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輝く場所へ。【9作目】「短編」
夜が、眩しいほどに輝いている。
私の地元の田舎だと、
この時間にやっている店はほとんどない。
でも、ここではどこもキラキラ光って見えた。
私はここで生きていくと、
東京に初めて来た日に、心に決めた。
気付いたら上京して早6年。
この街での生活も、当然慣れていた。
走る学生、駆け込み乗車のサラリーマン。
都会の人は、いつもせかせかしている。
窮屈な電車、踏まれる足。
都会には人が溢れている。
ふと、思ってしまった。
どうして私は東京に来たかったんだろう。
あの頃は、全てが新鮮に見えていた。
光を放つ街に、異様に高いビル。
歌うトラックに、モデルのような通行人。
今まで触れてきた環境とのあまりの落差に、
自分がテレビの中に
迷い込んでしまったかのように錯覚した。
あの頃は、憧れから表面しか捉えられていなかった。
最近空を見なくなった。
どんよりしてるように見えたから。
最近植物と触れ合わなくなった。
そんなに空いてる時間がないから。
負けられないって奮い立たせる心と、
こんなはずじゃなかった弱気になる心に
押し潰されそうになる。
堪らず、ベランダに出た。
雲はないのに相変わらず、濁って感じる。
夜はこんなにうるさくなかった。
草の擦れる音、虫が囁く音の中で
星を見るのがずっと好きだった。
そこで、気付いてしまった。
空が濁って、どんより見えていた理由。
ずっと好きだった物が、
ここではちゃんと見えていなかったからだ。
光は、より強い光が近くにあると霞むけど、
周りに光がなければ強くハッキリと見える。
それを目の前に突きつけられた気がした。
私は家を飛び出した。
いつになるかはわからない。
でも、私はどうしても行く。
あの星の輝く場所へ。