梅田駅を降りてまっすぐ ( 1/2 )
汗をかきながら、ビジネスバッグを右肩へ背負い、スーツケーをスゴロゴロと引っ張っていた。
心理職採用試験を受けるため、私は1年ぶりに関西の地を踏み
無事、迷子になった。
*…*…*
横断歩道の信号が赤になった。
小さなため息を1つ、ホッとつき、足を止める。
当時はまだ、ほんの少しスマホが珍しかった時代。
ポチポチとガラケーを操作して地図機能を作動させた。
地図は私の現在地と目的地を表示してくれたけれど、なにをどうすればそこへたどり着けるのか…
方向音痴なうえに地図が苦手な私にとって、小さな画面に写し出されたそれを解読する事は、大変に困難な作業であった。
「ふっ…うふふふっ………」
ただ、予約したホテルへ行きたい。それだけなのに。
思わず1人で笑ってしまう程、わからなくて途方に暮れていた。
そうは言っても、ここは日本だし。
駅の外に出る事もできたしね。
わかんなかったらホテルに電話してみよう。
とてもよく晴れていた。
こういう時に限って、全く人に会わない。
青い空を眺めていたら『大阪城』と書かれた看板が視界に入った。
その瞬間、私は、コインロッカーへ荷物を預けて遊びに行ってしまおうかと思い始めていた。
信号がパッと青にかわった。
視線を空から正面へ戻すと、大きなリュックを背負った女性が向こう側に立っていた。
その人は、真剣に何かを見つめている。
『海外から来た観光の人かな……?』
ぼんやりその姿を眺めていると、私の視線に気がついたのか彼女が顔をあげて、バチっと目が合った。
みるみる笑顔になる彼女。
大きな瞳をキラキラと輝かせながら「スミマセーン!!!!」とこちらへ駆け寄ってきた。
褐色の肌と美しいウェーブの黒髪を輝かせながらずんずん近づいてくるその人は、とても大きな地図を握りしめていた。
間違いない。
おそらく彼女も、完全なる、迷子である。
どうしよう。
私も、迷子だよね。
迷子と迷子が出会ってしまったら………
さらに迷うのではないのか…?
でも待てよ、私は4年間も関西に暮らしていたわけで
(住んでたの京都。ここ大阪。土地勘、皆無。)
あんなに大きな地図だったら、私でもわかるかもよ!?
(そもそも、地図の読解力ゼロだけども。)
駆け寄ってきた彼女は
「大阪城、イキタイ…!ドウスレバ、イケマスカ…???」
と問いかけてきた。
私も旅行者で、実は道に迷っている事を伝えて
どれどれと、彼女が握りしめていた地図を一緒に見てみた。
方向音痴あるある
①地図、くるくる回しがち。
②現在地が何処なのか、わからない。
③もう、なにがなんだかわからない。
「ふっ…うふふふっ…………!」
……私たちは、途方にくれていた。
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