蛇足

 先日、一年と少し書き続けていたクロシェズ♂シリーズが完結しました。読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。元は自分が読みたくて、でもネットじゃ我らが盟主はボコボコに言われてるし、そもそもカプ的にはベレトスとディミトリが人気っぽくて、増やさなきゃ読めねえ!って気持ちもあってネットの海に出した作品でした。そのおかげで他にも同好の士、というか、無双風花雪月を好きな方々に読んでもらえて、楽しみにしている等嬉しい言葉をいただけたので、出してよかったと心から思います。
 ここから先は、自分が何を感じて考えながら書いてたのか、ここはこういう設定だったとかの裏話となります。完全に蛇足です。なので興ざめだ、と思う方は読まないほうがいいです。自分の作品を読んでいただけで嬉しいので。


・そもそもの話。
 クロードが初っ端から弱った姿をシェズに見せたことが、金鹿先生だった自分には衝撃的だったんですよね。え、先生には何にも言わなかったのにシェズには言うんだ?!って。学校生活がなくて信頼関係も築けず、祖父は亡くなって盟主の座を継いで……って、そりゃシェズに構ってられないわ。シェズからすれば生活がかかってるんでたまったもんじゃありませんが、それでもさほど怒った様子を見せなかったのは本人の気質とクロードが弱ってたからじゃないかな。この傭兵すぐしゅんとした顔する……
 だからシリーズ一作目はクロシェズ♂表記にしてません。体験版やっての、この人の好い傭兵なら盟主の心を気遣ってくれそうだな、って発想からなので。ヒルダちゃんに乗せられて料理作ってるシェズかわいすぎんか? 
 級友で、でも盟主と傭兵。そんな健全な関係で見ていたのにぐしゃっとその健全さを握り潰されたのは二度目の首飾り防衛戦でのムービー、その後の宴でのクロードとシェズのやりとりでした。
 PVのあのセリフをここで言うのかとか、きょうだいの意味・ベレトスへの信頼が放任だったのはそういうことかとかぐるぐるしたところに、シェズくんのあの静かなやさしい声での気遣い。それを誤魔化すクロード。そのやりとりで自分はクロシェズ♂沼に突き落とされました。今も沈み続けてる。
 それであのアリルの谷ですよ。全ルート二パターン分プレイしたけど、シェズが感情的に怒るの、クロードにだけじゃないですか??その前兆は帝国からミルディン大橋防衛するときのグロスタール伯を疑うような発言に険しい顔してるんで、あったんですけど。クロード側からすれば、レスターを守るために手段選んでられないし、たぶん本編でもやろうと思えばもっと悪辣な手段取れたんでしょうけど。シェズの地雷を唯一踏んだ男。誇っていい、と真面目に思ってる。誰にでも一定の距離感を崩さないシェズの本音を引き出した男。めちゃくちゃもえる。しかも赤焔アリル三つ巴でのシェズ対クロードも結構感情的。ますますもえる。

・シェズの背景の話。
 公式ではシェズの正体が結局何なのか、母さんは誰なのか等が不明のまま終わってしまいました。アッシュ支援は許さん。なんだあれ、アッシュ君が他人宛の手紙預かって本人に渡さないわけねえだろ!!
 真面目な話、闇うごがどう贔屓目に見てもフォドラの敵にしかなりえないので、明らかにするわけにはいかなかったんだろうとは思ってます。風花雪月、敵対勢力は滅ぼすしかない世界観なので……
 なので好き勝手することにした、のが自分です。
 シェズはエピメニデスに器として造られた、かつて生きていた誰かを模したホムンクルス。子供時代はなく、だからキャプションで回想されてた母さんがシェズを表すのは“こども”。170cmって、絶妙な身長ですよね。少年少女でも青年でも通る。幼い口調は、軀を使うはずのエピメニデスは目覚めずラルヴァも眠ってしまい、一時的に空になった軀に生まれた魂だから。一人称がぼくなのはラルヴァの残滓。村の外で生きるにつれ、周りの人間の影響を受けて変わった、としている。
 シャンバラのエピの研究室で機材の不調→割れる水槽→朧げに目覚めたラルヴァがソティスを討つため外へ出る→力尽きて再び眠りにつき、“シェズ”が生まれる…の流れ。復讐したいのはラルヴァであって、シェズにはソティスたちとの因縁がない。
 母さん、についても捏造。考察ではアンゼルマさんじゃないかって言われてますが、時系列に無理がありそう&闇うごに付いて行った・連れていかれたのなら解放される理由がない、シェズをエピの器として保護した(させられた)のなら闇うごがシェズの姿も知らないのはおかしい、のでうちではアンゼルマさんじゃありません。
 こうだったら面白いな、で、取り潰されたフリュム家のご令嬢、としている。帝国から同盟に鞍替えしようとして失敗、コーデリア家に帝国の干渉という名目で闇うごが入り込んだのなら、帝国貴族であるフリュム家はもっと簡単だったはず。闇うごの実験から逃れたご令嬢はコーデリア伯を頼りに逃げ出すも時すでに遅く、コーデリア家にも奴らが入り込んでいた。行き場をなくして、追われながら人の少ない山奥の村に逃げて、持ってたすべてと引き換えに村の外れに置いてもらってた。そして紫髪のこどもを見つけて、見失っていた生の意味を見つけた……といった流れとしています。
 面白いのが、シェズは母さんのことを「素晴らしい人」とは言うけれど、一言も「優しい人」とは言っていないところ。そんな風に褒めるか?普通。
 魔法が使えるってことだったんで、シェズの呼び笛には母さん考案の“家に帰れる”術を刻んである、ことになってます。白魔法に類するもの。ワープとかレスキューとか。吹いた人の魔力を辿ってその人のところに帰れる。

・捏造してるところ。
 たくさんある。
 最終章だとラファエルの出身地とか。本編でも出てないですよね?ローレンツが言及してないからグロスタール領じゃない、他貴族組もまったく何も言わないから違う?どこだ?って考えて、黄燎で印象深かったモブ女生徒(ミュラー子爵家に連なる、たぶんベルラン団長と声帯同じ子)に関連付けてみた。イグナーツもどこ出身なんだろうね……
 あとバーガンディ子爵とか。シェズに執着しているのは完全に趣味。拉致監禁シチュ。一回目の首飾り防衛戦前の拠点で会話できたのがやっぱり印象的で、この人めちゃくちゃ諦観してんな……って思ってのことだった。なんとなく若いイメージ。モデルがソシアルナイトだし。そのあとの三家の鞍替え騒ぎでシーワード子爵が率先して、オールバニ子爵は彼に唆されて反乱起こしてるのにバーガンディ子爵は反乱してないし。あの章でバーガンディ領戦場になってないから、まじでうまいことやった。首飾りの戦いで少年に魅せられてしまったひと。
 シェズの正体、母さんが誰か、も捏造しているので、注意書き通りの捏造祭りだった。


・さいごの話。
 プレイしてシェズの人となりを詰めていくにつれ、この人の話が終わるのは死ぬときだな、と思ってしまった。先がない。生きるためだけに戦ってる。生きるための方法は他にもあったはずなのに、もうそれ以外を選べない。
 イグナーツとラファエルの支援Aがすごく印象的で。戦争が終わった後も傭兵するのかって聞いてくるんですよね。平民だからこその問い掛け。元から二人のこと、特にラファエルの人間性が大好きなんで滾った。好きだ。妹さんとおじいさんと平和に生きてくれ。
 好きなものと趣味も傭兵稼業、強くなること、あと仲間の笑顔で。最後はともかく前二つは好きになった・趣味になっただけで生きる上での手段じゃん……こっちが苦しいわ。
 あの終わりを書くために書き続けたところがある。もちろん、シェズとエピメニデスの決着をつけてほしかったし、クロードにも腹を割ってほしかったからそれも書きたかったけれど。ノートに二回ぐらい、ほとんど同じ文書いてるから、結構前からあの終わりは決まっていた。間グダグダしてたけど……けどその怠慢のおかげで後日談にふさわしい表紙を使えたのでよしとしたい。
 さらに言ってしまうと、あのキャプション小説は完全に勝手に生えてきた。正確には、後世のひとが時のパルミラ王とその伴侶について喋ってるのを生き続けてるベレスが聞いて寂しそうに笑う、みたいな文を書いてた。けどやっぱり、ありふれた幸せを手に入れてほしいなと思って、あんな形になった。あのシェズくんは年相応に子供っぽく、クロードはスパダリっぽい。記憶はないけど魂が覚えてるとか、たぶんそんな感じ。


 ……まあ、こんなところですかね。完全なる蛇足ですが、書いておかないと自分が忘れそう、こんな裏話も楽しんでもらえれば嬉しいな、の精神です。
 長々とお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。まだまだ書き続けると思うので、よければ読んでやってください。
 それでは。


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