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お天道様はいつも見ている。だけど、雨の日は少し特別。
梅雨というが、常に雨が降っている訳ではなく、たまに梅雨を忘れさせるくらいにカラッと晴れる日がある。
久々の天気だと気を許してしまい、天気予報も見ずに外に出てしまうことがあるが、妻はその典型だ。これまでもそういう時に、よく傘を届けに駅まで歩いたものだ。
しかし、うっかりしているが、基本はしっかりものの妻だ。梅雨の時期なんだから、折り畳み傘くらいはカバンに潜ませているだろう。
妻は朝から会社に出かけたが、僕はのんきに在宅勤務。
長男も長女も大学生になると、家を出て、地方の国立大学に進んだため、一戸建てのマイホームには妻と2人暮らしになる。
昼に昨日の残り物を食べて、ワイドショーを観ながら、インスタントのホットコーヒーで一服。
やはり、夕方から雲行きが怪しくなるみたいだ。
妻は傘を持っているだろうか…
○○○
仕事を終えて、電車に乗る。
朝はあんなに晴れていたのに、最寄りの1つ手前の駅から雨が降り出してきた。
しかし、こういう時のために、いつもカバンの中に、折り畳み傘は入れている。
最寄りから徒歩で15分。
濡れた道路を歩くのはやっぱり億劫。
折り畳み傘って少し小さいんだよね。
最寄り駅に着いて、改札を出ると、見知った顔がある。
パパ(旦那)だ。
「えー、どうしたの。傘持ってきてくれたの?」
「忘れてたら大変だと思って。持ってた?」
「ううん、忘れちゃってて…丁度よかった!」
「だよなあ。たまにぬけてるからなあ。」
「ふふ、ありがとう。帰りにスーパー寄ってくよ?御礼に、今日はちょっといいビール買っていいからね。」
「ほんとに?来た甲斐があったなあ。」
少し自慢げなパパの横顔が可笑しくて笑ってしまう。
お天道様はいつも見ている。だけど、雨の日は少し特別。
小さな嘘くらい、お天道様にはばれてないよね。
文:ぐっち イラスト:ぐっち