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【休職からの復職体験談】(5)ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)

ステップ5.では、復職手続きを始めてから復職が決まるまでを解説します。

復職手続きはどう進むのか、本人はどう対応すればよいのか、私の経験をもとに書きました。シミュレーション代わりに読んでみてください。

<休職前から復職後までの6ステップ>
ステップ1.事前の備え
ステップ2.不調になってから休職開始まで
ステップ3.休職直後からの療養
ステップ4.復職に向けたリハビリ
ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
ステップ6.復職直前から復職後

本人としては復職ができる状態です。やるべきことをやって、確実に復職しましょう。

会社の復職手続きでは面談が複数回あるのが通例です。相手のことを知っておくと、話し合いを少しでも有利に進めることができます。

※記事内の情報は、自己責任で利用をお願いします。

5-1.復職手続き前の確認(復職可能と判断する基準など)

会社が「復職可能」と判断する基準

主治医に診断書を依頼する前、会社の人事担当者に「復職可能と判断する基準」を再確認しておきましょう。会社の基準に合わない診断書を出すと、復職不可と判断される可能性が高まります。

●事前に確認しないと、医師の診断書がムダになる場合がある

【私の失敗経験】
復職可能診断書を提出してすぐ、復職不可を告げられました。反論しても結論は変わらず。
理由は、会社と私で「復職可能の基準」の認識が異なっていたからです。私の単なる確認不足でした。

●会社の人が完全回復を求めることを予想しておく
会社の人が完治・完全回復を求めるような表現で言ってくることを、前もって予想しておきましょう。心理的ダメージが減るからです。

私の経験から言えば、完治してなくても復職はできます。仕事ができればOKです。ただし「職場で仕事をしても、健康に問題が起こらないこと」を会社に理解してもらうことは必要です。

【私の経験】「ちゃんと治して」「完治」と言ってくるのは普通
人事担当者や上司は「ちゃんと治して」「完治」と普通に言ってきました。ただ、完治や完全寛解でなくても問題なく復職しています。

(私の個人的感想)
復職面談の際、会社の人は「ちゃんと仕事ができるか?」の意味で「治った?」と聞いてくるように感じました。医師が言う「完治」までは求めていないようです。通院治療をしながら普通に働いている人は多くいますので。

会社側が困るのは、本人が中途半端な状態で復職して、復職後すぐに再度休職してしまうことです。職場の業務にも悪影響を与えるし、手続きも追加で必要になります。(厳しい言い方になり、申し訳ありません)


試し勤務の有無を確認する

会社によっては「試し勤務」制度があります。休職のまま、(本来は入れない)職場で勤務し、復職できるかを評価する制度です。

とくに休職が長引いたときは、「試し勤務」で自分の身体を慣らしていけると、無理をするリスクが減るはずです。(試し勤務ができなかった私の想像)

会社に「試し勤務」制度がある場合、事前に下記を確認しておきましょう。
・試し勤務の期間
・遅刻、早退、欠勤が許される回数
・試し勤務の終了基準
・試し勤務中、どんなことをやるか
・通勤途上や職場の業務でケガ(、病気)をした場合、業務上災害(労災)になるか?
・通勤手当
・賃金の支払いルール

法律上問題ないか不安な場合、弁護士か社会保険労務士が書いた本やネット記事で確認するとよいでしょう。「治療と仕事の両立支援ナビ」/相談可能な支援機関などに相談してみる手もあります。
参考:
「メンタルヘルス不調による休職・復職の実務と規程 ―試し勤務を紛争予防策として活用するために―」柊木野 一紀 (編)(日本法令)


時短で復職できる場合、もらえるお金を計算しておく

例えば、休職前が週40時間だったのに、復職時に週20時間で勤務する場合です。(病気休職から)時短で復職できる場合、もらえるお金を計算しておくことをオススメします。

●時短勤務の条件
週何時間から復職可能か
・時短勤務中の勤務条件(どこでどんなことをやるか)
会社によって異なります。人事担当者にご確認ください。

●時短で復職したときの給与
復職後にもらう給与が休職前とどう変わるのか、ざっくりでよいので人事担当者に確認しておきましょう。

●健康保険の傷病手当金をもらっている場合
時短勤務中の傷病手当金の扱いについて、人事担当者(+健康保険組合)に確認すべきです。

●休職中にもらっている民間保険
時短で復職した場合、もらえるお金や手続きはどうなるのか、契約している保険会社に確認しておきましょう。

●収入が「時短勤務」<<「休職中」の場合
比較検討して、復職時期を判断することをオススメします。3案考えられます。
[1] 収入優先。休職前に近い条件で働けるまで復職しない
[2] 時短で復帰。収入が減るより、職場と仕事に慣れることを優先する
[3] [1][2]のバランスをとる

生活に関わるお金の話です。復職する条件(勤務時間、収入など)は、家族とも相談しておくことを強くオススメします。


診断書の記載内容、記載の注意

復職手続きに出す診断書で、会社からの注意事項があれば聞いておきましょう。
例えば下記です。
・復職可能日:◯年◯月◯日から復職できるかを記載
・復職時に望ましい配慮:診断書に書いてもらうか、会社が指定するフォーマットがあるか


会社、医療機関、本人の立場はそれぞれ

・会社は、主治医の意見を受け入れてくれない
・主治医は、会社の事情をわかってくれない
と感じることは、私の経験では「ふつうに」起きました。

医療機関、会社、本人の間で、意見が対立するときがあります。立場が違うからです。意見が対立するからといって、敵とみなすのはやめましょう。

会社の人事担当者や上司、主治医などは、共に問題を解決するパートナーであり、その道のプロです。うまく力を借りながら、自分の問題を解決していきましょう。

【注意】攻撃的な発言や嫌がらせはNG
いくら理不尽な扱いを受けたと感じても、会社の人、産業医、主治医に攻撃的な発言や嫌がらせの類をすることはやめましょう。会社や医療機関は、(本人の想像以上に)法的な争いに備えています。法に触れる場合、毅然と対応してくるでしょう。
(参考:「現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル」難波 克行、向井 蘭 (著)(レクシスネクシス・ジャパン))

理不尽な扱いを受けた場合は、記録を取り、相談できる人に話してみることをオススメします。自分だけでストレスを抱え込むのはよくないです。


会社側の懸念「安全配慮」「戦力」「職場の負担」

復職を考えるとき、本人に抜けがちの事柄です(私は抜けていました)。どんな疾患にも共通する記載を見つけたので引用します。(「難病」を外して読んでみてください)

企業には「難病患者を働かせて安全配慮上の責任は大丈夫か」「難病患者でも戦力になれるのか」「職場の負担にならないか」等の懸念が多くみられます。一方、患者は、そのような先入観をおそれ、病気や必要な配慮について職場に伝えることができず、その結果、職場の配慮がない状況で、体調を悪化させ退職という問題状況が典型的です。

障害者職業総合センター「難病患者の就労支援における医療と労働の連携のために」p.2より引用

↑↑↑【私の意見】
3つの懸念「安全配慮上、大丈夫?」「戦力になるか?」「職場の負担」は、病気で休職した社員が復帰するとき、人事担当者や職場の人が多かれ少なかれ感じていることです。復職面談の場で、人事担当者などから問われる可能性があります。口でも身体でも対応できるように、徐々に準備しておきましょう。

「戦力」「職場の負担」については、復職後に間接的なプレッシャーを感じることもあります。  私も経験しました。

[1]「安全配慮上、大丈夫?」
人事担当者が復職判断をする際、慎重になる理由の一つが「安全配慮義務」です。復職後に健康を害することがあってはなりません。復職する本人だけでなく、職場の人も含みます。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働契約法 第5条(安全配慮義務)

安全配慮義務は「命を守る+心身の健康を守る」と理解しておけばよいでしょう。

厚生労働省はガイドラインで、職場に受け入れた患者に対する健康確保対策等を求めています。

(1)事業者による両立支援の取り組みの位置づけ
… 事業者が疾病を抱える労働者を就労させると判断した場合には、業務により疾病が増悪しないよう、治療と職業生活の両立のために必要となる一定の就業上の措置や治療に対する配慮を行うことは、労働者の健康確保対策等として位置づけられる。

厚生労働省 治療と仕事の両立支援ナビ
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」p.2 より引用

【注意】感情的な応対はNG
復職面談で感情的な発言や身振りをすると、「職場の人に悪影響を与える」と判断され、復職が遠のく可能性があります。どんなに厳しいことを言われても、職場と同様と考えて冷静に対応しましょう(もちろん、毅然と反論することは大切です)。

【私の経験】感情コントロールのテスト?
復職面談の場で、人事担当者から結構厳しめの質問やコメントをもらった経験があります。職場で起きそうなトラブルで感情が爆発しないかどうか、私をテストしていたのかもしれません。

[2]「戦力になるか?」
職場は戦場ではなく、仕事は戦ではないのですが。
「復職してから、少しずつ成果を出し、少しずつ職場の力になっていけばよい。あわてる必要はない」が、私の強い意見です。

私の経験では、急がば回れで段階的にやっていくほうが、途中で不調にならず、結果的に早く確実に完全復帰に近づきます。

ただし「労務提供」は必要です。会社が当然考えることなので紹介しておきます。(【注意】読んでいて気分が悪くなったら読み飛ばしてください)

1.両立支援に当たって知っておくべきこと
(4)労働契約に基づく労務の提供
 労働者は事業者と労働契約を結んでおり、労働時間等の労働条件が定められている。…(中略)…
労働者においては、これらの労働契約のもと、一定の労務を提供することが求められており、
事業者は就業規則等とも照らし合わせながら、就業継続の可否や就業上の措置、配慮の検討を行う。

厚生労働省 治療と仕事の両立支援ナビ企業・医療機関連携マニュアル(pdf)」p.3より引用
太字、改行は私)

↑↑↑【私の意見】
<一定の労務を提供する> 義務があるといっても、復職時点でどのレベルを要求しているかは、本人と会社によって異なります。会社の意見に対して、復職する本人に交渉の余地はあります。

【私の経験】
復職手続きの際、人事担当者は労務提供できるか(つまり仕事ができるか)を気にしていると感じました。休まずに会社にいるだけではダメ、の意味の注意を受けたこともあります。(言われた直後は結構凹みました…)

【私の意見】
復職直後は段階的に成果を求めてほしいです。厳密に「仕事の成果」を求めるなら、ジョブディスクリプション(職務記述書:業務内容と範囲、難易度、必要なスキル)や細かい条件を会社が本人に提示して、本人と主治医に判断させるべきでしょう。

もっと言えば、復職後に成果を出せるためのトレーニングを、休職中に紹介してほしいと思います。

職場は、病院やリハビリ施設ではない
⇒「我が社では、このレベルまで回復していることが復職の条件だ」としてもよいのが、本来の復職

「企業ができる がん治療と就労の両立支援 実務ガイド」遠藤 源樹 (著)(日本法令)p.155より引用

[3]「職場の負担」
休職者の穴埋めをすること、復職者を受け入れることには、職場の人に負担がかかっています。頭に入れておきましょう。

書籍には、休職者・復職者が上司や職場の人に掛ける負担について記したものもあります。(下記はメンタルヘルスに関係ない意味で読んでみてください)

職場に対する支援も必要である。休職中や職場復帰の時期には、職場内でメンタルヘルス不全者の業務を分担することや管理職には本人や職場同僚に対する配慮など、職場全体に負荷をかけることになる。そのため職場に対する支援も必要であると思われる。

[現代のエスプリ]別冊「こころの病からの職場復帰」(至文堂)p.151より引用


【私の意見】職場に入らないと仕事に慣れることはできないが、職場に負担がかかりすぎないレベルまで自分を高めておくことは必要


●「リワークは必要で重要だが、十分ではない」と思っておく
(精神疾患患者向けのリワークプログラム(以下、リワーク)を経験していない患者の考えです)
リワークはメンタル不調の再発防止に効果があります。(参考:精神疾患患者向けの復職準備やリワークに関する本)

しかし、フルタイム勤務(例えば9時~18時)で復帰する場合、(10時~15時のような)リワークに通っただけで「労務提供できます」と言い切るには不十分、と個人的に思います。(私が会社の人事担当者と話したときの感想)

●復職OKと判断する業務遂行レベルは、会社と主治医でギャップがある
「どのレベルまで仕事ができれば復職させてよいか」について主治医と会社で大きなギャップがある、と復職のたびに感じました。

職場に入らないと、職場の仕事はできるようにならない
職場での仕事に慣れるには、職場で働くしかありません。職場に入って、会社の機密情報やルールに触れる必要もあります。

【私の経験】「仕事はできるのか?」→「職場に入れてください」
復職面談で「仕事はできるのか?」と問われたら…

私は「できると考えています。しかし、職場に入らないと職場環境に慣れないし、仕事もできません。復職しないと、仕事ができるのか評価もしてもらえません」と回答していました。(注:試し勤務制度がない会社)

職場に負担がかかりすぎないレベルで仕事ができる必要がある
復職者を受け入れることは、職場に負担がかかります。最低でも、職場に迷惑がかからないレベルの知識・スキルを身につけた上で復職すると、職場の負担は減るのは間違いないです。

リハビリ期間に復職後の業務に必要な知識・スキルを調べて、知識習得やスキルアップをしておくことは大切、と私は復職のたびに実感しました。


5-2.復職可能の診断に向けたリハビリ

「通常どおり出勤して、通常どおり勤務しても、体調に問題がないこと」を証明する時期です。リハビリ生活の結果を生活記録表に記録しましょう。私の経験では最低2週間ですが、主治医や会社の指示に従ってください。

生活記録表を主治医や会社に見せても問題ない生活を続けましょう。ただし、無理して良い生活をしないようにしてください。体調優先です。

<(自分用の)生活記録表に書くこと>
・睡眠(就寝-入眠、中途覚醒、目覚めー起床、起床直後の体調)
・外出、自宅での運動
・食事、服薬の時刻
・不調の症状
・不調になった後の対処法やその後の変化(会社や主治医に安心してもらうために必要)
・昼寝、体調不良による休息の有無
・突発なことなど、ストレスになること

【注意】提出資料に書くことは、必要最低限に
会社に生活記録表の提出が必要な場合、会社から指定されたことだけを書きましょう。例えば自分用のメモが書いてあると、会社の人がいらぬ心配をするかもしれません。

(生活記録表に限らず、)自分が書いた資料を提出した場合、すべてを細かくチェックされると思ってください。


5-3.主治医の診断書

下記[1][2][3]を主治医に伝えて、判断を仰いでください。復職できそうなら、「復職可能の診断書」を依頼しましょう。

[1] リハビリの結果
・復職可能の診断に向けたリハビリ結果(生活記録表など)
・体調の変化
・調子を崩したときの対策(頓服薬、リラックス法など)

[2] 会社の条件
・会社の「復職可能の条件」「診断書の注意」「復職するときの職場環境」が変わっていたら、その内容
・休職期間の残り
・復職直後の職場、仕事に変更がありそうか

[3] 復職したい意思

【注意】休職期間が残り少ない場合、主治医が復職許可をしぶっても、「どうやったら復職できるか」を探りましょう。あきらめは禁物です。


5-4.会社への復職願

会社の復職手続きは、「復職可能の診断書」と「本人の復職意思」の両方を会社に伝えること(復職願)から始まります。(参考:復職に関するガイドラインや本)

復職手続きは、会社のルールに従って行われます。手続きを踏まないと復職できません。

手続きに、本人の想像以上の期間がかかる場合があります。待つ期間のメドを人事担当者に聞いておきましょう。

復職願を出した後の流れ

復職願を出した後の流れについては、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html )」が分かりやすいです。私の経験では、精神疾患でなくても、この手引きの流れに沿っていました。

<第3ステップ>職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
<第4ステップ>最終的な職場復帰の決定

厚生労働省・労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」p.1の図から引用

5-5.本人と会社・産業医との面談

復職願を出すと、会社の人事担当者、上司、産業医と面談があるのが一般的です。

会社が本人の情報を収集する

会社が面談するのは、復職しようとする本人の情報をつかむことが目的です。「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き (pdf)」<第3ステップ>職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成の ア が該当します。

<第3ステップ>職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
ア 情報の収集と評価
(ア)労働者の職場復帰に対する意思の確認
(イ)産業医等による主治医からの意見収集
診断書の内容だけでは不十分な場合、産業医等は労働者の同意を得た上で、必要な内容について主治医からの情報や意見を収集します。
(ウ)労働者の状態等の評価
治療状況及び病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する労働者の考え、家族からの情報
(エ)職場環境等の評価
(オ)その他
その他必要事項、治療に関する問題点、本人の行動特性、家族の支援状況や職場復帰の阻害要因等

厚生労働省・労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」p.2~3より抜粋して引用(リンクはpdf)

↑↑↑【私のコメント】
<ア(イ)産業医等による主治医からの意見収集>
産業医と主治医の情報連携は重要です。
通常、産業医と主治医のやりとりを書類だけでやると、日数がかかります。日数を短くしたければ、本人が口頭で補足することをおすすめします。
例えば…
[1]産業医が主治医に聞きそうなことを想定する
[2]事前に、主治医に聞く(診察時間をうまく使う)
[3]産業医面談で、「〇〇について、主治医はこうおっしゃっていました」と即答する(受診時のメモがあれば、いつ言ったかの証拠にもなる)

<ア(ウ)労働者の状態等の評価>
会社から聞かれたら回答できる準備をしておきましょう。どのように話をしたらわからない場合は、社外の支援者に相談するとよいと思います(いなければ探す)。
参考:治療と仕事の両立支援ナビ

Cさんが主治医にそろそろ復職したいと相談したところ、主治医からは …(中略)… 病院の医療ソーシャルワーカーが仕事に関する相談にも対応していることについて話があった。そこでCさんは医療ソーシャルワーカーに相談し、会社にどのように話をすればよいか助言を受けた上で、総務担当に復職について相談することとした。

厚生労働省 治療と仕事の両立支援ナビ企業・医療機関連携マニュアル(pdf)」p.40より引用(太字は私)

相⼿が⾔ってくることは決まっている。対応を準備しよう

病気休職からの復職に関して、会社の人や産業医、主治医が言うことはある程度決まっています。言ってきたことにキチンと返すことが、メンタルを保つ上でも大切です。事前に想定しておいて、備えをしておきましょう。

参考:「自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本」司 拓也 (著)(ぱる出版)

【私の意見】本人が復職を求める時点で「仕事で成果を出せます」と言い切るか?
相手と状況によっては、言い切る必要があるかもしれません。しかし、復職直後に「仕事の成果を100%出せる」かは疑問です。休職せずに職場にずっといる人でも、100%の成果を出し続けるのは難しいので。

相手には「復職を認められるレベルでは仕事ができる」意味のことを言っておいて、復職後は「段階を踏んで成果を出していく」のが現実解、と私は思います。

【事前準備】声のトレーニング
(休職中に声を出して話す機会が少なかった人向けです)
復職面談では、声を出して話すことが求められます。元気のない声、自信のない声、相手にはっきりと聞こえない声だと、会社の人の印象が悪くなるかもしれません。

声のトレーニング本がいろいろ出ているので、書店や図書館で見てみるとよいでしょう。実際に声を出すトレーニングもオススメします。
<声のトレーニング本の例>
・「自分の声が好きになる! 心を揺さぶる声の作り方」早川 直記 (著)(ソーテック社)

(私はやったことがないのですが、)転職の面接準備のように、声を出して面談時の想定問答を練習してみるのもオススメです。


質問にうまく答えられず頭が真っ白になったら…

私は、復職面談中に想定外のことを聞かれて、緊張のあまり固まってしまうことがありました(息も止まっていたようです)。とっさに答えてしまった結果、人事担当者に不安を与えたこともあります。
質問で頭が真っ白になった私へのアドバイスは下記3点です。
・すぐに答えない
・姿勢を正す
・息をゆっくり吐く(深呼吸ができればベスト)

ピンチの時は、
まず息と姿勢をととのえる
呼吸と心と体の三つは密接に関わっています。
…(中略)…
逆境の時、いきなり心をととのえようとしても難しいので、
呼吸や姿勢からととのえていきます。

「逆境と楽しむ力」岩出 雅之 (著)(日経BP)表紙裏より引用

攻撃されたくないなら、鎖骨を10cm上に上げればいい

「自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本」司 拓也 (著)(ぱる出版)p.23より引用

↑↑↑【私のコメント】
会社の人や産業医は、復職希望者を攻撃するわけではありません。しかし、下を向いて自信なげに話していると、はたして復職して働けるのか、相手に不安を与えます。(私の経験より)


面談のメモをとる

会社の人事担当者や上司、産業医と面談する際、メモを残しておきましょう。今回の面談の反省や、次の面談の準備に使えます。
<面談メモに書き残したいこと>
・面談の結論
・宿題(誰が、何を、いつまでに)
・今後の予定
・Q&A、相手が言ったこと、自分から申し出たこと
※事実と意見を分けて書きましょう。


復職にあたって配慮を希望するとき

【私の意見】希望する配慮の伝え方は工夫要
職場に求めたい配慮を会社側に伝えておくとよいと思います。ただし、復職したいタイミングもあるので、何をどう伝えるかは工夫が必要です。具体的なやり方は自分で考えた上での試行錯誤になるでしょう。

[1] 復職後に何が起こり得るか?(症状の再発・増悪も含む)
[2] 職場も含めて、誰に何をしてもらえば(=配慮)、 [1]の可能性と程度が減るか?配慮があれば、復職前の業務に就けそうか?
[3] もし配慮をもらえなかったら、自分はどうなるか?(配慮がもらえなくても復職はできる、という説明ロジックを組んでおく)
[4] 会社側が、本人が希望する配慮をするのは可能か?

【私の経験】深夜勤務なしの配慮を希望
復職の際、深夜勤務(22:00~5:00)がない業務への変更を希望しました。睡眠リズムを保たないと、体調が急に崩れるおそれがあったからです。薬の問題もありました。もちろん、職場内で調整がつきそうなことを「事前に」上司と相談した上で希望を出しました。

【注意】希望する配慮を伝えた後の反応を想定しておく
・「配慮」って具体的に何をしたらいいの?
・そんな配慮を求めるのなら、(休職を継続して、)療養に専念するほうがよいのでは?
と問われる可能性があります。本人としての答えは用意しておきましょう。


5-6.社内の復職手続き、復職決定

復職面談後、本人は基本的に待つだけです。会社から問い合わせなどがあれば、淡々と対応しましょう。生活リズムを整え、心と身体に力を蓄えることが大切です。

(繰り返しになりますが、)復職面談後の流れについても、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き (pdf)」が分かりやすいです。私の経験では、この手引きの流れに沿っていました。

5-6-1.会社による復職可否判断

産業医+人事+上司の3者で、復職させてよいかどうかの判断があります。面談直後、人事担当者か上司から感触を教えてもらえるかもしれません。


5-6-2.職場復帰支援プランの作成 

職場復帰支援プランをどこまで作るかは、会社によります。(例えば私の経験では、(残業制限など)就業上の配慮以外の書面を見ることはできませんでした)

本人の要望はできる範囲で伝えておきましょう。主治医から聞いた要望も伝えておくとよいです。

職場復帰支援プランの例は、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン (pdf)」(厚生労働省)が参考になります。


5-6-3.復職の決定、本人への通知

心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き (pdf)」p.4から必要な箇所を引用します。(概略の流れについては、この資料がわかりやすいと思います)

ア 労働者の状態の最終確認
 疾患の再燃・再発の有無等について最終的な確認を行います。
イ 就業上の配慮等に関する意見書の作成
 産業医等は「職場復帰に関する意見書」等を作成します。
ウ 事業者による最終的な職場復帰の決定
 事業者は最終的な職場復帰の決定を行い、就業上の配慮の内容についても併せて労働者に対して通知します。
エ その他
 職場復帰についての事業場の対応や就業上の配慮の内容等が労働者を通じて主治医に的確に伝わるようにします。

厚生労働省・労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」p.4より(リンクはpdf)

↑↑↑【私のコメント】
<ア 労働者の状態の最終確認>
<疾患の再燃・再発の有無等>と書いていますが、慢性疾患に再燃・再発はつきものです。私の経験では、「体調をコントロールできていて、働くには問題ない」と判断してもらえれば問題ありませんでした。

【私の意見】再発する可能性を否定しない
「今度の復職では、再発なんかしない!」と私は思っていました。しかし、再発はありえます。実際、再発しました。とくに慢性疾患の場合、同じ疾患の症状が再発することを想定することが大切です。事前の対策もやっておきましょう。

主治医にも相談してください。突発で休まないように、休みが続かないように。(予防策、再発の兆候をどうやって察するか、再発時の対応他)

さらに、症状が再発したときの予定外受診や相談方法について、主治医に確認しておくとよいです。主治医に確認するのが難しければ、病院の患者相談窓口や看護師などに相談してみましょう。


復職が決まるまで不安や焦りを感じるのは当たり前。頭と身体を休め、生活リズムを整える

待っている日数が長く感じると思います。私は、復職のたびに焦りまくりました。しかし、会社側の手続きは本人でコントロールできません。

手続きの状況や細かい判断内容を教えてもらえない場合もあります。待っている間に自分ができることをやっておきましょう。

待ち疲れは損です。生活リズムを整えて良い状態を続けましょう。いつでも復職できるようにしておけば、何ら問題ありません。

復職可否を判断するのは会社です。

早くしてほしい気持ちは、私も経験したので理解できます。しかし、復職者本人のためだけに会社が動いているのではないのです。会社の手続きに日数がかかることは想定しておきましょう。


<まとめ>

「ステップ5.復職手続き(復職決定まで)」では、復職手続きについて、
・会社や主治医が何を考えて、何をするか
・本人は何を準備して、どう対応すればよいか
公的機関のガイドラインを参考に、私の経験を加えて解説しました。

5-1.復職手続き前の確認(復職可能と判断する基準など)
・会社が「復職可能」と判断する条件
・試し勤務の有無を確認する
・時短で復職できる場合、もらえるお金を計算しておく
・診断書の記載内容、記載の注意
・医療機関、会社、本人の立場はそれぞれ
・会社側の懸念「安全配慮上、大丈夫?」「戦力になるか?」「職場の負担」

5-2.復職可能の診断に向けたリハビリ
5-3.主治医の診断書
5-4.会社への復職願

5-5.本人と会社・産業医との面談
・相⼿が⾔ってくることは決まっている。対応を準備しよう
・復職願を出した後の流れ
・会社が本人の情報を収集する

5-6.社内の復職手続き、復職決定
5-6-1.会社による復職可否判断
5-6-2.職場復帰支援プランの作成 
5-6-3.復職の決定、本人への通知

■大事な心がけ
・復職が決まるまで不安や焦りを感じるのは当たり前。頭と身体を休め、生活リズムを整える


ここまでお読みいただきありがとうございました。次は、復職本番のステップ6.です。

――【休職からの復職体験談】シリーズ ――
(下線のリンクをクリックすると記事が開きます)

はじめに
(1)ステップ1.事前の備え
(2)ステップ2.不調になってから休職開始まで
(3)ステップ3.休職直後からの療養
(4)ステップ4.復職に向けたリハビリ
(5)ステップ5.復職の手続き(復職決定まで)
(6)ステップ6.復職直前から復職後
(7)[番外編]もし退職することになったら
(8)参考情報(ウェブサイト、書籍)


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