「誰もが知っている人」になる
誰もが知っている人になりたい。
というポストが流れてきました。
たしかに、解る。
わたしも、小説をめちゃくちゃ読んで貰って、世界中の誰もが読んでくれて楽しんでくれたら(いや、わたしの書いてるの相当ニッチですけどね??)凄い嬉しい。
ヒャッホーってなっちゃう。
妄想だけでもご飯30杯くらい食べられる。
それと同時に、昨日、誰もが知っている方の訃報でSNSが悲しみに揺れ、彼の言葉に寄り添う姿が見られました。
わたしもいくつか好きな詩があったので、ぽっかりと何かが開いてしまったような、虚無感を味わいました。
きっと、SNSにいた人たちは、同じ気持ちを埋めたくて彼の言葉に寄り添ったのではないでしょうか。
そして、沢山の追悼ポストを拝見している時に「あ、これもこの方だったんだ」と思う詩が沢山在りました。
そして、冒頭の「誰もが知っている人になりたい」という言葉と、もう一人、わたしの地元、日立市出身の作曲家、吉田正の言葉を同時に思い出したのです。
吉田正は、戦争に従軍し、シベリア抑留の経験があります。
この時作られたのが、『異国の丘』という歌でした。
吉田正は様々なヒット曲をもっています。
代表作として名高いのは橋幸夫&吉永小百合の『いつでも夢を』だと思います。この曲は、きっと、タイトルを知らなくても、聞いたことはあると思います。
さて、その吉田正の言葉です。
実は前述の『異国の丘』は、まさにこの『詠み人知らず』が起こった歌でもあります。詳細は、wikipediaをご覧下さい。
『万葉集』を見てください。
沢山の詠み人知らずの歌があります。
万葉集は約4500首が選ばれていますが、そのうちの半数近くが詠み人知らずだったはずです。
(詠み人知らずの中には『詠んだ人は知ってるけど諸般の事情で隠してある』を含む)
今みたいにSNSもないというのに、1000年、名前も知らない庶民が詠んだ歌が語り継がれているわけです。しかも日本全国で!
それを思えば、間違いなく、いつしか本当に優れた作品というのは、詠み人知らずになって、魂の血肉になって我々の中に生き続けるのでしょう。
真実、人の心を揺さぶった作品というのは、単純に「誰もが知っている人になりたい」という現世利益的なものだけではないのだろうなと、心から思います。