最後のお願い<現代詩>
遂に来たのね その日がと
今わたしは 思うしみじみ
明日(あした)我が子は
遂に独立 独り立ち
「ママ」「ママ」「ママ」
五月蠅い程にべちゃべちゃ触った 感触も
「ママ」「ママ」「ママ」
用もないのに繰り返して呼んだ あの声も
「ママ」「ママ」「ママ」
しつこいほどに追いかけてきた その姿も
遠い遠い日の思い出であり 出来事
知らない間(あいだ)に 育ちに育ち
独立すらをも 迎えている
あの日を再び みたび願っても
再現するのは 心の中
何でだろ 嬉しいはずなのに
半分どこか 淋しくて
何でだろ 解放されるはずなのに
半分どこかで 虚しくて
押しつぶされる 気持ちになる
明日(あした) 家出るその前に
お願いをしてみようかな
もう一度 一度だけ
「ママ」ってすがって頂戴と
<了>