【旅行記】関西・人形劇旅行⑨〜なにわ人形芝居フェスティバルその6〜
こんにちは。おおかみの人です。
今回のトップ画像は、イマイアキさんの【サーカスの夜】の1場面。
以下、写真の掲載にはイマイアキさんの許可を頂いています。
今回の記事は、先日からのなにわ人形芝居フェスティバルの観劇レビューの6つ目、そして、それ以前から続いている関西人形劇旅行の記事の9つ目になっています。
前回の記事はこちら。
⚠この記事には、人形劇のネタバレが含まれます⚠
人形劇の展示をみて、潟見さんと少しお話ししたあと、三千佛堂を離れて再び松屋町筋を直進。
今度は、歩いて12分ほどの宗念寺に向かう。
次の演目、イマイアキさんの【サーカスの夜】が始まるのは13:45。宗念寺にたどり着いたのは13:40。時間がたくさんあったはずなのに、あっという間に過ぎて、今回もギリギリの入場。
境内に入り、スタンプラリーのスタンプを押してもらって、受付を済ませてお寺に入った。
ここからは、イマイアキさんの【サーカスの夜】を振り返る。
会場に入ると、客席の前の、スペースで言うと約2畳ほどの狭い空間にぎっしりと楽器類が置かれている。
手で押して演奏するハンドベルやトイピアノ、鉄琴…様々な楽器が置かれている真ん中に、黒い紗幕に覆われたサーカステントの舞台があった。
定刻になり、イマイさんが登場。
本作【サーカスの夜】は、人形劇ではなく音楽作品が先にできて、それに合わせて人形劇の作品を作り上げていったそうだ。
ちなみに、楽曲【サーカスの夜】は、イマイアキさんのホームページのディスコグラフィのページから冒頭を視聴することができる(一番下の方にあります)。音楽を聴いて、どんな人形劇だったか是非ご想像していただきたい。
イマイアキさんは、ひとりですべての楽器の演奏と人形の操作を行う、いわばオールラウンダーのアーティストさんである。
まず、アコーディオンを抱えてそれを演奏し、その手が空いたかと思うと今度は鍵盤ハーモニカ(【アンデス】という、リコーダーのような音がなる楽器)の吹口をくわえてその演奏をしたり、今度はハンドベル、今度は鉄琴、トイピアノ…と、それだけでもすごいのだが、なんと履いている靴には鈴やカスタネットが仕込まれていて、演奏をしながらリズムパートも完璧にこなす素晴らしい演奏家なのである。
わたしだったら、手足が10本あっても、絶対こなせる気がしない!!
ただでさえいろんなものを扱わなければいけないのに、そこに人形の操作も加わる(しかもアコーディオンを抱えた状態で)ので、観ていて「ほえ〜!!」だった。
その「ほえ〜!!」は…演奏や人形の操作でとても動きはせわしないはずなのに、それを感じさせず、サーカスの夜の世界観を表現していることへの驚きだったり、ちいさな夜のサーカスの世界にすぐに惹き込まれてしまう、あのうっとりとした幻想的な感じ…が、思わず呟きになって漏れたものだ。
生ぬるい風が吹く夜…
アコーディオンの生演奏で、【サーカスの夜】が始まる。
紗幕が取り払われ、サーカスのテントが目の前に現れた。
最初にステージに現れたのは、客寄せの小ザル。
手にはシンバルを持っていて、
シャン シャン シャン シャン
キッキッキッキッキ…
と、賑やかにお客さんに呼びかける。
優しいイマイさんの語りが、小ザルの可愛らしい表情と重なって、これから始まるサーカスをより一層楽しみにさせてくれた。
一定のリズムを刻む小ザルのテンポに合わせるようにしながら、イマイさんの素敵な楽器演奏が、サーカスを彩る。
アコーディオンのどこか物悲しいような、切ないような音色そのものが、サーカスの夜の世界観とマッチして、とても心地よい。
ここから様々なサーカス団員たちが登場する。
今まで一度も玉から落ちたことがない、玉乗りパンダ。
激しく速い鉄琴の演奏が見る人を驚かせる、中国の鉄琴少女のミンミン。
恋するピエロに、ツチノコ、バレリーナのマリアンヌ…
驚いたのは、小ザルに始まるこの一連の登場人物たちがすべて【おもちゃ楽器】だと言うことだ。
【人形劇】という大きなくくりの中にあって、今まで(あまり)観たことがない、いわば【(人形ではない)モノが主役の人形劇】だった。
どこかレトロな雰囲気の漂うおもちゃ楽器のサーカス団員たちは、その誰もが何かを演奏したり、音を奏でたりすることができる。
小ザルはシンバル、ピエロはドラム、ツチノコは…鳴き声!
可愛らしく、時に少し怖い雰囲気も漂うおもちゃ楽器たちのビジュアルを楽しみながら、その楽器…サーカス団員がどんな音色を奏で、それにイマイさんがどのような演奏を重ねるのか…これが自分なりの、【サーカスの夜】のいちばんの観どころ・聴きどころだと思うのだが、そのどれもが素敵で、どれもがそのすべての世界観を演出するのに欠かせず、どれもこれもが揃っての【サーカスの夜】だった。
わたしは実際のサーカスを観たことはないが、あのちいさな舞台と、所狭しと置かれた楽器たちの演奏、そして次々現れるユニークな団員たちを観て聴いて、「このわくわくとした感じが、サーカスの醍醐味なのだろうな」と思った。
サーカスの団員たちが次々現れるだけではなく、そこには切ない恋の物語もあった。
ドラム遣いで、ほんとうはブランコ乗りになりたかったピエロと、バレリーナのマリアンヌ。
彼と彼女にいったいどんな恋の物語があったのか…それは是非、実際の劇の上演でお確かめいただきたい。
ピエロのエピソードも、マリアンヌのエピソードも、どちらもココロがきゅうっと切なくなった。
バレリーナのマリアンヌは、オルゴール人形になっていて、夜がモチーフになったとある名曲を奏でる。
懐かしく、誰もがどこかで聞いたことがある(かもしれない)名曲なのだが、こちらも彼女の恋の物語と一緒にお楽しみいただきたい。
マリアンヌの奏でる音色に合わせて、イマイさんがアコーディオンで演奏する様子がとても素敵だった。
劇の最後には、今まで登場したすべての団員がステージ上に登場して大団円!
賑やかにサーカスは終わっていった。
サーカスが終わると、ひとりぽつんとピエロが佇んでいて…。
終演後はちょっとしたタネ明かしの時間。
登場したサーカス団員のおもちゃ楽器たちは、ネットを駆使したり雑貨屋さんを巡って探したり…と、それぞれの団員にエピソードがあるようだった。
わかる、わかるぞ!!あの、「これだ!!」というモノに出逢ってしまったときの感動が!!
話は演奏にも及んだ。
いったいどうやって演奏していて、この楽器は何で、どこに何を仕込んだらひとりで全部演奏できるのか…ということがとても気になって、楽器や靴に至るまで見せてもらったが、やっぱりよく分からなかった。
ひとりでこれを全部やっていたのか!!と思うほどの、モノの量の多さ。わたしだったらきっと、頭の中がこんがらがってしまうだろう。
今回の【サーカスの夜】を観て、
【モノ(=人形)ありきの人形劇】って、いいな、と思った。
普通、人形劇を作るときは、お話が先にあって、それに合ったような人形を作り上げていくことが多いように思う。
【モノありきの人形劇】は、その逆だ。
人形が先にあって、そこから物語を作っていく。
なので、そのモノをいかに生かした人形劇が作れるか、ということが、より一層問題になってくる。
【サーカスの夜】は、その人形…おもちゃ楽器という【モノ】の生かし方が、とても上手だな、と感じた。
どれかが世界観から外れたりすることもなく、見た目も素材も何もかも違うおもちゃ楽器たちが集まって音色を奏でる様子はまさにサーカスそのもので、それを取りまとめるイマイさんのアコーディオンの音色がまた一層サーカスの雰囲気を後押ししている。やはり、どれを欠くこともできない、過不足のない満たされたパフォーマンスだと感じた。
「こういうモノの魅せ方があるのか」と、たいへん勉強になった。
イマイさんと初対面してお話しし、素敵な人形劇まで観せてもらえて、わたしはほくほく顔で会場を後にした。切ないアコーディオンの音色が、耳の奥の方に残っているような気がした。
イマイアキさんの【サーカスの夜】の観劇レビューはここまで。
読んで頂きありがとうございます。
次回は、このフェスで観た最後の演目、人形劇団くりきんとんさんの【バルバルさん】(と、おまけ)について綴ろうと思います。
次回もお楽しみに。それでは。
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