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すそ巻き

トゥーライに初参戦です。
今回のテーマは「胡桃」ということで、私の祖母が作っていたすそ巻き(始祖巻き)を題材にして書いてみました。
短いお話なので、サクッと読めると思います。
あとざっと書いたので、誤字脱字かなりあるかと思いますが、ご愛嬌ということで……

それではどうぞ。

登場人物
加賀美(かがみ):大沢の先輩。結婚10年目。
大沢(おおさわ):加賀美の後輩。新婚。

男女比
0:2

ーーーーーー以下本編。


 
飲み屋で、加賀美(先輩)、大沢(後輩)が飲んでいる。
 
加賀美「夫婦円満の秘訣?」
大沢「はい!加賀美先輩、もう結婚して10年ですよね?なんかないですか!?」
加賀美「えぇ、親に聞けば?」
大沢「んもぉ、そんなこと言わないでください。親見ても身内過ぎて、なかなかわからないんですよ」
加賀美「うっそだぁ」
大沢「本当です!一緒にいすぎて嫌なところも見えてると特に!なぁんで続いてんのかなぁってなりますもん」
加賀美「なるほど?」
大沢「な・の・で!加賀美先輩!どうかご教授お願いいたします!!!」
加賀美「んー、いうてもなぁ、10年だしぃ」
大沢「えぇ」
加賀美「というかなんで今?大沢、結婚して、今円満そうじゃん」
大沢「まぁ、そうですけど?」
加賀美「じゃあいいじゃんそれで」
大沢「でも心配じゃないですか!こう、今の私大丈夫かなぁ……嫌われてないかなぁって」
加賀美「そんな被害妄想しなくたって……」
大沢「いいから!お願いします!」
加賀美「んもぉ~、わかったよぉ……って言ってもなぁ、」
大沢「も?」
加賀美「思いつかない。以上」
大沢「えぇ、ちょちょちょ」
加賀美「なぁに」
大沢「大丈夫」
加賀美「なにが」
大沢「絶対何かありますから!」
加賀美「いや、だから」
大沢「あるでしょ!ほら!なんか、こういうことがあったら、こうする!とか!なんか食べるとか!」
加賀美「なんだそれ、ゲン担ぎか」
大沢「そう!そなのでいい!」
加賀美「滅茶苦茶だな」
大沢「いいから、お願いします!どうか!この通り!」
加賀美「どの通りだ」
大沢「くぅ~ん」
加賀美「鳴いても無駄だ」
大沢「おいしいハトシあげますから」
加賀美「なんだそれ!?」
大沢「知らないんですかぁ?ハトシ」
加賀美「知らん。なんだそれ、鳩の肉かなにかか」
大沢「違います、うーんなんていうんだろ、すり身の揚げ物?」
加賀美「さつま揚げ的な?」
大沢「あぁ!それに近いです!けど、全く違う」
加賀美「どっちだよ」
大沢「ともかく、実家から届いたんです。おいしいでよかったらぜひ」
加賀美「なるほど、地方料理とか郷土料理、そういうやつか」
大沢「そう!そういうやつです!って、その話じゃなくて、円満!秘訣!」
加賀美「んー、そういわれても……あっ、地方、郷土……」
大沢「おっ?何かありましたか?」
加賀美「……んー私の話じゃないけど、それでもいいなら」
大沢「えぇー」
加賀美「じゃあなかったことに」
大沢「ちょちょちょ!」
加賀美「文句ないな?」
大沢「はいっ一切!」
加賀美「よし。じゃあ、話そう」
大沢「ありがとうございます!!!」
加賀美「んーと、そのなんだっけ?」
大沢「え?」
加賀美「さっきの、鳩の」
大沢「あーハトシですか?」
加賀美「そうそう、うちのさ、おばあちゃん家でもそういうのあったんだよ」
大沢「ほう!それはなんと!」
加賀美「すそ巻き」
大沢「す、そ、巻き?」
加賀美「そう、本当はしそ巻きっていうんだけど、訛ってしそ巻き。味噌を大葉でくるんで、油で揚げる、おつまみ料理みたいなのが、こっちにもあるわけよ」
大沢「へぇ~」
加賀美「それをさ、うちのおばあちゃん、作って地域の人にお裾分けするのよ」
大沢「なんか、田舎って感じですね」
加賀美「そうそう、しかもそのお裾分けっていうレベル超えてるんだよね。パックに敷き詰めて、売れるレベルの量作るんだわ」
大沢「加賀美さんのおばあちゃんすごい……」
加賀美「多分売ってたと思うんだよ。趣味の延長というか、高齢化の町で食べたくても作れない人とかもいただろうし、その代わりに」
大沢「神だ」
加賀美「んね、でさ、」
大沢「はい」
加賀美「その味噌も大葉も、多分手作りなんだよ」
大沢「はい?」
加賀美「畑でしそ作って、味噌のブレンドもまぁ手作りなわけよ」
大沢「マジですか?」
加賀美「マジ。私手伝ってたから、小さいとき」
大沢「え?」
加賀美「夏休みにね、両親共働きで、長期滞在で祖父母の家で。手伝ってた」
大沢「加賀美さんもすご」
加賀美「いや、面白かったから手伝ってただけだよ。食べ物って、全部自分たちで作れるんだって思ったかな」
大沢「それいい経験ですね」
加賀美「うん。いい経験だったね。今思えば」
大沢「おぉ~……で、それと円満になんの関係が?」
加賀美「……くるみ」
大沢「くるみ?」
加賀美「うちのおばあちゃんのしそ巻きってさ、くるみが入ってるの」
大沢「はぁ」
加賀美「あ、これも買ったくるみじゃなくて、おじいちゃんが山で拾ってきたくるみね」
大沢「マジで!?」
加賀美「そっ、それを干して割って、実を取り出して、味噌に入れるわけさ」
大沢「手ぇ、かかってますねぇ~……」
加賀美「でしょ?でもさ」
大沢「はい」
加賀美「これって、おばあちゃんのすそ巻きだけど、おじいちゃんのすそ巻きでもあるって思わない?」
大沢「あぁ……確かに」
加賀美「おじいちゃんがくるみを山から拾ってこなければ、すそ巻きの味噌は作れないし、おばあちゃんが味噌を大葉でくるんで揚げなければ、このすそ巻きは成立しないんだよ」
大沢「ですね」
加賀美「……そういうことだと思う。夫婦円満の秘訣って」
大沢「……ちょっと、」
加賀美「ん?」
大沢「なに言ってるかわかんないっす」
加賀美「……まだまだ新米にはわからなかったか。すみませーん、お会計」
大沢「あぁ!!!先輩待ってください!!!先輩ってば!!!!」
 

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