SaaSベンチャー取締役に転職して5年
転職して丸5年が経過しました。
現在の役職は "取締役 シニア・バイス・プレジデント"です。この機会に自分の目線から見た5年間を振り返ってみたいと思います。
5年で425%に成長↗︎
事業のARRはこの5年で 425% という成長を遂げました。
営業利益は9.8%、社員数もここ1~2年で急増しています。20年来続いてきた会社をベンチャーと言って良いのかわかりませんが、現在特に外部からの出資などはなく、スタートアップ企業のように資本調達してバリバリ資源投下しIPOを目指すようなビジネスモデルではなく、真面目に手持ち資金で頑張ってようやく花開いてきた格好です。一見すると地味ですが、イノベーションへの舵きりもでき、地に足が着いている分これからが楽しみだなぁと思っております。
1〜2年目は『改革期』
入社した2017年7月当時、ソフトウェアメーカーでありながら労働集約型のカスタマイズ開発を主業とした会社でした。そしてこの数年前に立ち上げた新規事業であるクラウドサービス『店番長』にピボットする真っ最中。
創業社長(現会長)からは「参謀」の役割を仰せつかり、主に新規事業のマーケティング責任者のロールに就任しました。
最初に渡されたのはPHS
忘れもしないのが、入社してすぐ渡されたのが PHS だったこと。w
2ヶ月後にはiPhone Xが発売になるタイミングでPHSって…
これが当時の会社を象徴するような出来事でした。
「質素倹約」…なのか?
PHSに始まり一昔前のシステムを使っていることに誰も文句も言わなければ、見直しもかけていません。外から来た私は違和感バリバリ。一瞬迷いましたが「いやいや、そのままはまずいでしょ」ということで社長に直談判して、モバイル端末を含む情報システムの全面見直し戦略を企画、ほぼ半年でシステムの全面入れ替えを行いました。
Microsoft 365やSalesforce、Pardotを入れたのもこの頃。並行して、会計システム、請求管理システムも刷新。コストもさほど増えないようにちゃんと選定しました。
この時点を振り返って何が良かったって「社内システム(オンプレ)を一切なくす」という3ヵ年計画をしたこと。会社に通わなくても外から使えるシステムになったおかげで2020年に起きる未曾有の災害にも全く動じずビジネスを継続できた、ということになるのですが、この頃はまだ気づきもしない、そんな大改革の一歩でした。
デジマとブランディング
マーケティング領域では、WebからMAまでデジタルチャネルの全面見直しと製品ブランディングやカタログ等の見直しを一気に着手。
前職で助けていただいた皆さんにお願いして、Webのデザイン刷新からCMS導入まで、カタログもモデル撮影から内容の全面見直し、MAに関しては自分で全てインプリ。2018年1月にはサイト移転して、同年10月には二度目のリニューアルを完了。
プロダクトはAWSベースへ
加えて、プロダクトのインフラ部分が完全に弱点になっていたので、AWSへ完全に移行するプロジェクトを先頭に立って進めました。ここも昔取った杵柄です。
多少の苦労はありましたが、2018年5月にはマイグレーションが完了。コストもがっちり圧縮。cloudpackさんの監視サービスを追加してもお釣りが来る状態へ。
以上、情シス、マーケ、製品の改革を入社から1年間に同時進行し、全て実現したスピード感と実行力は自慢です。
また、変えるだけなら誰でもできそうですが、大事なことは丸投げせず自分で監修したこともあって、ギャップは回しながらどんどん埋めていくことができますので、無駄がなく高速回転でPDCAでき、会社が目まぐるしく体質改善していきました。
3〜4年目は『パイプラインの構築』
初期に大改革を行いましたので、土台は整いました。ここからは密度と精度を高めるフェーズ。
今考えるとこの時期のテーマは「営業及び開発パイプラインの構築」に尽きます。
まずは営業パイプラインから先に動きが始まりました。Salesforceを導入し、Salesforce出身メンバーが加わり、書籍『THE MODEL』が登場したおかげで関係者が共通認識に立てたことで理想の型に自然と行き着いていったのが面白かったです。デマンドジェネレーション全体の流れが霧が晴れたように綺麗に見えました。ところで、座学の時は「パイプライン」って言葉を単なる状態の呼称のように感じていましたが、いざ体験してみると違いました。
本物の『パイプライン』の意味とは?
自社の人(業務)と情報の「流れ」をちゃんとイメージして澱み無く流れるようにすること。そしてそれをきっちりデジタルツインのような情報として関係者全体が恩恵を受け合えるように自然と更新・参照していけるようにすること。
これがイメージできた頃から組織の力がいきなり強くなりました。会議体を増やさなくても問題点が見えるし、各自対策すべき箇所が自発的に理解できるから仮説と検証が繰り返しやすい。
データドリブン浸透
全方位でデータドリブンを実践できたことも大きいと思います。
マーケティングでは、Google AnalyticsやMAをしっかり使うことでデータドリブンになりました。ここに製品のデータ分析を行えるように私自身、プログラミング技術を駆使してプロダクト自体のKPIの見える化を断行。BIツール(QuickSight)も導入してカスタマーサクセス部門にデータ領域で支援しました。営業領域もSalesforceのおかげでデータドリブンで動いていますから、全ての部門が経験則の罠や思い込みを自ら排除できるようになっていることがよかったと思います。
こうした努力の甲斐あって、実績にも徐々に反映され始め、周囲の注目も集まり始めました。
Salesforceさんに事例で取り上げてもらったり、Sansanさんの事例でイベントに登壇したりもしました。ありがたやありがたや。
開発でもパイプライン
営業パイプラインが見えたことで、企画〜開発工程のパイプラインが不活性状態であることも見えてきました。
そこで、それまで行っていたウォーターフォール式の開発が、継続的開発・運用いわゆるDevOpsと相性が悪いことからアジャイルに転向。
また、それまでバラけてしまっていたバックログ(課題)を、Jiraに一本化してツール上で優先度を付けていけるようにしっかり上流の動きとマッチさせました。
ここから先は営業のパイプライン構築と同じコツです。営業・CSから入った情報をプロダクトオーナーが取りまとめて企画化し、スプリントマスターと話し合ってスプリントで回す形です。まぁ、まだここはCI/CDも構築中で道半ばではありますが、ようやく皆が同じ場所を見て情報を更新し、流れを持って対応できるようになりつつあります。
ミセバンチョー!!
マーケティングの面では、事例も増え少し業界でのプレゼンスが上がったと思われたのですが、ニッチ市場になぜか競合企業が増えてきたこともあり、名前やイメージで覚えてもらいやすいようにインパクトのあるプロモーションを始めました。
ジョジョの空条承太郎などさまざまなアニメ作品でご活躍の小野大輔さんにCVをお願いするなど、新しい取り組みができてめちゃくちゃ楽しかったです。
5年目〜『世代の転換のはじまり』
この1年間は、第二世代の構築がテーマでした。
これまでガムシャラに事業の安定化を目指して頑張ってきましたが、そろそろ利益も潤沢に出るようになりお客様の数も増えてきたことから、営業面ではメンバーを増やし、開発面では攻めの構成見直しを行うことにしました。
私は、これまでのアドバイザリーの立場から、心機一転、開発責任者として正式に就任し、ロードマップの見直しに取り組み始めました。
古巣の先輩の力をお借りしつつプロダクトの課題を整理していくと、徐々にあるべき姿=次の世代が見えてきました。
今まで技術負債があると知りつつも、どうにかこうにか機能の追加や改修を優先して進めてきましたが、どう考えてもタイミング的にプラットフォームレベルの切り替えに踏み切るべきだという結論に達し、今まさに、大きな転換への取り組みをはじめたところです。
これが完成すると、今まで詰まって停滞していた部分が一気に流れ出す予定なので、非常に楽しみです。
社内も新しいメンバーが増えて、各チームでイネーブルメントが盛んになってきました。まさに次世代への転換のはじまりを感じます。
総括
以上を振り返るに、この5年間、私が成功に寄与したと思われるポイントは下記の通り。
クラウドを使って割と賢く情報システムの見直しをかけた
手付かずだったマーケティング部分をゼロから構築
THE MODELをベースにした営業パイプラインを構築
組織全体にデータドリブンを浸透させ手段を提供
開発はアジャイルに転換、次世代プラットフォームを立ち上げている
好きにやらせてもらえる環境というのが非常にありがたいし、やりがいがあります。まだまだ、実現したい未来がありますので、今後もがっちりコミットして行こうと思います。