80歳のセンパイと暮らす。(2)
センパイの第一の趣味は、書道。
墨の匂いが好きで、すっている時から幸せらしい。
4年くらい前、私が1か月留守にしていた時のこと。帰ってきた私に一言。
「あなたがいなくて、本当に有り難かった」「は?」
書道展に出すために、毎日夢中で書いていたとか。何もかも忘れるくらい、没頭して書いていたら、自分の変化を感じたらしい。
「上手くなったと思うのよ。この歳でもまたまだ成長できるとわかったら、すごく嬉しかったわ。あなたがいなかったおかげよね」
「・・・そっか、それは良かったね」と私。自分がいなかったことを、こんなに満足気に話されるのも、複雑だけどね。数週間後、センパイは書道展で大きな賞を貰った。スゲエな、この人。結果も残すんかい。かなわんな。
昨日、書道の師匠から「あの賞を貰った時から成長してない」と言われたと怒るセンパイ。あれから、書道は楽しむものと決めたらしい。センパイには賞は結果でしかなかったから。4年の間に、どうやらセンパイの楽しみ方は変化しているみたいだ。さらにウォッチを続けねば。
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