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【ワールドトリガー】水上敏志が心底恐ろしい話

※コミックス24巻までの内容、ならびに画像の引用が含まれます。
※最新222話のネタバレがございます。閲覧の際はご注意ください。








キャラクターの会話だけでここまで「魅せてくる」作品が他にあるだろうか。
現在ジャンプSQにおいて連載中のワールドトリガー・遠征選抜試験編。
遠征選抜を語る上で欠かせないのが、臨時隊長に抜擢されたうそつきブロッコリーこと、水上敏志の存在だ。

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出典:ワールドトリガー コミックス17巻 150話より

エイプリルフールの嘘企画ではちゃっかり主役の座を欲しいままにし、本誌が発売日を迎えるや否や彼の愛称を指すワードがトレンド入りを果たすなど、目が離せない存在となっている。


つい最近ワールドトリガーの世界に足を踏み入れ、バックナンバーを遡りついに本誌にまで手を伸ばした自分からすると、

彼に注目が集まる最中で作品に触れたこともあり、数多く登場する人物の中で最も強烈な印象を残しているキャラクターといっても過言ではない。


なぜ水上敏志という男がここまで脚光を浴びているのかというと、

ランク戦ではここまで"やる"人物として描かれていなかったから

この一言に尽きると思う。


これまで彼があからさまに周囲から警戒されたり、ド派手に点を取ったりするシーンは存在しない。


しかしながら、だ。


参謀としての地位を理解し、いざという局面までその本性を潜め続ける。これこそが、彼がタダ者ではないことの証明であったのだ。


そんな思わぬ伏兵、水上敏志の行動とそれに伴う所感を綴っていこうと思う。



1.ランク戦における水上敏志という存在


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出典:ワールドトリガー コミックス17巻 150話より

ここでマークされていないのを今になって見てみると身の毛がよだつ。
念のため補足しておくが、玉狛第二の考察が的外れだったとか、情報の集め方に問題があったとか、そんなことは一切ない。
相手に危険性を悟られないという「あるべき参謀の姿」に徹しきっている水上敏志の立ち回りが一枚も二枚も上手だった、たったそれだけのことなのだ。
水上当人が映っていないこのコマだけでうそつきブロッコリーの本領の片鱗が感じられる。

こわい。


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出典:ワールドトリガー コミックス18巻 154話より

ランク戦における水上敏志の印象的なシーンといえば、真っ先に浮かぶのがこのコマではないだろうか。

「声に出したのと違う弾を撃つ」という、相手の意表を突く戦術。シンプルながら効果的、実に彼らしい攻撃だ。


↓4月1日にも話題になってたしね


この戦術とともに、「うそつきブロッコリー」という愛称が言及されたのはここ。

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出典:ワールドトリガー コミックス18巻 カバー下より

個人的には水上以外に使える人間は"少ない"という記載が気になるところ。登場済みのキャラクターが披露する可能性も十二分にあるということですね。
普通校組だが"実は"めちゃくちゃ成績がいい、というのも彼らしさが溢れていてとてもいい。今後各キャラクターの学力に焦点を当てたエピソードなんかもあったら嬉しいなぁ。

"うそつき"はてっきり彼の取った戦術のこと「のみ」を指しているのかと思いきや、今になってみれば思いっきりミスリードだったことがわかる。他のキャラのカバー下解説も、今後思わぬ効能を発揮したりするのだろうか。


もう何もかも伏線にしか思えなくてこわい。



生駒に代わって作戦立案を担当し、縁の下の力持ちとして周囲をサポートとする射手(シューター)。大半の読者の印象はここで止まっていたはずだ。
目立たない、と言ってしまえば聞こえは悪いが、不躾に点を取る願望はなく、あくまで部隊の立役者として盤面の制圧に徹する。これこそが水上敏志という男が内に秘めた才能だったというわけだ。




2.水上敏志と生駒隊


そんな彼だが、生駒隊ではボケとツッコミを両方こなす二刀流の使い手。ゆるいノリの集団に欠かせない重要なポジションを担っている。

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出典:ワールドトリガー コミックス18巻 カバー下より

サトシかわいいとこあるやん

それにしても水上ひとりの立ち回りだけで、生駒隊の株が勝手に上がってるあたりも心底恐ろしい。
株がね。ブロッコリーだけにね。
(は?)

水上の尖りを微塵も感じさせず、よもや芸術的とまで言える空気で包み込んでいた生駒隊。



イコさんほど友達になりたいキャラはいないし、


隠岐孝二は吐息ひとつで死人を出すし、


海くんにはごはんいっぱいたべてほしいし、


マリオちゃんはかわいいかわいいかわいいし、


水上敏志は水上敏志だし



閉鎖環境試験の空気感は、生駒隊が奇跡のバランスで成り立ったチームであり、彼にとっていかに居心地のよい空間であったかを、しみじみと感じさせてくれるのだ。
くぅ~っ!遅効性!こわ~~!!




3.本領発揮


さて、ここからが本題だ。
遠征選抜試験編において、9番隊を率いる臨時隊長に抜擢された水上。
閉鎖環境試験が開幕するや否や、「隊員に開示する必要性がない」と判断した情報を独断で削除。

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出典:ワールドトリガー コミックス24巻 207話より

まきりさも おどろいているようです


隊員に存在そのものを秘匿した戦闘シミュレーション試験では、複数人での操作という前提ものともせず、単独出陣を決行。
暴挙かと思いきや、持ち前の頭脳と将棋で培った巧みな盤面操作を生かして首位を独走

自らの手中を露見せず、悟られず、いざとれば我田引水を厭わない。なんだこれ。主人公サイドでない人間がやってのける所業じゃねぇ。完全犯罪かよ。うそつきはブロッコリーのはじまりじゃん。こわっ。


最新222話では、そのほころびに焦点が当てられる。水上9番隊照屋文香隊員は不自然な点差に疑問を持ち、行動を起こそうとする。
そんな事態はとうに想定済みのうそつき。かわいいかわいい照屋ちゃんをレスバで完封するという、鬼畜の所業をそつなくこなしてみせた。


傍若無人とも言えるその態度に、不快感を感じた読者も少なからずいたはずだ。
彼に苦手意識を感じた場合、あの局面に立たされた照屋ちゃんには少なからず同情してしまう。
逆に水上敏志やべ~!と心を掌握された読者は、言わずもがな今後も彼の同行から目が離せなくなる


水上敏志が好きでも、嫌いでも。我々読者がワールドトリガーという作品に翻弄されている事実だけは、揺るがないのだ。

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出典:ワールドトリガー コミックス22巻 189話より




4.水上敏志と漆間恒


銃手(ガンナー)ひとり、オペレーターひとりという異色すぎるチームとして読者の感心を集め続けている漆間隊
隊長のウルティマこと漆間恒は、超のつく守銭奴。遠征選抜試験説明会では、多くの隊員の視線が刺さる中、あの城戸司令官に対し金銭交渉を持ちかけるという鋼の心臓っぷりを披露して見せた。

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出典:ワールドトリガー コミックス23巻 205話より


そんなウルティマに対し「相変わらずがめつい」「性格がわるい」と明言(明記)している水上。
しかし彼が抱いている印象と実際の人物像は、どうにも食い違っているような気がしてならない。


ウルティマが場の空気を読まず、歯に衣着せぬ物言いをすることは事実だ。
作中屈指の常識人である古寺くんが臨時隊長アンケートに記載した「協調性に欠ける」という評価は、妥当としか言いようがない。


しかし自らの懐が潤う試験に通りたいから、という目的があるとはいえ、「志岐さんに面倒をかけるな」と発言している時点で
あれ?思ったより気のいいあんちゃんじゃない?
と思った読者がほとんどなはずだ。

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出典:ワールドトリガー コミックス24巻 211話より

ウルティマの作ったチャーハンたべたい


個人的には、以下のような印象を受けた。


もし水上9番隊でウルティマが、照屋ちゃんと同じ状況に陥ったとしたら、反論の余地のない言葉を羅列されたとしても、素直に引き下がるとは全くもって思えない。
まだまだ謎の多い男ウルティマだが、あの水上を警戒させるほどの逸材であるというだけで期待値爆上がりである。
まだ直接的に関わっている描写のないキャラへの関心まで高めてくるワールドトリガーとかいう漫画。
めちゃくちゃこわい。




5.背を這うような恐ろしさ


断片的な描写しかなくともキャラひとりひとりの人物像が確実に形成されているという事実。
キャラの掘り下げで唐突に引き起こされる波乱の展開。
勝手に上がる関わりの深いキャラの株上昇。
明確に関わった描写のない人物との確執。

メインキャラではない、ましてや既刊24巻のうち17巻目という決して早くはない登場...であるにも関わらず、

水上敏志というひとりの男の存在だけで、「ワールドトリガー」の面白さが証明できてしまう。

今現在特筆した活躍がないキャラでも、今後水上と同じように"魅力が暴発する危険性"が残されていることも、あっけなく証明されてしまった。



水上敏志こわい。

ワールドトリガーこわい。

葦原先生こわい。




PS.というかさっきしれっと書いたけど「特筆した活躍がないキャラ」ってワートリに存在しなくね??

こわいんだけど




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