『教育』遠野遥
1年の歳月を経て、読了。
これは私が途中で読むのを断念した初めての本、かつ、誰にも勧めたくないと思った唯一の本だった。高校3年生の冬、表紙に惹かれて買っただけの私は冒頭からその刺激に耐えられず、今日に至るまで一度も手に取ることがなく。きもちわるいなあ、というのが当時の率直な感想だった。
タイトル通りかなり歪んだ「教育」のお話。狂った設定も多かったけれど、学校の制度が絶対なんだと生徒が洗脳されている様は笑いごとではないのかなとも思ったり。
進級を決めるテストは学力ではなく透視能力を測るもの(誰ひとり透視能力なんて持っていないのに!)。透視テストでつけられる成績に応じてクラス分けされ、そこには大きな格差が生まれていて。しまいには「1日3回以上オーガズムに達すると成績が上がる」なんてことを生徒皆が信じているおかしな世界だった。
あまりにもぶっ飛んだ設定に最初はついて行けなかったんだけれど、いかんせん主人公がその設定に対して気持ち悪いほど冷静すぎる。ふざけた校則を一番信仰しているのが主人公で、彼の淡々としたナレーションで進められていくせいか読んでいくうちに違和感がなくなっていった。これが遠野遥が読者にかけた魔法なんだとしたらまんまと引っかかって悔しいなあという気持ち。支離滅裂なものが順接で繋がれていて、未体験の怖さだった。
1年かけて読み切ったものの、誰にも勧めたいとは思わない。私は主人公も筆者もヤバいやつだと思ったけれど、これを勧めてくるやつも総じてヤバいやつだろうな、と思う。教育への風刺が込められていることは分からんでもないけど、こみあげてくる気味悪さと怖さに勝てなかった。読了後、こんなにも不気味だと思ったのは初めてかも。
面白くないわけではない。面白いのがずるかった。私は一切お勧めしないということを前提に、それでも読みたいという人がいるなら読んでみたらいいのかもしれない。そのときは素直な感想を教えてね。