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美しい言葉は美しい人にやどる

藤井風(このマガジンでは親しみと敬愛を込め、風くんと呼ぶことにしています)の音楽の魅力を語ると枚挙にいとまがないのですが、最近、日本語の美しさや日本人の美的精神、繊細さに感銘を受けることが多く、風くんの紡ぐ言葉にも「こんなに美しい言葉があったんだ!」と思わず胸を打たれることが多いな、と改めて感じる日々です。

もともと、ジャポニズムを全面に出した「まつり」や風くん本人が手書きの歌詞ノートを公開し、何度も日本語の響きを吟味しながら書いたのであろう「それでは、」などはもちろん筆頭に置くとして、他にもたくさんの名フレーズがありますよね。皆さんはどの歌詞がお好きですか?

風くんが音楽界において究極のバランサーであり、かつ稀有な才能の持ち主だと言われる所以のひとつに、アカデミックな部分と融合した「感覚的センス」があると私は思っています。具体的にいうならば、和洋ミックス、時代を軽くひとっ飛びしそうなほどに幅広い音楽を聴き続けてきたことによる「作曲」のセンス、それと岡山弁&標準語&英語ごちゃまぜにも関わらずすっと耳に入ってきてどこかおしゃれな言い回しが癖になる「作詞」のセンス。両方ともに独自のセンスが突出しているんですよね。

秀逸な歌詞として音楽ライター界隈でもよく例示されているのは、「何なんw」の「花咲く街の角誓った」ですかね……「青さ粉」とか「肥だめ」とか、そういう言葉と並列する突然の「めちゃくちゃきれいなワンフレーズ」。このバランスがもう、くせになっちゃいます。

あとは「きらり」の「何のために戦おうとも動機は愛がいい」や、「風よ」の「暮れる町の侘しさも 変わる人の空しさも」など、風くんが風くんとして在るからこそ、変にかまえず素直に綴れるリリックも心を震わせてくれます。

オードリーヘプバーンの名言「美しい唇である為には、 美しい言葉を使いなさい」。美しく、誠実であるためには美しい言葉を。逆に言うならば、美しい言葉を使う人は清らかに生きられる。ライターとして、そしてひとりの人間として心がけていきたいことだなと思うのでした。

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安藤エヌ
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