見出し画像

韓流医療ドラマ「キム・サブ」        登場する人々の人間像に思う 〜シリーズ1から3まで〜

2016年にシリーズ1 2019年にシリーズ2  2023年にシリーズ3
韓国ドラマでもシリーズ3は滅多にない、キムサブシリーズ。シリーズ全てを通して視聴率も高く、シリーズ3は主演のハン・ソッキュも望んだようだが、多くの視聴者の要望から実現されたのではないか。ハン・ソッキュはドラマの中で圧倒的な存在感を持っているが、シリーズ1から2で ストーリーの中心になる若手医師役の男女を入れ替え、より現代的な問題を顕にして、医療ドラマというより社会派ドラマ寄りの展開を強調していた。

この企画は 
すべてが溢れているが、ゆえにより欠乏を感じる人々。
すべてが便利になったが、ゆえにより孤立した人々。
情報は溢れているのに本心は伝わらず、知っていることは溢れているのに言動の一貫性は崩れていき、ブランド品は溢れているのに本当におしゃれな人々は消えゆく世界。
地球の裏側で起きたことはリアルタイムで分かっていながら、いざ自分のそばにいる人々については知らず、自分自身を定義づけて説明したい人々は満ち溢れてるのに、聞いてくれる人々はいない。
一人の人生を崩壊させるのに、5分のフェイクニュース映像一つで十分な世の中..
簡単に判断し、簡単に浄罪し、たやすく罵倒することに慣れた人々。
自分と関係のないことだとそっぽを向く人々。
世界は広くなったが、他人を理解して寄り添う心は次第に小さくなっていく。
このような時代に、いっそう忘れ去られていく大切な価値、ダサくて陳腐だと片付けられていく.. しかし実は依然として我々皆がおぼろげに懐かしむ、人間らしいものについての話をもう一度伝えようと思う。
人はなぜ生きていくのか、自分はなぜこのように生きているのか、道に迷った数多くの人々にキム・サブのロマンがもう一度慰めになることを願いながら。

シナリアライターはこの企画趣旨に沿った人物像を描いている。
ドクター・キムサブ つまり キム師匠 と自分を名づけて 本名を隠し 地方の病院で なんとしても人の命を救う、医師の本命をまっしぐらに突き抜けていく 凄まじいばかりの人生観を持った人間が織りなす 本格的な医療ドラマになっている。

ハンソッキョは 実在する人物かのように彼の雰囲気や持ち味をうまく表現している。彼の懐の深さが たちまち 若い医師たちの拠り所となっていく。 彼の俳優としての自信もそのキャラクターに含まれているかのよう 現代劇は初めて?とは思えない。根の深い木より、こっちの方が貫禄たっぷりに見えた。
そして 脇役陣のキャラクターがドラマを、盛り上げてくれている。

この俳優はキムサブと対照的に描かれている。大きな大学病院の院長として権力を振るっているが、キムサブと同時代に活躍していて、実力ではキムサブに及ばないと、キムサブを陥れる陰謀をめぐらし。大学病院から追い出すことに成功する。
時に激しい憎悪で 感情を爆発させ、傲慢な生き方を貫くという・・ところが若い頃に知り合った女性を思い続け、その女性が病死してしまうとその子どもの教育費の支援をしていたり、一途な面を持つ人柄でもある。キム・サブの才能を羨み、妬み、生涯の宿敵をなんとしてもこの社会から抹消したいという欲望を捨てきれない、それでも大学病院の理事長として経営面では成功し、知名度も高い。唯一普通だと思うのは 息子がキムサブに傾倒して行く姿はある意味、承知していたかもしれない。操りたい気持ちはあっても自由にさせているところがあり、息子にシラを切られるようなことになっても、息子を自分の欲望に閉じ込めるようなことはしていない。最終的に 息子は父親の立場も理解し、キムサブには医師として敬意を表し、尊敬している。これから、どういう道を歩むのか、父親の息のかかった病院の役職について経営をする立場になるのか、医師としてキムサブの教えを貫いて行くのか どちらになるのだろう。

いいなと思ったら応援しよう!