ワールドトリガーを全巻買って死ぬほど後悔した話
※当記事は既読者向けです。一部ストーリーのネタバレが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。
モンスターストライクのワールドトリガーコラボをきっかけに全巻購入を決意、読破。
結論から申し上げます。 タイトルの通り、激しく後悔いたしました。
……なぜもっと早く読まなかったのか、と。
※この記事にはワールドトリガーに対する批判的な意見が多く含まれております。
「見てもらえる、倒置法を使った方が」
そう言ってたんだ、俺の中のポカリが...!
「はぁ!?激しく後悔した話!? ざっけんなクソ記事じゃねーか! 」
と思った立方体のあなた! ごめんなさい!!
読み終わるや否や、この作品ヤバいやろ え?ヤバない?と居合の達人(たつひと)が脳内を走り回る事態に陥っております。
このままだと布教する側に回るのも時間の問題になりそうなので、 読み立てホヤホヤの今のうちに感想を書き散らかしておこうと思い記事作成に至りました。
「オタクの新鮮な悲鳴備忘録」という体で、ひとつお付き合いいただけますと幸いです。
1.ワールドトリガーは「多角的に魅せる」作品である
この作品を読み進めていて一貫して感じたのが、
・多角的な視点で物語が描写される
・描写の切り替えがなめらか
・ひとつひとつの描写が丁寧
という点だ。
ここでいう「描写」を「カメラ」に置き換えるとわかりやすい。
ワールドトリガーの世界にはカメラが何台も設置してあり、
・様々な画角からキャラクターを撮影している
・巧みなカメラワークで異なる被写体を次々と捉えている
・それでいてカメラの解像度が爆高
こんなイメージだ。
主人公たちが各々の誓いを胸に試行錯誤を繰り返す。 その最中、ライバルたちもまた知略を巡らせ、努力を怠らず、確実に強力になっていく。
あちらのカメラで、こちらのカメラで。すべてのキャラクターの息遣いを余すことなく映し出す緻密なカメラワークの数々。 これこそがワールドトリガーという作品を形作る、最大の魅力だと思うのだ。
2.作品全体に「説得力」がある
「多角的に魅せる」ことに成功すると、次に何が起こるのか?
作品全体の「説得力」がケタ違いに増す。
ワールドトリガーにおける主人公の一人である空閑遊真は、初登場時から現在まで他の追随を許さぬ規格外な強さを見せつけてきた。
こんなにも強力なキャラクターが主人公サイドに存在するなら、今後の戦いもトントン拍子で勝ち進んでしまうのではないか?と疑ってかかるのも無理はなかった。
しかしワールドトリガーのストーリーを振り返ってみると、
黒トリガー争奪戦でA級隊員たちが高度な戦術を駆使し、遊真たちを苦しめたこと。
その後大規模侵攻で襲い掛かってきた近界民が物語序盤とは思えないほど超強力であったこと。
それを迎え撃ったA級、そしてS級の隊員たちが言葉通りの「精鋭」であったこと。
その背を追うB級隊員たちもまた、確かな実力を持っているということ。
そんな実力者たちと競い合うB級ランク戦は、たとえ主人公サイドに強力なキャラクターが存在しても、決して容易い道ではないということ。
この「説得力」が揺るぎないものである故、ボスラッシュ→組織内での模擬戦という順序で物語が進んでも、作品の勢いは衰えるどころかどんどん加速していく。
また「大規模侵攻編で散らした各キャラの掘り下げをランク戦で行う」という流れが「序盤を読み返さなくては」という衝動を掻き立て、その過程を経ることでランク戦の見方が変わって…というように、いつの間にか抜け出せないループにハマったファンも多いのではないだろうか。私もその一人です。
3.「魅せ方」と「説得力」が織りなす物語の臨場感
いくら「説得力」があるといっても少年漫画が避けて通れない展開、それが"ご都合主義"である。
これらを語るにあたって、大規模侵攻編で攻め入ってきた一国、アフトクラトルの主戦力としてボーダー隊員たちを苦しめたヒュースの存在について触れていこう。
敵国の精鋭として立ちはだかった彼は、紆余曲折あって主人公たちの部隊「玉狛第二」への加入を果たすのだが…
彼も遊真に引けを取らない圧倒的な戦闘力で瞬く間にエースへの階段を駆け上っていく。 ランク戦進行真っ最中のヒュースの参戦は、正直「いや禁止カードやろそんなん」と言われても仕方のない展開である。
↓実際どよめいてたしね
しかしワールドトリガーは、他の追随を許さない綿密なキャラ描写力によりこの問題を解決してくる。
前述の"カメラワークが多彩"という内容を思い出してほしい。私たちは知っている。 主人公たちが勝利を目指す階段を一歩一歩踏み占めている間に、ライバルたちの足音もまた、すぐ近くで鳴り響いていることを。
階段を上る人数が増えようと、その速度が上がろうと、周りの足音が遠のくことはない。
「今の彼らなら玉狛第二とも対等に渡り合える」
そんな後方先輩面…いや信頼感のもと、熾烈なランク戦が幕を開ける。
ここでもう1点、重要になってくるのは 「どの部隊が勝利してもおかしくない」そう思っているのは、私たち読者だけではないということだ。
一体どういうことか?
我々読者と同じくらい手に汗を握り、固唾を飲んで見守っているのは、何を隠そう作中でランク戦を観戦しているキャラクターたちである。
夢中で読み進めているうちに、我々読者は、いつの間にか観戦席にいる"彼ら"と全く同じ視点に立たされているわけだ。
キャラクターたちの成長を余すことなく描き切り、ご都合主義を感じさせない手腕。そんな登場キャラクターたちと肩を並べて試合を観戦できる、圧倒的な臨場感。 これもまた、ワールドトリガーを「沼」たらしめる所以なのではないかと感じた。
4.抜け出す方が難しいワートリ世界の「深さ」
ここまでワールドトリガー世界を切り取る「カメラ」について繰り返し言及してきたが、ひとつなぎの大秘宝もといデータブックが、設置されたカメラの操作方法を手ほどきしてくれるという点も見事だ。
作中に出てくる専門用語、戦闘の掛け合い、キャラクター同士の関係性。これらを頭に叩き込んだうえで本編を読み返すと、一度目にしたシーンであっても全く異なる情景が浮かび上がってくる。
あまりに考えつくされた設定の数々、あまりの情報量に
「ワールドトリガー」という作品を読んでいる のではなく、
「ドキュメンタリー」の一端として切り取られた「ワールドトリガー」の世界を覗いている
そんな気分にさせられてしまうほどだ。
作者である葦原大介先生は、間違いなく狂っている。(※もちろん褒め言葉です)
5.オタクの精神に働きかけてくる圧倒的情報量
ワールドトリガーはとにかく「情報量が多い」作品だ。
この言葉だけでは誤解を生んでしまいそうなので、
情報量が多い=理解力が高くなければ楽しめない という意味では断じてないと、先に明言しておく。
ワールドトリガーは先述のデータブックをはじめ、単行本のおまけページにカバー下と、ファン垂涎の情報が所狭しと敷き詰められている。
プロフィールはおろか、場合によっては名前すら判明していないキャラクターに目を奪われた経験もある自分にとっては、それはもう、 ペンチ片手にボーダー本部へ乗り込む主人公の存在くらい衝撃的であった。
(いったい何雲修なんだ......)
関係性のオタクであったり、夢見る乙女であったり、世界観の研究者であったり、嗜好の方向性を問わずどこかしらがオタクの心に刺さる。
場合によっては刺さりすぎて抜けなくなる。
他の作品とは一線を画すディープなファンの多さは、このあたりに起因するのではないだろうか。情報量の違法建築をそつなくこなす葦原大介先生の敏腕っぷりには、ただただ圧倒されるばかりである。
そんな熱心なファンを多く抱えるワールドトリガーだが、有り余る熱量を「原作全巻購入」という形で昇華させ、それを未読者にまとめて送りつけているというのは(一部界隈で)有名な話だ。
私もこの話を聞いたときには驚いたが、まだ"こちら側の世界"を知らぬ者に既刊の束を抱えて殴りかからなければ気が済まないほど、魅力があることの裏付けなのだと納得した。
布教するにあたって必要な資料が揃っている。
否、揃いすぎている。
プレゼンするにあたって資料が豊富だから布教せずにはいられない 。オタクとはそういう生き物なのである。
ゆえに全巻送り付けという奇行に走るのも、ある意味必然と言えるのかもしれない。
長々と綴ってきたが、最後はワールドトリガーという作品に触れる前の自分に、この言葉を送って記事を締め括りたいと思う。
「早く読め。
心地よい後悔と、たしかなまんぞくがおまえを待っている 。」
P.S. モンストコラボから入ったこともあって一番気になるキャラは影浦雅人だったけど、今言えることはひとつ。
堤大地と結婚したい。
↓これまでの公開記事はこちらから
↓感想を啜って生きています
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?