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【歌日記】9/16

◇歌
夏深み散る花重ぬ百日紅さるすべり
一樹の下は風も寝ぬめり

◆本歌
村口に 辛夷こぶしの一木立ちにけり。春深くして、今日散りつくす
山峡やまかひの一樹の桜 見えて居て、暮れ行く村に、こよひ寝むとす

(釈迢空歌集p182 「遠やまひこ」)


折口信夫の眼に映る一本の木。辛夷こぶしも桜も「一樹ひとき」であればこそ、彼の心に歌を立たせた。親しみが齎す安らぎ。ここならば眠れる、ひとまず、今日のところは。風すらも遠慮がちに通る木陰には、散ったばかりの花とともに生きものたちが集う。
昨日見た百日紅も、盛りを終えた夏が逝くのを見守りながら、大荒れになるかもしれない明日の空の下でも立っている己を、夢の中で確かめているような、力強い姿で夜を過ごしていた。

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