#山小屋
山に登る舟(3)- 女将と師匠と雀 -
時は少し遡って、私がムラックと出会う前のことである。何の練習もなくあの壮大な山に登るのはさすがの私も躊躇っていた。そこで私は山登りが好き、もしくは好きそうな友人二人に一緒に山登りをしないかと声をかけたのであった。
一人は和菓子屋の主人である。私はすずめやさんと呼んでいる。この和菓子屋は都内に店を構えてはいるのだが、近郊の山の中にも別宅と畑を持っている。別宅付近の山を少し歩ければ、と私は軽い気持
山に登る舟(1) -舟に乗る-
目の前にゆったりとした川のような海のような、はたまた湖のようなゆったりとした流れが漂っている。あたりはぼんやりと霧がかっていてこの流れの全貌は不確かである。大きな立派な船、高速で過ぎ去る船、漁船のような船、様々な船が行き交っているようだ。
ぼうっとそれらの流れをみていると”おもしろそうな舟”が私の前を通り過ぎようとしていた。愉快な風貌の船頭と目が合う。船頭は「乗る?」と私に声をかけた。私は返事