80代のセンパイと暮らす。(64)
約2か月ぶりである。センパイは元気、と言いたいが、最近はちょっと弱っているようにも見える。
今年に入ってからの緊急事態宣言、2回の延長は、さすがにセンパイの行動を制限した。連日伝えられる医療施設の逼迫は「もう病気になれない」と、高齢者を引き籠らせる。楽しみにしていた年下の友人たちとの食事会も、トミとの映画も、流れてしまった。明らかにテンションが落ちていた。センパイの元気の源は、人と会うことだったのだなと、実感する。
センパイに出来ることは何かと思い、とりあえず興味を持ちそうな本を買ってきた。最近はスマートニュースばかり見ているセンパイは、あっという間に読んでいた。
ご贔屓の綾野剛の映画も一緒に観に行った。イマイチだったからこそ、数日に渡ってツッコミの会話が続いたのは良かった。同じヤクザなら『素晴らしき世界』の方が良かったからと美容院帰りに1人で観に行かせる。「なんか知らない世界だったわ」とそんなお気に召してもなかったが、刺激になったのはこれも良いことだ。しかし、どちらの映画もあまりよく理解できてないことがわかった。映画のスピードと思考が追いつかなくなるのか、集中力がもたないのか、歳をとるというのはそういうことか。
そんな私の小さな気遣いより、センパイを元気づけるのは友人からの電話である。2年ぶりくらいに連絡してきた人が、ずっと前に紹介されてセンパイもよくやって貰っていたマッサージが保険がきくようになって安くなったわよ!と教えてくれた。年明けからずっと安楽椅子でスマートニュースな日々が続き、ガチガチになった体を解しに行くようになった。送迎つきマッサージ、そして久しぶりの友人との茶飲み話で、元気になってきたセンパイ。
今は足に霜焼けができるようになって靴を履くと痛いからと歩かなくなったのが気がかりだが、それも暖かくなると少しずつ良くなっていくだろう。
心と体はつながっている。若い時は何か行動すれば、心持ちも変わっていくが、80代には簡単ではない。でもセンパイには声をかけてくれる人がいる。それが彼女が今までの人生で培ってきたものだ。また学んだよ、センパイ。