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バースデーケーキ
「なんか、それ、淋しくね?」
薄ら笑いと共に言われた言葉を聞いて、千夏は「はあっ?」と聞き返していた。何気ない無神経な一言に、心底腹が立った。
「なにそれ、淋しいって」
「だってさぁ」
男は、にやにやと笑いながら言う。「三十代の独身女が、帰宅して、途中でケーキ屋に寄って、一人で誕生日祝いするって。なん、淋しいだろ。なんか、惨めって言うか」
丁度、千夏が友人たちと話をしているのを聞きつけて、男はそんなことを言ったのだった。そもそも、友人たちからの食事の誘いを、断ったタイミングだった。
(なんだ、お前は、通り魔かよ)
千夏は苛立ちながら、「それ、千葉さんに関係あります?」と殊更冷たい声で、言い放っていた。
「関係はないけど、なんか、カワイソーだと思って」
関係ないなら黙ってろ、と千夏は思いつつ「なんですか、それ、カワイソーって、凄い上から目線ですね。不愉快」とだけ告げて、その場を去った。
後ろの方から、『ちょっと……川島さん怒ったでしょ!』『何、無神経なこと言ってんの!』『プライベートな事でそういうこと言う必要ってないですよね』『しかも立ち聞きなんて、最低』と女子たちが総攻撃をしてくれているので、とりあえず、多少の溜飲は下がった。
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