『宙の猫島』の紹介〜『宙の猫島』と昔ばなし
『宙の猫島』は、7匹の猫たちがお日さまとお月さまに見守られながら空の上で暮らす物語です。猫たちは宙(そら)に浮かぶ島にある素敵な家に住んでいて、いつも美味しい料理を作ったり、絵を描いたり、島のあちこちに出かけたり、妖精や生き物たちと遊んだりして楽しく暮らしています。
こうした「楽園」のような世界をどこかで見たり聞いたりしたことがあると思います。例えば日本では「竜宮城」、イングランドでは妖精の住む「ティル・ナ・ノーグ(常若の国)」、中国では仙人の住む「桃源郷」などが、それにあたります。簡単にいうと「昔ばなし」に出てくるようなイメージです。これらのイメージは世界的にほぼ共通しています。美しいお城や庭園があり、年中暖かで果物がたわわに実って食べるものにも困らず、乙女や妖精たちが毎日、宴を開いて暮らしています。『宙の猫島』でイメージしたのもこのような「昔ばなしに出てくる楽園」です。
夢みたいな楽園は所詮は絵空事で「現実」とは違う、と言う人もいると思います。『宙の猫島』のような物語に出会ったとき、「そんな夢ばかり見ていないで現実に向き合え」という批判をよく耳にします。ところがそういう考え方は一面的な見方でしかありません。ではどうして「昔ばなし」がこの世の中に存在して、何百年もの間、語り継がれてきたのでしょうか。そこには語り継がずにはいられない理由が存在しているはずです。
「昔ばなし」や『宙の猫島』のような物語の世界には一般的に言われる「現実」とはまた違う現実が存在しています。例えば『宙の猫島』の第2話では、猫たちが桃の木の妖精から桃をたくさんもらって、みんなでタルトを作ってティータイムを楽しむという場面があります。タルトを食べながらおしゃべりに興じているうちに、部屋中に花が咲きます。花は翌日に消えてしまいますが、猫たちは覚えてる限りの花を布に絵に描きます。するとそれが船の帆に見え、猫たちは今度は船を作り、雲の海原へと漕ぎ出します。
この場合の「桃」は「誰の心のなかにもある豊かさ」を象徴しています。食べると若返る桃源郷の仙果や、桃太郎(=英雄)が生まれる桃も同じ意味を持っています。猫たちが桃のタルトを食べながら楽しいおしゃべりに興じていると部屋に花が現れるという現象は、猫たちの心の中の幸福感の高まりを象徴しているのです。花が出現するというイメージはグリム童話などにもよく見られます。船は言うまでもなく新しい世界に向かって躍進していくことを表しています。着物の吉祥文様(=縁起のいい文様)としても船はよく使われます。幸福感が高まった猫たちが船を創造し次の世界に船出していく物語は、実りのある豊かなイメージを潜在的に持っているのです。こうしたイメージは実際に心の糧となります。もちろん辛い現実に向き合うことも必要ですが、昔ばなしの世界はそれとは次元の違う世界を表しています。昔ばなしが長い間、語り継がれてきたのは、誰の心の中にも存在するポジティブなイメージを導き出す力を持っていたからです。
今の世の中は、経済の低迷や戦争など暗いニュースで溢れています。先行きの不安は誰でも抱えていることと思います。漫画やドラマに、悲しみや怒りや不満やグロテスクな表現を「リアル」として描く物語が増えている背景には、そのような理由があると思います。絵空事ではない「昔ばなし」を絵空事としか思えない人たちが増えているのも無理はありません。一方で、こういう時代だからこそ「昔ばなし」が持つ心の豊かさのイメージを伝えていくこともエンターテインメントの役割だと思っています。これからも『宙の猫島』では、昔ばなしの要素をたくさん取り入れて、心の中のどこかにある世界を象徴的に描いています。できれば何も考えずに『宙の猫島』の物語や絵を楽しんでください。『宙の猫島』はいつでもみなさんを歓迎します。
なかひらまい
作家・画家・昔ばなし愛好家・ユング心理学研究会理事
contact:info@studiomog.ne.jp
<<『宙の猫島』に登場する猫たちについて>>
『宙の猫島(そらのねこじま)』に登場するのは全員が茶トラです。物語のなかでお月さまが猫の種類を茶トラしか知らなかったという設定から来ていますが、これも「昔ばなし」の設定に基づいています。「昔ばなし」には同じようなフォルムの小人や妖精などが複数登場します。これらの登場人物は心が未分化の状態を表しています。幼い子どもを考えるとわかるように、心が未分化の状態だと意識の検閲を受けることなく、良くも悪くも生きていく上でのいろんな価値観を素直に受け取ることができます。『宙の猫島』の物語において、猫たちが7匹存在するのは心が未分化の状態を表しています。そのなかで猫たちは紆余曲折がありながらも7匹一緒に生きていくための有益な価値観を手に入れていきます。重要なのは7匹が一緒だというところです。グリム童話では6人や7人の子どもたちが苦難をかいくぐりながらも必ず一緒に助けられる類型が多数見られます。同じような登場人物が複数いることでいろんな角度からモノを見られたり、力を合わせて物事を動かすことができるのです。それぞれの性格がはっきりしていないのは7匹全体が動くことで物事が進行していくことのダイナミズムに重点を置いたからです。『宙の猫島』の猫が7匹いるのはそういう理由からです。7匹の猫には際立った性格ではなく、猫たちの心の象徴として「生命力」「成長」「変化」「永遠」「情熱」「豊穣」「安心」という元型イメージに基づいた性格を設定しました。
<<これまでの実績と将来の展開>>
これまで「宙の猫島」のハンドメイドのノートや付箋入れや絵本を携えて二度のマルシェに参加。第三者がどういう反応を示すのかを見ました。その結果、府中駅前の大型商業施設「ミッテン府中」でのポップアップショップにお誘いいただきました。また横浜市歴史博物館の音楽家・中田喜直の回顧展でも同じくポップアップショップをやらせていただきました。ポップアップショップはアクセサリーを扱うショップがほとんどで紙ものを扱っていたのは私たちのショップだけでした。その年の冬には新所沢のイタリアンレストラン「パスタ・デルフィーノ」の店内で「宙の猫島」の絵画展をやらせていただきました。いずれもハンドメイドの文具を販売し、好評を博しました。そこでわかったのは『宙の猫島』はシンプルなデザイン故に高い汎用性を持っているということです。 太陽や月、雲、木、草花といった自然界の根源的なモチーフを扱っているため、臨機応変にいろんなグッズに対応できることを確信しました。また作者のなかひらまいは伝承や昔ばなしに造詣が深く、かつ『宙の猫島』が「昔ばなし」の要素を多分に含んでいることから、例えば、地域に根付いた伝承やお祭りなどとも、本質を損なわない形でコラボレーションするこが可能だということもわかりました。実際にミッテンでは大國魂神社の象徴であるカラスをデザインした文具を、中田喜直展では代表作「めだかの学校」をデザインした文具を制作し、いずれも好評でした。『宙の猫島』は象徴的なモチーフで描かれているので、クライアントのイメージも作品のイメージも損ないのではないかというのが私たちがたどり着いた結論です。この7匹の猫たちを活用したいという方とタッグを組んでグッズという側面からも現代の昔ばなしを広めていけたらいいなと考えています。
<<ストーリー版の配信について>>
「宙の猫島」は天空の島で暮らす7匹の猫の物語です。毎週金曜日に1枚の新作絵画をアップロードします。4枚の絵でひとつの物語になっています。4週目に作者・なかひらまい が書いた物語をアップロードします。絵と一緒に摩訶不思議な物語を楽しんでください。インスタグラムのフォローもよろしくお願いします。
●ストーリーのまとめ読み:https://note.com/7cats/m/m8d855af0c689
●インスタグラム:https://www.instagram.com/soranonekojima/
<<スマホ用の壁紙をフリーダウンロードできます>>
気に入った絵があったらスマホ壁紙をダウンロードしてください。画像を長押するか、PCの場合はマウスの右ボタン(Macはcontrolを押しながらクリック)で画像を保存できます。皆さんの日常に7匹の猫を連れ出してください。
<<マンガ版『宙の猫島(そらのねこじま)』>>
『宙の猫島(そらのねこじま)』のマンガ化プロジェクトです。ストーリー版を作者自ら脚色してマンガに落とし込みました。4枚の挿絵はそのままにアート(絵画)とマンガのコラボレーションを楽しんでください。
●マンガ版『宙の猫島』のまとめ読み:https://note.com/7cats/m/m455cd21fe3c2
<<毎月、額装用の絵画をプレゼント>>
宙の猫島(そらのねこじま)のメールマガジンでは毎月額装用の絵画をプレゼントしています。絵をダウンロードして額装し、お部屋のインテリアとして使ってください。額装の仕方はメルマガ登録フォームのあるオンラインショップサイトに掲載しています。IKEAの10✕15cmの額にちょうどいいサイズにプリントアウトできます。
●メルマガ登録URL:https://mainakahira.base.shop
<<作者紹介>>
なかひらまい:作家・画家・昔ばなし愛好家・ユング心理学研究会理事・多摩美術家協会会員。著作は『スプーの日記』シリーズ3部作(トランスビュー刊)。千年の間、口伝のみで伝わってきた紀国の女王伝説の謎を追ったノンフィクション『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』、毎日新聞大阪本社版に連載された童話『貝がらの森』ほかをスタジオ・エム・オー・ジーより刊行。ハンドメイドの絵本「小さな絵本」や『宙の猫島(そらのねこじま)』などオリジナル作品を随時発表している。