山に登る舟(2)-相棒-
私の乗った舟には独特匂いを放つ人達が乗っていた。ピンク色の大きな男、地上から数ミリ浮いている蒼い人、ヒトのようなクマ、虫の目を持った男、見えな音を捕まえるハンター、景色を抽象化する女。私は何か彼らと対峙しても遜色の無い何かを持っていなければこの舟からおっことされるのではないかという不安感に襲われた。夏の一番暑い日、小さな部屋に閉じこもり相棒探しに没頭した。
数週間後私の相棒は現れた。相棒はヒゲの生えた丸顔の小さなおじさんだった。具体的には身長は20cm程度で手のひらに乗るほどの男である。名前はムラックという。名前の由来は「mrak」チェコ語で雲という意味だ。チェコ人なのだろうか?いや私の知るチェコ人にこんな小さな男はいない。彼は植物に興味津々で小さなメモ帳(彼にとっては大学ノートくらいのサイズだろうか)に気になった植物をせっせとメモをとっていた。メモ帳に描かれていたスケッチは上手であった。残念ながら文字は小さくて読めなかった。
私は彼に高山植物に興味はないかとたずねると、大きく首を縦に振った。交渉成立だ。私は小さい彼用の山の装備も準備することになった。
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2022年の雲ノ平山荘主催のアーティスト・イン・レジデンス企画に参加し、人形アニメーション「MRAK -ちいさな植物学者ムラックの雲ノ平の旅-」を制作いたしました。
4月22日〜7月10日期間、東京と山梨合計3箇所にて作品の展覧会が開催されます。展示会会場にて映像の全編と使用した人形などの展示をいたします。
ご来場お待ちしています。