#007 手をつなごうよ(1)
夜22時半。仕事帰りに駅のホームのエスカレーターに乗っていた。
新卒で働き始めてまだ1ヶ月足らず、仕事に精魂疲れ果てていたわたしと、
後ろには直属じゃないけど、職種が違うベテラン上司が2人。
組織のチーフもされてて、部下をまとめるような方たちで、
仕事最中はとっても厳しい。
でも、一生懸命仕事をしている自分にとっては助けてくれる上司。
一人は私と同じ方向の電車に乗る人で、一人はホームで別れる。
エスカレーターでホームに上っていくわたしに、
「ねえ、手をつなごうよ」
同じ電車の方向に帰る上司が突然私にそういった。
「え?急にどうしたんですか?」
「いいから、・・・手をつないでもいい?」
その申し出に一瞬びっくりと、戸惑いもあったけど、
新卒の私に、もうアラフォー世代のおじさんが(失礼)
いきなり手をつなぎたいって言う??
でも、でも、きっとその言葉を言うのに、ものすごく勇気が必要だっただろう。
手をつなぎたい気持ちをストレートに私に言ってくれた、
その勇気に敬意を表して
「いいですよ」
と言って私は手を差し出した。
エスカレーター上り切るまでのしばしの間、手をつないだ。
さすがに電車に乗るときには周りを気にしてか、向こうから手を離したが、
なんとなく手をつないだきっかけの一瞬だった。
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「手をつなごう」
たったそのひとことにどれだけの想いがこもっていたのか
どれだけの勇気が必要だったのか
もし自分がいう立場だったらこんなに素直に言えるかな?
でも、たったそのひとことが、
自分と相手の想いや世界が変わっていく一言だった。
手をつなぐことで、
その手の感触やぬくもりからなにかわかることがある。
伝わってくるものがある。
伝わるものがある。
にらみ合うことではなく、
素直に伝えること、
人と人がもっと手をつなぐことができますように。