CoC パンドラの箱舟 後日談

アイドルマスターsideM 神速一魂(PL)+渡辺みのり(KP)で行ったシナリオの創作後日談。

※※シナリオネタバレに繋がるのでシナリオ未プレイの方は回れ右でお願いします※※

冥野 玄武(黒野玄武)http://charasheet.vampire-blood.net/711274

明井 朱雀(紅井朱雀)http://charasheet.vampire-blood.net/712396

シナリオリンク先 http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6858179






ズボンのポケットに入れてあったスマートフォンが振動している。電話に出ると、古書の修繕依頼だった。古書と言ってもそこまで古い訳じゃあなかったが、どうやら思い入れの深いものらしく、金額に糸目はつけねぇから直してくれという依頼……どうも少しきな臭い感じもしたが、あの出来事に比べたら瑣末な事だ。俺は依頼を引き受けることにした―

「玄武ー!本の修理終わったかー?」

「後一息だ。……っと、こんなもんか」

店番を任せている朱雀が客が来ないせいか、手持ち無沙汰にしているようだ。道楽が講じて開いてる店だからな。頻繁に客が来るわけじゃねぇし、興味を持つ奴なんて大体専門家だったり俺みたいに本の虫になるような人間だからな。

作業場からちらりと視線を店へ移すと朱雀が色んな本の背表紙を眺めては頭に疑問符が浮かんでいそうな渋い顔をしている。気になったタイトルの本を手にとって開いては即閉じて棚に戻している。今度朱雀が読みそうな漫画でもこっそり買って置いとくか……。

「依頼人もそろそろ来るから退屈じゃあ、無くなるはずだぜ。今そっちに行く」

椅子から立ち上がり、ふと作業台の隅にある金の砂時計とダガーナイフを見る。作業台に似合わないシロモノだが、これは朱雀と俺が経験した悪夢のような出来事の証明……絆の証として置いてある。朱雀が砂時計を持っていたのだが、すぐ壊しそうだからと俺に預けている。持ち出したい時はそう伝えると言っていた。ダガーナイフはミセリコルデ、慈悲の短剣。こいつを見ると未だに自分のここ…心臓に突き立てた記憶が残っている。朱雀は…どうなんだろうな。などと物思いに耽っていたら朱雀が作業場の方へ入ってきた。

「玄武、修理を頼んでた本の客が来てるぜ…一体どうしたんだ?」

「ああ、いやすまねぇ。ちぃとばかし考え事をしていた。今行く」

作業場を出ると依頼人がいた。俺から見ても若めの男…ずっと笑顔で、何を考えてるのか見えねぇ感じがするんだが、失礼にならねぇように対応する。

「お待たせしました。こちらがご依頼された本です」

とレジカウンター越しに本を差し出すと

「有難うございます。この本は貴方に持っていて頂きたく、修理を依頼したのです。ああ、返金などの必要もございません。読まなくてもいいのです。冥野さん、貴方にお贈りしますから。では、これにて」

「おいま……お待ち下さいお客様……!」

店を出て行く客をすぐに追いかけて外へとでたが周りを見渡しても依頼人らしき姿が見当たらない。返すにも返せねぇから店に戻った。

「なぁ、あの客なんか変だったな…玄武に自分の本をあげちまうなんてよ」

「ああ、あんな依頼人は初めてだな。貰っちまったもんは仕方ねぇし、検品して大丈夫そうなら店に出すさ」

「わかった!俺はそしたらまた店番してっからよ、ゆっくり読んでこいよ」

「読めって言われてもギリシャ語は俺の管轄外だな」

「ぎ…ギリシャ…俺もわかんねー!」

「ははは…今度一緒にギリシャ語の勉強でもすっか」

「え、いや…俺はいいや…あはははは」

朱雀との雑談を終わらせると俺は作業場に戻り、本を開いた。

パラパラと適当にめくると1枚の紙が挟まっていた。

「…ん?修理中こんなもん挟まってなかったはずだが…」

真新しい真っ白な紙を取り出し、見てみると何かが書いてある。

『冥野 玄武様 明井 朱雀様 

おめでとう、君たちは絆は強いものだと証明してくれた数少ない人間だ。僕の用意した謎を解ける人間がいなくなったらこの世界を消そうと思っていたよ。命拾いしたね。おみやげのナイフと砂時計は気に入ってるかい?大事にしてくれているといいなぁ、なんて。君たちはおもしろいから、また僕の玩具になってよ。楽しみにしているね。ああ、そうだ、このメモを挟んでおいたページのタイトルを教えてあげよう 【パンドラ】だ。君たちの勇気と絆を見せてもらったお礼だよ。それじゃ、また会おう』

俺は紙に向いていた視線を本の方へうつすと、確かに紙が挟まっていたパンドラとでかでかと書かれていた。ご丁寧に血文字かと言わんばかりの赤黒いインクでな。こんなのも勿論修繕中に見かけてはいなかった。

「全く、悪趣味な事をしやがる……だがよ、俺達は最強だ。どんなことだって乗り越えて見せるからな。てめぇの玩具になんて誰がなるかってんだ」

紙をくしゃくしゃに丸め、本も紙と一緒にゴミ箱へ。

受けて立とうじゃねぇか。俺たちなら、絶対負けねぇ!!

そうだろ、朱雀。

「朱雀、そろそろ飯の時間だろ?食いに行こうぜ」

「マジかよ!っしゃー!!」

……俺たちに乗り越えられねぇ困難なんてねぇよ。朱雀と一緒なら。

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