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【歌日記】7/14

◇歌
ひとたびのうたげおぼゆか天の川
宿かる人の歌ありし日の

◆本歌
詞書ことばがき惟喬親王これたかのみこともに、狩りにまかりける時に、天の川といふ所の川のほとりにおりゐて、酒など飲みけるついでに、親王の言ひけらく、「狩してあま河原かはらにいたる、といふ心をよみて酒杯さかづきはさせ」と言ひければよめる

狩り暮らし 織女たなばたつめに 宿からむ あま河原かはらに われは来にけり
(古今集 巻第九 羇旅歌 418 在原業平ありはらのなりひら朝臣)

◆本歌への返歌
【詞書】親王、この歌をかへす返すよみつつ、返しえせずなりにければ、ともはべりてよめる

一年ひととせに ひとたび来ます 君待てば 宿かす人も あらじとぞ思ふ
(同419 紀有常きのありつね)

新潮日本古典集成 古今和歌集 p161、162 



七夕の歌には恋の歌ばかりではなく、こんな旅の歌もある。酒宴の雰囲気が伝わってくるような詞書ことばがきが楽しい。
注によると、業平なりひらの歌を読んだ親王は、「業平の歌があまりによかったので、それにふさわしい歌を返すことができなかったのである。そこで供の紀有常が、親王に代って返歌を作った」のだという。短い文章の中にも、こんなにも人柄は現れる。自戒。

怒りや悲しみや不安が次々に去来して、落ち着いて課題に向き合えない週末。襲ってくる無力感……無力なのは元々なのに、どうしてこんなに、というほどに。
厳しい時代の渦中にいて「紅旗征戎こうきせいじゅうわがことにあらず」と言えた定家のことを思う。それは私が思っているより遥かに、胆力の要ることだったに違いない。歌も酒も、そういう中にあってこそ、その力や有り難さを感じられるものかもしれない。

#和歌 #歌日記

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小島奈菜子
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