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MRAK-雲ノ平山荘AIR2023-

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#登山

山に登る舟(4)- 山のアイドルに会う -

山に登る舟(4)- 山のアイドルに会う -

 青空に白い雲が浮かんでいる。山が私はすずめやさんと南アルプスの駒ヶ岳の山頂に立っていた。目の前には雑誌の表紙のような絶景が広がっていた。
 ロープウェイであっとう間に(実際には7分30秒で)ワープしてきたせいか実感がないがここは地上から2,612mの場所である。平日だというのに老若男女(老多め)の人々でにぎわっていた。まだ馴染んでいない登山靴で「山は怖い、油断してはならぬぞ」と一歩一歩踏みしめな

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山に登る舟(3)- 女将と師匠と雀 -

山に登る舟(3)- 女将と師匠と雀 -

 時は少し遡って、私がムラックと出会う前のことである。何の練習もなくあの壮大な山に登るのはさすがの私も躊躇っていた。そこで私は山登りが好き、もしくは好きそうな友人二人に一緒に山登りをしないかと声をかけたのであった。
 一人は和菓子屋の主人である。私はすずめやさんと呼んでいる。この和菓子屋は都内に店を構えてはいるのだが、近郊の山の中にも別宅と畑を持っている。別宅付近の山を少し歩ければ、と私は軽い気持

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山に登る舟(2)-相棒-

山に登る舟(2)-相棒-

 私の乗った舟には独特匂いを放つ人達が乗っていた。ピンク色の大きな男、地上から数ミリ浮いている蒼い人、ヒトのようなクマ、虫の目を持った男、見えな音を捕まえるハンター、景色を抽象化する女。私は何か彼らと対峙しても遜色の無い何かを持っていなければこの舟からおっことされるのではないかという不安感に襲われた。夏の一番暑い日、小さな部屋に閉じこもり相棒探しに没頭した。
 数週間後私の相棒は現れた。相棒はヒゲ

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山に登る舟(1) -舟に乗る-

山に登る舟(1) -舟に乗る-

 目の前にゆったりとした川のような海のような、はたまた湖のようなゆったりとした流れが漂っている。あたりはぼんやりと霧がかっていてこの流れの全貌は不確かである。大きな立派な船、高速で過ぎ去る船、漁船のような船、様々な船が行き交っているようだ。
 ぼうっとそれらの流れをみていると”おもしろそうな舟”が私の前を通り過ぎようとしていた。愉快な風貌の船頭と目が合う。船頭は「乗る?」と私に声をかけた。私は返事

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