ゼロから始まる統率者物語~TCG完全初心者、MTGデビューの段~
それはある日突然言われた。私の身内のEさんからこんなLINEがきたのである。
「シルバーさん。今度私の友達にEDH教えてくれませんか?MTGのカードを見て興味があるらしいんです」
「いいよ。デッキなら俺が考える。どんな人なの?」
「TCG完全初心者なので、何もわからないんですよ。とりあえず動物や昆虫がいっぱい入ったデッキがいいらしいです」
「なんだそりゃ…。うーん、とりあえず頑張るけど、もう少し情報がほしいな。その人のLINE教えてもらってもいい?直接話を聞いてみたい」
EさんからLINEを教えてもらい、Fさんと話した結果、分かったことは以下の通りだ。
・カードゲーム完全初心者。遊戯王もデュエマもポケカも知らない
・MTGは絵が絵画みたいで気になった
・ペットで犬や爬虫類を飼っているくらいの動物好きで、動物が描かれているアニマルカードで遊んでみたい
・予算はサプライ等合わせて出せて1万円までだから、デッキも安くしてほしい
うん。マジか。
でもおじさん頑張るよ。身内の紹介だし、初心者は宝だからね。
この相談を受けた当日、統率者の確定からデッキのリストを作った。
そして週末。メンバーで晴れる屋に行き、Fさんは1,000円キャッシュバックの初心者講習を受けてMTGデビューした。
この初心者講習を近くで見守って思ったことを書いていく。
カードゲーム完全初心者にMTGを教える機会があれば、参考になると思う。
土地からマナを出して呪文を唱えるだけで偉い
MTGはプレイヤーがプレインズウォーカーという魔法使いであり、マナはその魔法を使うためのエネルギーであり、クリーチャーは使い魔みたいな存在である。というほとんどのプレイヤーが忘れているであろう設定がある。
Fさんはこの説明を聞いて、なんてファンタジーに溢れた世界観なのだろうとわくわくしたという。
この純粋な眼差しを向けられるだけで、こちらは浄化されそうだ。
完全初心者のFさんが毎ターン土地を置き、クリーチャーを召喚。
この時土地を精一杯1枚ずつタップ、アンタップしている様子がなんとも慣れていない感じがして初心者だなと思った。(だから初心者なんだよ)
呪文の種類が覚えられない
改めてMTGのカードの種類を数えてみよう。
・クリーチャー
・土地
・インスタント
・ソーサリー
・アーティファクト
・エンチャント
・プレインズウォーカー
・バトル
ざっと数えて8種類だ。
遊戯王は、
・モンスター
・魔法
・トラップ
の大雑把に分けて3種類だし、
デュエマも年々種類は増えているも、土地はどのカードでも代用できるので、こちらも大雑把に分けると
・クリーチャー
・呪文
の2種類になる。
MTGの8種類を初心者が覚えるのは酷だと思った。
特にEDHを始めるとなると、これら8種類が入り乱れる100枚のデッキを扱うので、カードの能力・種類を覚えるだけで大変だ。
初心者講習を受けていたFさんも目が点になっていたし、知識や経験がない人にとっては仕事を覚えるよりも大変かもしれない。
インスタントとソーサリーの違いがわからない
はい、こちらも初心者の通る道ですね。
晴れる屋のスタッフさんが説明しても、Fさんはいまいち理解できていないようでした。
「なんで相手のターンに行動できるんだ…」というのが率直な感想らしい。
「なんでインスタント呪文だけ使えて、ソーサリー呪文は使えないんですか?」
改めて聞かれるとなんて説明したものか…。
インスタント呪文とソーサリー呪文じゃ、呪文の能力の重みが違う。妨害できるのがインスタント呪文。とか説明しても絶対納得しないと思ったから、
「とりあえずインスタント呪文とソーサリー呪文は相手のターン中に行動できるかできないかだけ覚えておけばいいよ」とだけ伝えた。
キーワード能力が多い
こちらもカードの種類と同じだ。
・速攻
・到達
・瞬速
・呪禁
・トランプル etc…
何種類もあるから覚えられない。はじめは皆そうだから、これからゆっくり覚えていこう。それで大丈夫だから。
アドバンテージという概念を知らない
これはカードゲームをしたことがある人にしか分からないのかもしれない。
「アドバンテージを稼ぐ」という例えばカードをドローして手札を多くする、1対3交換をするとお得といった概念は初心者にはない。
「なんでカードをたくさん引けると有利なんですか?」「なんで1対3交換が普通なんですか?」「アドってなんですか?」「なんで略するんですか?」「なんで皆カードをパチパチしてるんですか?」←全部実際に言われたこと
思い出してほしい。読者諸君はカードゲームを始めたばかりの頃、アドバンテージについて考えたことはあるだろうか?
コロコロコミックで切札勝舞が使っていたから強いはず。
WブレイカーやTブレイカーが強い。
遊戯が使っていたから強いはず。
攻撃力こそが正義、ブルーアイズホワイトドラゴンしか勝たん!
こういった感じで、特に考えもなくカードを入れてデッキとして遊んでいたのではないだろうか。
ここにアドバンテージというものはあっただろうか。おそらくほとんどないだろう。
初心者にとってアドバンテージという概念は最初から持ち合わせているわけではない。
こちらが教えたり、初心者自らが気づいて身に着けていく。
そういうものだというのが、今回完全初心者に教えていて思った。
結局講習会が終わってからずっとFさんがルールを覚えるためにウェルカムデッキ同士で対戦していた。
ある程度慣れてきて、スムーズにアンタップ・アップキープから始めてターンエンドまでできるようになったところでお待ちかね、依頼されていた統率者デッキを見てもらった。
今回私が完全初心者の希望に応えるがために、考えてきた統率者は
《忠実な相棒、モーウー》である。
基本的にモーウーに+1/+1カウンターを乗せて強化していき、対戦相手を殴って倒す。そういうコンセプトで作った。
デッキもレベル5~6帯で戦えるものとそれより下のレベルで遊べるものと作り、Fさんが見てほしいと思ったほうのリストで買ってもらう。
厳正な審査の結果、今回はパーティー帯で遊ぶようなカジュアル中のカジュアルデッキが採用された。
このデッキもモーウーを強化することには変わりないですが、採用しているカードはアドバンテージというものはほとんどなく、Fさんがイラストが好きで気に入ったという理由で決まった。
そのデッキがこちら。
クリーチャーはFさんが希望するアニマル満載にして、呪文は私が選んだモーウーやサブジェネラルのウィルソンを強化するようなものを詰め込んだものにした。
このデッキ、まとめて購入すると4,660円であり、5,000円を下回った。
この格安さも選ばれた理由であると思うが、Fさんがこのデッキで遊んで物足りない、強化したと思った時はすぐに提案ができるよう、元のデッキリストは残しておく。
ちなみに元のデッキの値段も6,000円くらいなので、統率者デッキとしては安いほうだと思う。
後日、Fさんからこのリストでデッキを購入したと連絡がきたため、また日を改めてメンバーを集めて統率者戦デビューをさせたいと思う。
次回は完全初心者Fさんが統率者戦にデビューした時の様子でも書いていこうと思う。
パーティー帯の対戦になると思うが、初心者がどんな対戦をするのか、周囲プレイヤーがどのような対応をするのか、乞うご期待。