歯の健康を守るためには? 虫歯が及ぼす障害と予防方法
※画像はスキマナースから
お久しぶりです。
医療法人は7~8月にかけて色々な書類を準備しなければいけず、多忙のためなかなか更新できませんでした。
なんて思ってたらすっかり盆が明けてしまいました。
みなさま体調管理はしっかりされておられるでしょうか。
本日は「歯と健康」について、看護師の目線から少し解説させていただきたいと思います。
💫この記事はこんな人が書いています💫
歯とは
歯とは言わずもがな、我々の口の中に生えている硬い物で食物を食いちぎったり、咬んだりするやつ、ですね。
顎の骨の中から歯茎(口腔顎粘膜)を突き破って、ニョッキリはえてならんでいる硬いもの。
その硬さは、体の中では最も硬い組織となります。
年齢によって異なりますが、表面は水晶ぐらいの硬さ(モース硬度6~7°)がああります。
にもかかわらず、簡単に虫歯にしちゃうんですね。
健康とは
さて、では「健康とは」について真剣に考えてみたことはありますか。
WHO(世界保健機関)は健康を次のように述べています。
このように定義した上で、人々の理想とすべき目標として、努力して進むべき方向を示しています。
しかし、健康は相対的な概念であって、具体的に健康あるいは健康水準を示すことは容易ではありません。
そこで一つの考え方として、看護における基本概念では「人々が与えられた遺伝的条件のもとでその機能を最大限に発揮できるような状態を健康とする」というのがあります。
これなら、障害や疾病を持つ人すべてを不健康とはいえず、残された機能を完全に発揮できる状態であれば健康としてよい、ということになります。
これを見ている皆さんの中で、我々医療従事者が理想とする歯をおもちのかたは少ないと思いますが……
でもこの考えをもう少しソフトにしてみてください。
いま残っている歯を治療して、残された機能を発揮できる状態にしてあげれば、どうでしょうか。
少なくとも「歯」については健康になれるんじゃないでしょうか。
そう思って私は、歯について、健康について考えています。
歯の機能が失われることによる障害
ではもし、歯の機能が失われたらどうなるのでしょうか。
人間以外の動物では、歯を失うことは命を失うことになり、生きていくことはできません。
なぜなら多くの野生生物にとって、歯がなければ食べることができず、食べることができなければ生命維持に必要なエネルギーを摂取できません。
でも人間は、道具を使い食物を加工できるから、どうってことはありません。
「ただ生きる」という目的のためだけになら、歯がないということはたいした問題ではないでしょう。
そして、生まれたときから歯が無ければさらに問題は起きないかもしれないですね。
だって、にわとりにもナメクジにも歯はないけど立派に生きています。
けれども我々は普通、歯が生えているのです。
もちろんその子供にも歯が生えてきます。
歯が生えてくることによって、顎堤は成長します。
(顎堤というのは歯茎の部分の歯の根っこを支えている骨の部分です)
歯が生えなくて、これが成長しなければ歯茎だけの状態ですが、そういう状態の方は周りにもいらっしゃるはずです。
現在高齢のかたがこの状態でも、さほど、すなわち振り返って見るほどおかしくも、あわれでもなんでもないでしょう。
でも、今の子供さんがそんな顔してたらどうでしょう。
かわいそうだと思うでしょう。
なんでかわいそうなんでしょう。
甘いもの食べて、歯磨きしなくても歯が痛くなる、なんてことはありませんし、大人になっても歯周疾患(いわゆる歯槽膿漏症)にもなりませんのに。
歯科領域の目線で見れば、歯磨きしなくても虫歯や歯槽膿漏にならない状態というのは、なんとも驚くべき素晴らしいことですが……
歯がないということは、我々人類が持ってる口腔の機能が失われるということになり、次のような障害が起こります。
噛めない(咀嚼障害)
上手にしゃべれない(構音障害)
見た目が悪い(審美障害)
歯は、ほとんどの子供に生えてきます。
そして得てして虫歯にかかります。
虫歯(齲歯)になるのは、細菌が酸を産制してその酸で歯がとけて起きることです。
虫歯は感染症です。
原因がはっきりしていて、予防ができる病気なんです。
しかし子供は予防方法など知りません。
子供の虫歯は、両親によって予防されます。
歯は、お母さんのお腹のなかにいるときから形成され始めています。
そして、自分できれいに歯磨きができるようになるのは、およそ小学校の高学年になってからと言われています。
その予防や正しい処置を怠ると、子供の歯(乳歯)が虫歯になるどころか、永久歯をも健康に保つことが困難となります。
そして虫歯によって、健康が害される可能性が生じはじめます。
子供の歯の健康を守るのは、親の役目ということですね。
虫歯による9つの健康被害
虫歯になると、次に挙げるような健康被害が発生します。
歯の移動(歯列不正)
顎関節症
ブラッシングのしにくさ(更に虫歯を増加)
顔面の左右非対称
歯槽膿漏
化膿根尖病巣(更に虫歯を増加させるうえ、麻酔が効きにくい)
歯の治療に対する恐怖心
歯磨き習慣の遅れ(更に虫歯を加速)
口臭(慣れてしまえば自分では気付けない)
虫歯が身体全体に及ぼす影響
上記のような健康被害にとどまらず、虫歯が進行すれば全身にも影響を及ぼしてしまいます。
歯性病巣感染:口腔内の細菌が抹消血液中に確認(菌血症)されていることによって、心臓疾患、人工関節、リウマチの増悪、脳膿瘍形成など、全身疾患のリスクが増大する
歯のくいしばりができない:スポーツ選手など力を発揮する場面で思うように力が出せない
脳への刺激が乏しくなる:例えばガムなどを噛んでいると、噛む習慣がない人と比べて運動神経反射が優れているといった論文があるほか、寝たきりからの快方も早いといわれている
食欲減退:人間の三大欲求である食欲が失われ、生きるための活力が失われる
歯の健康を守る8020運動
日本歯科医師会が啓発している活動に8020運動というのがあります。
ちょっと古いですがこの運動は1989年(平成元年)より推進されています。
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。
そのため「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。
楽しく充実した食生活を送り続けるためには、妊産婦を含めて生まれてから亡くなるまでの全てのライフステージで健康な歯を保つことが大切です。
ちなみに上記のみならず「60歳で自分の歯を24本以上保つこと」「40歳で自分の歯をすべて保つこと」も提唱されています。
歯を健康に保つコツ5選
じゃあどうやって歯の健康を保つのかと言いますと……
結局のところ「歯に付着したプラーク(歯垢)を歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使ってこすり落とす」というのを毎日続けることが確実な方法ではあります。
そういった習慣を身に着けた上で、より歯の健康を守りたいという方は、次のことにも気をつけてみてください。
栄養バランスのとれた規則正しい食事を心がける
何でもよく噛んで食べる
食後20分以内に歯を磨く
歯科で定期的に歯石を除去する
虫歯を放置せずに治療する
お口の健康への思い
最後に、ニュージャージー大学の元教授であり、権威ある歯科医師としてたたえられたDr.ハロルド・ワース氏が謳った詩を紹介します。
人としての機能を十分に発揮できるためには、口腔の機能、歯の機能が十分に保たれていることも大事であるということも、忘れないでください。
あらゆる健康を考える看護師って職業、最高だぜ!!
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