IT系就職志望の方に知っておいてほしい「技術者派遣」

「技術者派遣」。
これ、聞いたことありますでしょうか？

実は、『自社で製品を開発しない系』のＩＴ企業では良くある業務形態です。

「技術者派遣」という言葉を聞いたことがないけど、ＩＴ系で就職したい！　と思っている方、是非とも最後まで読んでください。
ＩＴ系「技術者派遣」で二十年以上働いてきた私が、ガッツリ書きます。

この記事を書いている人はこんな人

私は、ＩＴ系（インフラ系）で働いていました。
『自社では開発したソフトをもたない』会社です。
ＩＴ系PG/SEとして二十年以上のキャリアがあり、自社では管理職まで経験して、現在は退職してフリーの作家をやっています。
人事サイドでは、採用面接を担当することもありました。

この記事を書くきっかけ

何故私が、今回このお話しをしようかと思ったというと、先日、就職合同説明会というのがあって参加してきたのがきっかけです。

ＩＴ系の企業さんが来ていらして、私の隣に居たオジサンなんかは、食い入るようにして聞いていました。
その時、オジサンの反応が気になったのです。
オジサンはその会社さんの提示していた労働条件と福利厚生について、かなり細かく聞いていました。
これは確かなんですよね、という雰囲気でした。

くだんのＩＴ企業さんは、
・東証プライム
・働き方：フルフレックス(コアタイムなし)
・年休も時間単位で使用可能
・自社教育も充実
・福利厚生がしっかり
・綺麗なオフィス、駅チカ(徒歩7分くらい)
という、好条件の会社さんだったのです。

しかし、私は（念のため聞きに行きましたが）、この会社さんの実態を知っていたのです・・・。

なぜならば！！
かつて一緒にお仕事をした経験があるから！！
なんなら二十年くらい！！

そうすると、こちらの会社さんが説明している、
「弊社は、福利厚生がしっかりしており」
「このとおりそれぞれにあった働き方ができ」
「残業時間などは月20時間程度」
というのに、一部、齟齬があるな・・というのが解ってしまったのです。

あの時のオジサンがnoteを見るとは思えない。
しかし、私は、あの業界に居た人間として、少しでもアンマッチを避けるために、これだけはどうしても、お伝えしたい。
とくに、3月からは来来年度採用の大学生達の採用試験が始まる。
その前に、就活生たちに、これは確認しておいて！！！　という意味で情報を出したい。
それがこの記事を書いたきっかけです。

「業務派遣」とは

先ほどの会社さんは、自社で製品をもちません。
その分『せっかく開発した製品が全く売れない。どうしよう・・』ということがありません。

ちょっと考えてみると解るのですが、たとえば、凄く大きなタイトルのゲーム。
これ開発に5年とかかかりますよね。
それで、人員もものすごい人数掛かるわけです。

つまりこういうことです。
5年間、収入がないのに社員を食わせて、5年後掛かった以上の収益を出せるか。

売れるゲーム／売れないゲームあると思います。
何十万本と出るゲームならば良いです。回収の見込みがあります。しかし、そうでないゲームが多いでしょう。
売れないと、どうしようもないのです。これが『自社開発のソフトをもっている』会社さんです。
その代わり、当たればでかいです。

では、自社で開発した製品がない会社は何を売るでしょうか？

はい、そうです。
サービスや労働力を売るのです。

そこで出てくるのが人材派遣業とかです。
これはわかりやすい。

「何人欲しいです」と派遣先から言われたら、「じゃあ、何人送りますね！」ということで人にきてもらいます。
しかし、ここでポイント。
派遣先は、人材の「事前面接」などは出来ません。
理由は簡単。
「派遣でも出来るような仕事」の為に来ているからです。

しかし、それでは困る業種があります。
ＩＴなどもそれに当たります。
ようは「プログラマーが欲しいんだけど」と言っているのに「事務が得意な子を送りました！」と言われても、困ると言うことです。

しかし、ここで問題。
派遣先は、人材の「事前面接」などは出来ません。
という部分です。

そんなときに派遣先は、派遣契約を結んでいる会社（ソフトハウス）から、技術者を派遣して貰うのです。これが「技術派遣」です。

ちょっと図を出します。

派遣先から「こんな人材居ますか？」と連絡があり、それに合う人材が派遣先に派遣されます。
技術者派遣は、会社間で派遣契約を結んでいます。
（この際にも面談は禁止されていますが、なぜか、名前を変えて実施して居るのでしっかり取り締まって欲しい）

ですので、「私」は自分の会社とは「正社員」の契約になります。
なので、給料体系、待遇などは、自分の会社のほうで決まります。
ですから先ほどの会社さんの例だと、
・働き方：フルフレックス
・年休も時間単位で使用可能
・自社教育も充実
・福利厚生がしっかり
・綺麗なオフィス、駅チカ(徒歩7分くらい)
これは適用されます。
たしかに、そうなのです。昇進／昇級なども自分の会社の基準です。

しかし、ここが問題なのです。
ＩＴの技術者派遣の場合、大体、「派遣先の会社に入って」作業をします。そして、作業の指示は「派遣先」が行います。

「私」の作業というのは、「派遣先の上司」が指示するということです。

ここで、なにが問題か、と言うと。
自社：コアタイムなしフルフレックス
派遣先：8:30～18:00(フレックス？　ナニソレ？)
という労働時間が定められていた場合、「私」は「派遣先の勤務形態に合わせる」ということになるのです。

そうです。
派遣先が「今日は派遣先社は創立記念日で全員有給使ってね！」と言ったら、それに合わせなければなりません。

自社が「有給はよほどのことがなければ自由に使えますよ！」と言っていても、くだんの会社さんの派遣先では、「この日は有給使用」という日が年間9日もあります。(体験者です)
なお、どの会社さんも「有給は年5日以上使っていただけてますよ」という説明をするかと思います。しかし、ここに「自由に」とは一言も書いてありません。9日間の使用に含まれます。
(なお、この9日のお休みの内訳は夏休み、冬休み、ＧＷです・・絶対に使わせられます)

つまり。
初年度大抵の企業さんは、10日の有給があると思います。
そのうちの9日を派遣先に「休め」と言われて使用することになります。
自由な有給は実質1日です。

そして、自社は「駅チカの綺麗なオフィスビルの14F。コンビニも入ってるし、ランチもあちこち出掛けられて素敵♥」という環境かも知れません。
しかし、くだんの会社さんの派遣先は、
「駅から徒歩20分。コンビニ・・？　ランチ・・？　休み時間は会社の敷地から外へ出るな・・？　え・・？」
という環境で、「え、なにこの建屋、めっちゃ古いしぜんぜん綺麗じゃないんですけど？」という環境です。

「綺麗な環境で素敵に働く私」を想像していた人は、マジで、ヘコむと思います。

今、各大学さんって、フリースペースとか、綺麗でフリードリンクがあったりして、明るくて、居心地が良い感じに作ってると思います。
その延長で、「この程度の所にお勤めしたいな」と思って、見学に行った会社さんは「イメージに合うな♥」と思ったのに、「え、なにここ……」というところに配置されます。

正直、そのギャップで、頭が混乱すると思います。

その上、自社は「残業20時間」といっていたのに、派遣先だと「22時まで帰らないで貰えます？　休日出勤して下さい。あ、36協定は守りますけどww」という環境です。

「技術者派遣」をやっている場合、自社はラクなんです。
人だけ出してれば、一応お金は入ってくるので。ただし、たいていの場合、「単価に合わない」ですけど。

で、自社から派遣先に抗議してもらうことは可能です。
多分、次の更新で切られます。なので、滅多なことでは、抗議しません。

まとめ

今回「技術者派遣」について書きました。

今回、なにが言いたかったかというと。
「技術者派遣」という形態で仕事をする会社さんの場合、求人票に書かれているのとは違う待遇で働くことがあるということです。

ですのでＩＴ系で就職活動をする際、
・「技術者派遣」がどの程度の割合になるのか
・採用されたら「技術者派遣」になる可能性はあるのか
・「技術者派遣」でなくても、この雇用条件でない働き方をすることがあるのか(実は自社ではなくお客さんのところで作業するということも多々あります)
・初年度付与される有給は何日で、そのうち会社の都合で何日使うのか
・自社と違う所で働くことはあるのか
そういうところは、是非、気にしていただけると、入社してからのアンマッチが少なくなるのではないかと思います。

このアンマッチをなくす為、就活生の方ならば、ＯＢとかの方に話を聞いたりすると良いと思います。
狙っているＡ社さんには知り合いがいなくて、同じ地域で同業をやっているＢ社さんに知り合いがいる場合、Ａ社さんって知ってますかと聞くのは、全然アリです。むしろ聞いたほうが良い。
他社な分、容赦なく教えてくれる。

いまから、就職活動する方、して居る方。
雇用形態については、よく確認したほうが良いと思います。

なお、私がお世話になっていた派遣先で、他社の派遣の人がこんなことを言ってました。最後に載せておきます。

「社員＝神様、関連会社＝人間、派遣さん＝奴隷」