【ワールドトリガー】鈴鳴第一に学ぶ令和の後輩教育
※コミックス24巻までの内容、ならびに画像の引用が含まれます。
※最新221話のネタバレがございます。閲覧の際はご注意ください。
ワールドトリガーを全巻買って死ぬほど後悔した自分は現在、アニメ3rdシーズン視聴の真っ最中。
3話では強豪チームとの四つ巴という緊張感高まる試合を前に、嬉々として作戦立案に乗り出す別役太一の姿が描かれた。
出典:ワールドトリガー コミックス19巻 169話より
ここで脳裏をよぎった本誌221話。まるで別人のように意気消沈した彼は、チームメイトお手製の夕食を前にしにしても肩を落としたまま。
本作に出会って間もない自分だが、とある出来事をきっかけに別役太一というキャラクター...いやひとりの人間に、そして彼属する鈴鳴第一に並々ならぬ感情を抱いている。
アニメ視聴を期に溢れ出る思いを抑えきれなくなってしまったので、勢いのままに書き留めておこうと思う。
1.鈴鳴第一、その成り立ち
悪意なく意図せず失敗を繰り返し、周囲を巻き込んでしまう本物の悪、別役太一。
疎まれるほどの才能ゆえ、幼少期から孤独を抱え続けてきた悩める才人、村上鋼。
そんなふたりが全幅の信頼を寄せるのが、鈴鳴第一の「仏」こと来馬辰也だ。
キャラクター紹介で作者直々に「おとり」と明記されるほど気弱な青年だが、隊長の名に恥じぬ人望の厚さで部隊の結束を高め、作中で数々の名勝負を繰り広げてきた。
出典:ワールドトリガー コミックス23巻 203話より
手前から2番目の大和撫子は、鈴鳴第一を支えるしっかり者のオペレーター今結花ちゃん。かわいいね。
生い立ちも個性もバラバラな彼らは、いかにして確固たる絆で結ばれるに至ったのか。
各々が悩み抜いた末に、負った傷。
歩みを進めるたび、開いていく傷口。
痛む傷を押さえて横たわる隊員の前には、完治まで見守るどころか、傷跡が消えてなくなるまで寄り添ってくれる隊長の姿があった。
優れたサイドエフェクトの持ち主であるからこそ抱いた悩みに正面から向き合い、
ボーダーが誇るエースアタッカーとしての地位を確固たるものにした心優しい一声。
出典:ワールドトリガー コミックス11巻 95話より
失敗に歯止めが利かない隊員に落ち込む隙を与えないどころか、
その失敗に乗じた作戦立案にまで至らしめた圧倒的な包容力。
出典:ワールドトリガー コミックス 19巻 168話より
「傷ついた分だけ強くなれる」よく聞く表現だが、万事に当てはまるわけではない。負った傷が深すぎて立ち直れないことだってあるだろう。
そんな時、痛む傷を甲斐甲斐しく手当てし、優しく受け止めてくれる存在があったならば。傷つく前より強く、そして大きく成長できるに違いない。
ありきたり、それでいて胸を打つ言葉が、彼らにはよく似合う。
来馬先輩の身の内から溢れ出る"善"に触れた者が集う部隊、それこそが「来馬隊」こと鈴鳴第一というチームなのだ。
手を伸ばす隊長、呼応する隊員。これを「愛」と呼ばずしてなんと呼ぼうか?
こんなん泣いちゃうよ。蔵内会長も大号泣だよ。
そりゃ来馬先輩庇うわ。私も庇うわ。
出典:ワールドトリガー コミックス12巻 102話より
余談。モンストコラボ第2弾きっかけで全巻購入に至るまで、進化後イラストでセンターポジションにいる鋼くんのことを「鈴鳴くん」だと本気で思っていました。
モンスターストライク 図鑑No.6092 B級8位 鈴鳴第一
でも実際は…来馬第一(主義)だった。
2.他人事とは思えない
ここでちょっとした閑話にお付き合い願いたい。
完全に私ナナカゼの身の上話なので、興味がなければ飛ばしていただいて構わない。
自分は現在、都内のとある企業にエンジニアとして勤務している。
去年の今ごろは、新人研修の真っ最中。
「早く有給ほしいよね~」人並みな言葉に頷いてくれるのは、同じく研修に翻弄される3人の同期たち。
三ヶ月という短い期間ではあるが、毎日顔を合わせて他愛のない話をした。皆気のいい青年だった。
研修を終え、配属が決まった。全員異なる現場だった。
配属早々、さっそく壁にぶち当たる。
研修とはまるで違う業務内容。慣れない環境。見知らぬ人々。
仕事ができない。めちゃくちゃ仕事ができない。
最善を尽くしたつもりでも失敗ばかり。自分は足を引っ張ることしかしていないと落ち込む日々。
そんな私の背後に迫る人影。同じ現場で働く3人の先輩たちだった。
先輩A。私の教育係。
「分からなくなったら、何回でも聞きに来てくださいね!」
「あ、それもうやってくれたんですね!?すごい!ありがとうございます!」
先輩B。自社で一番の古株。
「有給使ってる?この日休むと連休作れるよ」
「業務の遅延?上の指示が悪かっただけだし、ナナカゼさんが気にすることじゃないよ」
先輩C。同じ案件を引き受けている取引先の社員。
「大丈夫大丈夫、私も同じミスしたことあるから」
「ナナカゼさんが来てくれて本当助かってるよ。いつもありがとうね~」
仏である。全員仏である。
仏スロットジャックポットである。
(-ι-7)(-ι-7)(-ι-7)
ミスをするたび落ち込んで平謝りする自分を、先輩たちは笑顔で肯定してくれた。
しくじるたびに心の中のヘルメット少年がうぶぶ...と一緒に泣いてくれるようになった現在。まだ至らぬ点は多々あるものの、ある程度仕事が板につくようになってきた。
ここまで心が折れずやってこれたのは他でもない、先輩たちの優しさの賜物だ。
四度顔を見せても微笑みを絶やさぬ仏たちに支えられ、入社してから迎えた2度目の春。社内行事で同期に再会した。
3人中、2人が姿を消していた。
聞くところによると、現場の人間関係に悩まされていたらしい。本人たちの口から聞いたわけではないため真偽のほどは定かではないが、1年経たぬうちに立ち去ったという事実が、何よりの証明に思えた。
ご時世柄、コミュニケーションが希薄になるのは仕方のないこと。そう割りきってしまっていた己の薄情さを悔やんだ。
ワールドトリガーという作品に出会って間もない自分。
最新話で描かれた太一の落ち込みが、妙に、深く突き刺さった。
窮地に立たされた彼の姿を、先輩の優しさに触れず心が折れた自分と、物言わず去って行った同期と、重ね合わせたからだった。
3.陽の当たらぬ部屋の片隅で
話を振り出しに戻そう。本誌221話。完全に瞳の光を失った太一。
どんなに失敗を繰り返そうと、鈴鳴第一のムードメーカーとしてせわしなく元気を振りまいてきた彼の落ち込み様に、驚いた読者も多いはずだ。
しかしこれまでの出来事を思い返すと、腑に落ちる。
隊員をシャッフルして行われる閉鎖環境試験。
いつも自分を肯定してくれた隊長も、隊長を共に慕ってきた頼れる先輩も、ここにはいない。
閉じられた空間の中で響く争いの声。
自部隊ではまず聞くことのなかった荒々しいやり取りを皮切りに、チーム内に入った亀裂。
その原因は自分。
閉鎖環境試験の隊員決めで最後まで選ばれなかった、自分。
そりゃヘコむわ。私もヘコむわ。
犬飼と影浦の衝突もチームのことを思ってのものだから、この殺伐とした空気がチーム全員の成長を促すきっかけになってくれることを願うばかりである。
ザキさん...あなただけが頼りだ
4.令和の後輩指導
様々なハラスメントが問題視される昨今。会社や学校といった場での「健全な教育」そのあり方が問われている。
暴言、ましてや暴力など以てのほか。
向こう見ずな叱責が許される時代は終わりを告げ、ひたすら部下に優しく向き合い長所を引き出す...それこそ、来馬先輩のような存在が求められている。
もちろん労働の代価として賃金が発生している以上、いつ何時も穏やかに、とはいかないこともあるだろう。厳しさと愛情が矛盾なく両立する以上、耳が痛くなるような言葉を受け入れる心意気も持ち合わせなくてはならない。
それでも。信頼できる先輩の存在は心の拠り所となり、地に足のついた成長につながる。他でもない私自身の経験だ。
4月から後輩を迎える立場となった自分のモットーは、先輩に優しくされた分だけ、後輩に還元すること。人格も技術も秀でた先輩たちに並ぼうなどおこがましいとは分かっているが、せめて後輩にとって肩の力を抜いて話せる相手でありたい。
あの人のために、頑張りたい。
来馬辰也率いる鈴鳴第一は、令和に求められている後輩指導の理想像と言えるだろう。
出典:ワールドトリガー コミックス19巻 164話より
5.来馬辰也、その出生
それにしても「金持ち」「超甘やかされて育った」というステータスの持ち主ながら、いかにしてこの善性を煮詰めたような青年が生まれたのか、非常に気になるところである。
まだ見ぬ彼のご両親には、彼にどう向き合ってきたのか、どのような教育を施したのか、ぜひともお聞かせ願いたい。
いや純粋に教育方針を聞きたいだけですよ?
この機会にご親類に顔を覚えてもらおうとか隙あらば求婚しようとか思ってないです。ほんとですって。
閉鎖環境試験、そして遠征選抜試験という高い壁は、鈴鳴第一にどのような変革をもたらしてくれるのだろうか。
今後も彼らの成長から、目が離せない。
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