なんとも言えない感情は受け止めてくれるだけで嬉しい
仕事終わりに帰宅して19時。
近所のスーパーの閉店時間の20時まではまだかなり余裕がある。
あたりは暗くなってきたけど、街灯のおかげでそこまで真っ暗でもない。
前に購入したビニールのレジ袋を、コートのポケットに入れて、スーパーに行く。
ふと、家の間から見えた月に視線が奪われる。
“今日は月が綺麗だなあ。”
あんなに月って大きかったっけ?って思うくらいには大きい。
綺麗な満月だった。
よく、話の展開では、満月の夜には何かが起こるが、確かにそれだけの魔力というか、魅力は秘めている。
でも、月が綺麗だ。ということに対して、恥ずかしいと感じてしまうのは僕だけだろうか。
夏目漱石が、I LOVE YOU.の日本語訳を“月が綺麗ですね”とでも訳しておけと言ったせいだ。
ただただ、今みたいに本当に月が綺麗と思って、それを伝えたところで、相手から変に思われても困る。
本当に、月が綺麗な事を伝えたかっただけなのに、ってふくれるのは嫌だ。
月が綺麗ってなんとも言えない感情はどこにぶつけたらいいのか。
自分がぶつけられたらどうだろうか。
そうだねーって言って、月を見ながら歩いて欲しい。
なんとも言えない感情は受け止めてくれるだけで嬉しい。
なんとも言えない感情は言ってくれるだけで嬉しい。
そんなことを伝えたくなる関係性がI LOVE YOU?
今日は焼き鯖にしよ。
翌朝、ニュースで知った。
昨日の月が大きかったのは、満月の魔力でも、自分が感傷的になった訳でもなく、ただただ何年かに1回の、月が地球に近づく日だった。
文:ぐっち 絵:wakka