開運力で転職が成功に導けるのか!#16
「この物語は「失敗を繰り返した後に成功を価値とる」と言ったいわゆる成功物語ではありません。いろいろな人間関係に出会って翻弄された結果、自己が成長していく過程を書いたノンフィクションです。母の死を経て16回の転職後に起業し25年間、経営者として生きて還暦を迎え開運アドバイサーとして生きて行く道を選んだ物語となっています。苦しい時、何かの判断に役立つことを願っております。興味のある方は是非最後までお付き合いをお願いしたいと思っております。 <み~さん>
第二章 16回の転職
<非日常な常識>
「初雪が降ってきたね~」と若女将が呟いた。ちょうど私は宿泊の予約状況を調べにフロントに来ていて振り返って玄関の先をみるとパラパラと雪が舞い落ちていることを確認した。
「今年は早い方ですか、それとも遅い方ですか」と聞くと、ちょっと考えてから「だいたい冷えてくるこんな時期かな~」とそれを聞きながら予約台帳を見ると今夜の泊り客はいなかった。宿泊客がいないことを伝えに親方を探した。
この頃はマッサンの事を親方と呼んでいた。親方は毎日、諏訪から山を上がって9時頃ここに到着して3階の炬燵がある萩の間にいて横になっていることが多かった。親方は時間に遅れることはあまりなく萩の間に行きすでに横になっていて新聞を読んでいた。
「親方、今日は誰も泊まりません、今すぐ帰りますか?」
「いや、今日は泊まるわ~。」
「へえ~珍しいですね」
「まあ、今日はちょっと人が来るんだ、じゃあ、昼は食堂をやって夜は自由にしていいぞ」と言われた。
夕方になり食堂を閉め、部屋で休もうと親方に挨拶に萩の間いくと客人がいた。客人は久保と名乗っていた。同じ板前だというがキリッとした雰囲気のなかにも優しさある感じがしたが怖さも感じた。
「君か?南湖荘の親方に虐められて松木の下で働くことになったのは・・・まあ、あの親方は意地悪なんだよ、松木も相当やられたよ、よく泣かされなあ~」と親方を見て言った。
親方を見るとパンツ一枚で横になっているではありませんか?夏であればそんな光景は目にしたのですが、ちょっと冬ですから不思議に思い
「どうしたんですか?」と聞いてみた。「今から刺青を掘って貰うんだ、久保は腕がいいんだ、彫り師としても板前としてもな」
「そう褒めるな、兄弟」ここにも兄弟と呼ぶ人がでてきたのだ、これで二人目だ。「こいつ、腕っ節も強くて、怒らしたすごいことになるなあ」と私に聞かせてくれて頷いていた。
「見ていくか?」と聞かれたので、「ハイ」と言おうとしたら、親方が「いいから帰れ」と言う。久保さんが「兄弟!痛みに弱いから、わめく、痛がる姿を見せられないよな~、」親方をちゃかしていた。それからどうなったか聞いてはいない。
1人部屋に戻りちょっと思い出したことがありました。一年前、高三の12月の始め推薦試験で落ちて気晴らしに3日ほどバイトに来たことがありました。雪は少し積もっていたような気がします。マッサンと萩の間にいて夜も更けてきたころ、クスリを打たれたことがありました。
「お前もやるか?」と軽い感じでした。「クスリ」がどんなものか見たこともなかかったので返事に困っていて、その場の雰囲気で首を横に振ることも、また縦に振ることもせず驚いていたのです。マッサンは注射器とショートホープのタバコを出した。
箱の弓が書かれたセロハンの上を親指で押し凹みを作った。そして白い粉をそこに置き、ストーブの上にあるチンチンと沸騰しているやかんの蓋を裏返しにして、そこについている水滴を注射器に吸わせ、白い粉の上に出した。それは見る見るうちに溶けて透明になった。
私はこうやってやるのかと感心していました、特に蒸留水を使うのは理にかなっていたからだ。そしてマッサンはそれを吸い取り、自分の左腕にうちました、やり慣れている手さばきでした。ボーと一部始終を見ていると「手を出せ」と言われた。
自分も打たれるのか?急に怖くなって躊躇して堅くなっていた。変な知識を持っていてマッサンの血液型と私の血液が違うのは知っていましたので同じ注射器を使って血が混じると危険な状態になると思っていたようでした。
手を出さずにしていたら、もう一度「早く手を出せ」とちょっとイラついた感じになったのでこれ以上拒むとパンチが飛んでくるので、観念して「もうどうなってもいい」なんて腕を出してしまいました。
「お前は初めてだから少しにしてやる」と言うや否や私の左腕に注射針がささりました。もう、それは筆舌に尽くしがたい衝撃が走りました。なんとも説明できない衝撃です。打たれた瞬間、目が飛び出る感じ、座って入いたが天井に届くような飛び上がる感覚がありました。アニメのポパイがほうれん草を食べると一変に強くなる感じで、徐々に強くなるのではなくて、いきなり、あっという間に変わる感じでした。
もうじっとはしていられないのです。無性に走りたくなりホテルの廊下を端から端を何度も何度も繰り返し一時間位走っていたかと思います。マッサンは慣れているのか瞑想をしているような様子でじっとしていました。私の身体はパニックを起こしているようで、明け方まで眠ることはできなかった。
さすがに”特別なクスリ”だったのですね~。そのあと週刊誌を読み始めるのですが、あっという間に読めてしまうのです。一冊、3分位で読み終わってしまう、ページ捲りも早くただ捲っているのではなく内容を把握できるのにはびっくりです。それを50冊くらい読んでやっと朝方に寝る事が出来たけ経験をしました。後にも先にもこれ一回の経験でしたので禁断症状等は出なかったのです。しかし、人間があんなに一変するのは信じられない経験したと思います。
ゲレンデに雪が積もりスキーが出来る状態になると宿泊客の予約が増えてきました。食堂も込み始めて手が足りないことも出てきました。私はそれでもよかったのですが、私を板場に専念させることと食堂の責任者を雇うことになったのです。しかし、比較的穏やかだった霧ヶ峰の生活でしたが一変します。これが無ければまた違う、もっと別な人生があったのでしょう。
続く
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