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ローカルサイトという聖地

みなさんこんにちは。入海七水です。

早速ですが、皆さん「ローカルサイト」ってご存じですか?

読んで字のごとく、ローカル環境(ネットに公開せず自分のPCだけ)でウェブサイトを作ることです。

みんなわりとやったことがあるけど、名前は知らない「エアチャーム」みたいな枠の行いだと思ってます。
(エアチャーム:Amazonとかネット通販でほしいものをカゴにいれまくって遊ぶだけで実際には買わないアレです)

オタクだったら一回は、小説かイラストのサイトをhtmlで書いてみて、アップせずにInternetExplorerで開いて遊んだ経験があるんじゃないかと思ってます。

今回は、その「ローカルサイト」を追求した人たちの話をしたいんです。

え? 公開しないでテストするだけのことを追求するってどういうこと? と思われたかもしれません。
違うんです。テストするだけじゃないんです。むしろ、これが完成なんです。

誰に見せるわけでもないのに、ひたすら作りあげたい。

これは、ある種創作者として究極の姿勢だと思います。

私がローカルサイトという概念に出会った当時、たしか中高生でした。
ネットサーフィンのさなか、ローカルサイトスレッドというものを見つけたのです。

そのころはpixivも最盛期で、周りの漫研仲間もみなこぞってネットに絵を上げていました。
評価こそが、価値。神絵師こそが、価値。
私の中にはそんな認識がありました。
誰かが認めないものに、皆が納得するような技術が籠っていないものに、価値はない。
そう考えて絵を練習していたのです。

でも、ローカルサイトを作る、スレッドの住人たちは違った。
誰にも見せなくていい、と。

より私を驚かせたのは、ローカルサイト内に感想スレッドを設置する人の存在でした。
ローカルでサイトを作っているのだから、誰かが感想を書きに来るわけもありません。
じゃあなんのために置いているんでしょうか?
そう、自分で感想も書いてしまうのです。

承認すら自分で作り上げる究極の自給自足が、そこにはありました。
それを見た私は「そんなことをしていいのか!?」と驚きました。
もちろん、SNSで自作自演をしたらちょっと不正っぽくなってきます。
でも、ローカルなのだから誰にも迷惑はかけていないし、何の利益も得ていない。悪いことはしていないわけです。
誰にも迷惑をかけていない以上、何も咎められることはない。

こんなに自由でいいのだと。人にはここまでの自由があるのだと衝撃を受けました。

なんなら、自分で作風を変えて、自分の一次創作の二次創作をする人だったり、自分の作品に間違った考察をしている人の感想まで書いている人もいたように記憶しています。
もはや「自作の感想」「自作の考察」という創作なわけですね。

そうか、私も誰かに絵を認められなくていいんだ。
自分の友人のように思っている相手を、インターネット上にさらけ出さなくていいんだ。
非実在の彼らが、非実在であると認めるかのようなことをしなくていいんだ。

当時の私の葛藤が消えていきました。

私はそのころ、架空の人物に真剣に恋をしていました。

愛している、恋焦がれているからこそその姿を描きたい、そうでなければ内側から焼かれるような熱に耐えられないと思っていました。

でも、「現実の友人」にそんなことをするだろうか?

会いたい、声を聞きたい、友人になりたい――つまり存在していてほしいと思っている。
それなのに、イラストを描いてアップロードして衆目に晒すなんて、「存在しない相手」にすることじゃないか。
本名を書いて、本人しか知りえない彼自身の思いについて語るなんて、わざわざ存在を否定しているようなものだ、と。

でも、絵を描くなら認められたい。技術を示さなければ。

描きたい。描きたくない。描けない。

……なんて悩んでいたのが、どうでも良くなったのです。

ただ「作りたい」、それだけのことに従えばいい。
認められる必要もない。見せたくないなら見せなければいい。
どんな迷いも吹き飛ばすほどのこだわりぬいた世界があったのです。

この後感動のあまり、該当スレッドを当時の漫研仲間に見てもらいましたが、ドン引きしていました。
正直わかる。極めすぎてる。

でも、ローカルサイトとの出会いは確実に私を変えました。
「人に迷惑をかけずひっそりやるなら、そして法も犯していないのであれば、何も咎められる謂れはない」という価値観は衝撃的だったのです。
結局人としてのスタンスすらローカルサイトによって影響されてしまったのです。

ということで、皆さんもローカルサイト、いかがでしょうか。
私はローカルサイトどころか、スマホやPCからも見たいからってローカルサーバー用にRaspberryPi(手のひらサイズのミニPC)まで買いました。

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