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1-2*連絡先交換

何もしなくても時間は過ぎていく。
バイトも大学も同じのTに、Iさんを気になっていると打ち明けた頃には12月になっていた。
Tとは高校もおなじだったらしい。共通の友人がいたこと、ほぼ毎日一緒にいること、私に誘われてスーパーで働きだしたこと、いろんな相乗効果で仲良くなるのに時間はかからなかった。だから、私の大切な友人になるのは必然だった。

「連絡先きかなきゃ進まんよ」
Tと、Tとの共通の友人Kとの3人で電話をしていたときにKから言われた。
そう、私はIの連絡先さえ知らなかった。
バイト先のスーパーはイマドキにLINEのグループがあるわけがない。
同世代の人とはLINE追加している人もいるし、追加していない人もいるし。おばちゃまには聞かれたから知ってる。そんな程度。

「年越えるまで聞かなかったらなんか罰ね」

そういうのかったるくてウエ~ってなりながらも「わかった」と返事。
忘れないでほしい。私は非常に奥手であることを。
それでも、聞かなきゃ始まらないこともちゃんとわかっていた。

年を越えて、ラストがマネージャーと彼と私だけの日。
お店の裏口から駐輪場に向かう途中、意を決してLINEしてるのか尋ねたものの、彼の言葉が聞き取れなくてついつい話を終わらせてしまった。

それから1ヶ月。
LINEの話題はだしたのに聞けなくて、今さらもう一度LINEの話題を出すのは躊躇われる。
一応車の免許は取得済みで、親の車も借りれるけれど、彼が自転車できているから私も自転車で通勤していた。
駐輪場について、
「あの、連絡先教えてほしいって言ったら、やですか?」
自転車のロックを外しているIに勇気を出してたずねた。

「Cさんに聞いてくれたらよかったのに」
Cさんはおばちゃまのこと。
Iは笑いながら、悩んでいたこと躊躇っていたことがばかみたいに意図も簡単にLINEを教えてくれた。


「LINE交換できた!」
必死で自転車を漕ぎながらTに電話をかけていた。
2月の夜の空気は冷たくて、高揚した気持ちを落ち着かせてくれる。
はずだったのに。
「あれ?Hさん?」
自転車を漕ぐ私の後方からIの声。思わずTとの電話を切らずに返事をしてしまった。しばらくIと会話をしながら並列運転。
切り忘れた電話越しにTの笑い声が小さく聞こえる。
「じゃあ、俺ここだから」
そういって彼は右折。私はまた必死になって電話片手に夜を漕いだ。