80代のセンパイと暮らす。(46)
朝ごはんを食べ終わったら、センパイが突然、
「私、昔から耳が悪かったんだと思う」
と言い出した。え、なになに?
「学生時代に通訳の授業(センパイは英文科だったから、そんな授業があったのか?その辺りは説明なく不明)が嫌いだったのを思い出したの。あと、ミュージカルも面白いと思ったことない。初めてニューヨークでライオンキング観た時も、友達は興奮してたけど、私は全然だった」
「えっと、それはミュージカルが嫌いとかじゃなくて?」
「たぶん、あまり聴こえてなかったから、楽しめなかったみたい」
「それが、今、わかったってこと?今はもっと聴こえてないよね。老化して」
「そう。だけど、これは元々そうだったんだって気づいたの」
と、何かスッキリしたご様子。
でも、この感覚が鈍いことに気づかない、または自分に対して気づかないふりをしているところ、分かる気がするのだ。私にもそういうところがある。
ま、いっか。死ぬ訳じゃなし。
という、ザックリしすぎ、些細なこと(でもないかもしれないが)はどーでもいい感じ、間違いなく、センパイから受け継がれている。初めて仕事で大きな買い物を決めた時もそうだった。
私たちはこの鈍さで生きてきたし、この鈍さでコロナ禍も何とか生き抜こうね、センパイ。