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声劇台本「補修」 男1女1

登場人物
満島:社会の担任。補修常習犯の沢井の補修を見ている。
沢井:高校三年生。女子高生。社会補修常習犯。最後の補修を受けに来た。

配役
男:女 1:1

時間
10分~15分

以下本編↓

教室にて。
 
沢井「ねぇみっちゃ~ん」
満島「満島先生だ、何度言ったらわかる」
沢井「いいじゃーん、私とみっちゃんの間柄じゃん?」
満島「補修の間柄が、その愛称を呼ばせるような間柄になるとは思わんが」
沢井「補修とは一緒に苦楽を共にする仲なのです」
満島「楽は全然ないな」
沢井「え?みっちゃんここにいるとき私の隣で丸付けとか本読んだりとか、おしゃべりとか、楽でしょ?だから苦楽であってるよ」
満島「……」
沢井「黙った図星だ」
満島「口じゃなく手を動かせ」
沢井「えぇ~つまんなぁい」
満島「同感だ俺もつまらん」
沢井「あっ!教師としてあるまじき発言!」
満島「沢井も生徒としてあるまじき発言しただろうが」
沢井「そう?休憩は人間が生きる上で大事だよ」
満島「そうだが、今この状況で必要はない」
沢井「えええ、じゃあ不適切発言?」
満島「かもな」
沢井「ってことはおあいこかぁ~」
満島「そうだ、ほら、ここまだ埋まってないぞ」
沢井「わかんないんです~」
満島「教科書開けばわかる」
沢井「何ページ?」
満島「知らん」
沢井「え、教師なのに!?」
満島「お前自分の好きな漫画のシーンのページ覚えてるか?」
沢井「あぁ、わかんないわ」
満島「そういうことだ」
沢井「理解した~、はぁ、えぇと、ここは~何時代かな?戦国時代?」
満島「正式に戦国時代っていう時代はない」
沢井「えぇそうなの!?」
満島「そうだよ!!ほんっとうにお前は……」
沢井「あっお前って言った~」
満島「~っ!言わせるようなこと言う沢井がいけない!」
沢井「なんかDV彼氏みたいな発言しますね」
満島「偏見すぎる……」
沢井「大丈夫ですよ、私あと数か月で卒業するので」
満島「そういうことじゃねぇ……はぁ、俺は悲しい。一年生のころは成績良かったはずのお前が、二年の中ごろからこんなに落ちぶれていくなんて……何があったんだ一体……他の教科は」
沢井「ねぇみっちゃんこれでいい?」
満島「聞いてないし……まぁいいか。えーっと、はい、正解」
沢井「よしっ!私えらい!」
満島「おーえらいえらい。その調子でどんどん解いてくれ」
沢井「どれくらい?」
満島「え?」
沢井「どれくらい?えらい?」
満島「え、あーまぁ、今までの補修生徒並みには」
沢井「それえらい?」
満島「あぁ。来ない奴も普通にいる。来るだけでえらい」
沢井「そっかぁ」
満島「ん?なんだ?」
沢井「ねぇねぇ」
満島「ん、ん?」
沢井「どれだけいた?今まで、」
満島「どれだけって、補修?」
沢井「そう」
満島「んー。何人だろう」
沢井「星の数ほど?」
満島「なんでそんな壮大なんだ。というかそんなに多いと、俺が校長に呼ばれちまうな」
沢井「そうなの?」
満島「そう、難しすぎるテスト作ったって言われる」
沢井「それ簡単でも言われるの?」
満島「おぉ沢井にしては鋭いな。正解」
沢井「おおーやった。じゃあこのプリント1枚免除しt」
満島「却下」
沢井「くっ……いけると思ったのに……」
満島「どこにいける要素入ってたよ」
沢井「くぅぅぅぅ……」
満島「ほら、時間押してるぞ。早くやれ」
沢井「命令形……」
満島「少しは口を閉じて集中していただいてもらってもよろしいですか?」
沢井「おぉ!敬語!」
満島「はぁ、お願いだからやってくれ」
沢井「えー」
満島「さっきからなんなんだ、ダル絡みっていうんだぞそういうの」
沢井「わかってるもん」
満島「……どっちの意味でだ」
沢井「え?」
満島「ダルがらみの意味なのか、それを意図してやってるのか」
沢井「どっちも」
満島「一番ダルいな。俺行くぞもう?」
沢井「あーやだ!ダメ!ヤダ!」
満島「じゃあ早くやってくれ……!」
沢井「……やりたいよ」
満島「え?」
沢井「やりたいに決まってんじゃん」
満島「……お、おう、じゃあさっさと」
沢井「でも」
満島「……」
沢井「でも、これ終わったら、みっちゃんとの授業は、おしまいだもん」
満島「……え」
沢井「なーんてね!」
満島「は?」
沢井「正直マジでわからない!」
満島「おま……」
沢井「あっ、今」
満島「……さっさとやれ沢井!」
沢井「言ったよね?」
満島「言ってない!セーフだ!」
沢井「嘘つき!」
満島「お前だって今ちょっとしんみり嘘ついたろ!」
沢井「しんみり嘘ってなに(笑)ちょっと、おもろいww」
満島「あーもー!さっさとやってくれ!俺だってまだ仕事あるんだ!」
沢井「そんなのもう放ってるのも同然じゃない?」
満島「は?どこが?」
沢井「私に時間を割いている時点で」
満島「お前……わかってるな」
沢井「あっ!ほら言った!」
満島「もういい、気にしない」
沢井「まずい開き直ったらこの攻撃効かないじゃん!」
満島「なにが攻撃だ!ほら集中!」
沢井「はぁ~い、けぇつまらん」
満島「はぁ……あと今の発言はやめろ」
沢井「ん?」
満島「ほら、沢井が自分に割いてる時間がっての」
沢井「うん、それがどうしたの?当然じゃない?」
満島「えらいっつたろ?」
沢井「あー、補修生徒の中でのやつ?」
満島「そう、えらいから、自分を下げる発言はするな」
沢井「……怒られてる?」
満島「怒るというより、注意だな」
沢井「なるほど。肝に銘じとく」
満島「おう、頼んだ」
沢井「よしっ!描けた!」
満島「えっ、いつの間に!?」
沢井「天才ですから私。なんたってあの美大に推薦で受かった天才ですから!」
満島「自分で言うな。本当ちゃんと寝坊せずに授業行くんだぞ?」
沢井「もちろん!」
満島「なんか胡散臭いな」
沢井「え、ひどくない?」
満島「冗談だよ。生徒のこと信じるのが教師ってもんだ」
沢井「え~なんか胡散臭い」
満島「おい」
沢井「じゃあさ、じゃあさ!」
満島「なんだよ、お前の補修終わったからもう行きたいんだが」
沢井「あとちょっとだけ!お願い!」
満島「お、おう……」
沢井「よっしゃ!ん!」
満島「こ、小指?」
沢井「え、まさか約束のハンドサイン知らないの!?」
満島「いや、知ってるわ。唐突に出されてすぐ反応できるやつなんてなかなかいないわっ」
沢井「ははは!ごめんごめん。じゃあわかったことだし、ん!」
 
沢井と満島、小指を交わす。

沢井「おぉ、小指、ごつい」
満島「そりゃ男だからな一応」
沢井「私は?」
満島「沢井は……いや、やめとく」
沢井「なんで!?」
満島「いいから!……えっと、約束は」
沢井「む~。私は大学の授業ちゃんととる!んでせんせーは」
満島「いや信じてるって」
沢井「ちゃんと言って!ほら!」
満島「はいはい。生徒のことを信じます」
 
沢井・満島「指切りげんまん噓ついたら針千本のーます、指切った」
 
沢井「これでよしと!」
満島「小学生以来だなぁ、指切り」
沢井「これ、実際あったこと歌にしてるから、普通にコンプライアンス的に大丈夫なんかね」
満島「お前はまた変なところに目をつける」
沢井「はいまたお前~~」
満島「だからもう気にしてない!」
沢井「……満島先生」
満島「お、おう、なんだ、改まって」
沢井「ふふ!ありがとね!」
満島「はい……どういたしまして」
沢井「じゃ!帰ります!」
満島「おう、また明日」
沢井「はぁい、じゃあねぇ~」
 
沢井帰る。
 
満島「ふぅ、よし、プリントを……ん?」
 
昇降口にて、靴を履き替えている沢井。
 
沢井「~♪(鼻歌歌ってる)」
 
そこに満島が猛スピードでやってくる。
 
満島「沢井いいいいい!!!」
沢井「あっ、みっちゃん!どうしたの?」
満島「……これ、なんだ……?」
沢井「おっ!もう気づいてしまったか!問題わからなかったから、先生の手をデッサンしました!」
満島「おっ前なぁぁ~……!」
沢井「やっぱりお前だ!」
満島「だからもう気にしてない!」
沢井「生徒を信じるって言ったじゃん!」
満島「別問題だ!こっちこい!」
沢井「きゃーにーげろー!」
満島「待て!沢井!こら!」
 
だが捕まえられず沢井は帰る。
 
満島「ったくあいつは!社会以外の成績はいいのに!なんなんだ!」
 
誰もいなくなった校舎。
 
満島「……うまく描きやがって……はは、また明日だな、本当に」
 
走る沢井。
 
沢井「はぁ……!はぁ!はぁ~~~……」
 
立ち止まる。
 
沢井「ふふ、ははは、ふふふ……はぁ、……よしっ……また、明日!!!」
 
完。
 
 

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