猫のいる生活
保護施設から猫を引き取った。推定10歳くらいの茶トラのオスネコ。里親募集のサイトで写真を見て一目惚れした。
猫を迎えるのは私が小学生だった頃以来のこと。自然に囲まれた一軒家の実家で、屋内屋外への行き来は自由な猫たちは気ままに暮らしていた。しかし現在は住宅事情が違う。迎えるために必要なものを調べた。インターネットは便利だ。猫と検索すれば猫に関するありとあらゆる情報を得られる。猫好きの友達にもご指導を仰ぐ。
なんだかんだと熟考のすえ、うちの条件と情報の折り合いをつけて、購入したものは、トイレ、砂、シート、キャトフード。それ以外は実際に猫と対面してみないと分からないよね。というのが一致した家族の答えだった。
今日で猫さんが来て3週間になる。とても賢い子で、教えなくても自分から準備してあったトイレに行き、室内にあるものにいたずらすることなど全くない。床に敷いてあるジョイントマットで爪研ぎをするくらい。感心した。前情報として友達からカーテンやテーブルの脚がボロボロになるよと聞いていたし、壁紙をカバーするシートという商品が販売されているくらい、猫は色んなところで爪研ぎし、部屋を荒らすものだと心の準備をしていたから。
賢い子だけど、初めての場所、人はやはり怖いらしく、とても警戒して、初日はずっとサイドボードの下に隠れていた。次の日は洗濯機の下に隠れていた。その次は電子レンジの後ろに隠れて、テレビの後ろにも隠れた。
隠れる場所が欲しいのだなと、小さな猫ハウスを買い、息子はダンボールでトンネルを作った。隠れ家から出てきた猫が私たちの前に姿を見せて、お手製のトンネルに入ってくれた時は、皆んな大喜びした。息子は猫が来る前から、猫さんにベッドやお家を作ってあげたいと張り切っていたのだ。
ドライキャットフードを食べなくて、どうしたことかと狼狽した。評判のよいフードや無添加のものを買い求め、これならば!とごはんをあげると、何か言いたげににゃーと鳴いた。その時気づいた。彼は歯がほとんどないのだ。ウェット フードをあげると嬉しそうに平らげた。一安心した。
あぁ、なんだか息子を迎える準備をしていた時に似ているなと思った。たまごクラブに始まる育児書を熟読し、先輩ママである友達からアドバイスを頂き、ネットで見ず知らずのママたちの生の声を見て。右往左往、一喜一憂。
初めてのことはいつだって怖い。だって何にも知らないのだから。手探りで、試行錯誤して、それでも日々積み重なっていく経験は、泣いても怒っても笑っても、心に穏やかさとゆとりをくれる。それは、大人も子供も猫も同じこと。
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