手塚家の実情
手塚治虫には、自身の家庭をモデルにした作品もある。
「マコとルミとチイ」。
真・るみ子・千似子。長男・長女・次女。３人の子の通称が題された作品は、多くが知る所であろう。某文庫本の表題ともなっている。
「大寒次郎（おおさむじろう）」手塚の別名（？）。自身を投影させた時に使う名だ。デビュー前後を描いた「がちゃぼい一代記」で、既に使われている。
夫人の名前は「悦子」であるが、「律子」。「大寒律子」としての登場だ。
「パパ」「ママ」お互いに呼び合い、子供達にも呼ばせている。平凡的な日本の家庭。どこにでもいる日本の家庭だ。
が、実情は違う。
手塚は夫人を「悦子」か「あんた」、夫人は手塚を常に「治さん」。
子供達には「お父様」「お母様」と呼ばせていた。手塚が、子供時代に両親を呼んでいたのだ。
（けど）作品を描くに当たり、考えたであろう。
（ウチは一寸、違っている、上品だよなぁ。夫婦間でも名前で呼ぶし、子供達にも「お父様」「お母様」って呼ばせている）
読者の家では少ないだろう。
やはり呼称は、「パパ」「ママ」か？子供達にも呼ばせているのか？
どこに行ってもそうなのか？
巡る思いが含まれる。
よりよい世界を築く為に、神は、視界を広く持たなければいけない。
隅々まで、民（たみ）を見渡さなければいけない。出来れば、深さも欲しいけど、そこまでは疲れる。
「漫画の神様」
手塚はこういう面でも、まさに神。一番民を思い、民に近い神だったんだと思う。
＜了＞