カメラさん
私のパパはお友達がいっぱいだ。
よく色んな人が家に来ては一緒にご飯を食べたり、遊んだりしてくれる。
カメラさんもその1人。
若い女の人で、名前は分からないけれど、いつもカメラを首からぶら下げて、どんなものでも撮っている。
畳の上で、カメラさんが、ママと一緒に作ったおもちゃをパシャリ。
「何撮ってるの?」
「手作りのおもちゃだよ。これ、作ったの?」
「うん、ママと一緒に作ったの!」
「凄いねー!うん、これがいいんだよね。」
キッチンで、カメラさんが、シンクに向かってパシャリ。
「何撮ってるの?」
「食べられなかったものだよ。」
「えー、変なの。」
「分かってないなあ。これがいいんだよ。」
リビングで、カメラさんが、片付け途中のおもちゃをパシャリ。
「何撮ってるの?」
「さっきまで遊んでたおもちゃだよ。」
「お片付けの邪魔です!」
「ごめんね。これがよかったからさ。」
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お付き合いをしている男性と一緒に住むことになり、彼の手も借りながら荷物の整理をしていると、小さい頃の写真が出てきた。
「お、小さい頃のアルバム?見せて見せて。」
彼がアルバムに興味津々だったので、私も内容を忘れているアルバムを開いてみた。
小さい頃の私と、まだかなり若いお父さんとお母さんの姿があった。
それと一緒に、何でもない風景の写真も。
あ、カメラさんが撮ってくれた写真だ。
今となれば、当時、大学生くらいの人だったと思う。たまに家に来ては、お父さんやお母さんと話して、首からかけている一眼レフカメラで、色々なものを撮る女の人だった。
昔は、なんでも撮るカメラさんを変に思っていた。
しかし、お母さんと一緒にペットボトルキャップにフェルトで作ったロールケーキも、お母さんの手料理に活躍してくれた生ゴミも、お父さんと遊んで散らかした積み木も、その写真たちはぜんぶよかった。
私に、当時の思い出と、日常の温かみをその写真たちはくれる。
「昔の君の暮らしが知れて嬉しいよ。」
温かい眼差しで彼が私を見て言った。
「分かってるねえ。これがいいんだよ。」
写真:ゆか 文:ぐっち