢に、観ているこちらも勇気と元気をもらえた。そんなHiHi Jetsだからこそ、どこまでもいけるような気持ちがしている。これからの成長をこの目で見られることが、この上なく幸せだ。
さいごに。従来のジャニーズらしさが他グループに比べて少ない点、今までにいただいた夏ソングがない点に対する意見も散見されましたが、HiHi Jetsがやりたいことがめいっぱい詰め込まれたライブという感じがして、私はめちゃくちゃ好きでした。夏ソングはサマステと切り離せないイメージが、少なくとも私にはあるので、入っていなくてもそれはそれでいいのでは、という、これも一個人の意見です。最高の夏の思い出でした。
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