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文学フリマ7回目(雪)

 日曜日、文学フリマ広島へ初参加してきた。明けて翌日、広島から福岡へとひた走る下道、休憩中の車内にてこれを書いている。遠征の感想をつらつらと書いて、ついでに気分転換もしようという魂胆だ。車も増え始めるタイミングなのでちょうど良い。連なるテールランプを眺めながらキーボードを叩いている。

 今回の遠征は、昼にイベント出展、夜にライヴというスケジュール。初めての試みだ。前日に広島入りし体調とメンタルを整えておく必要あり。なので事前に宿を予約した。会場から1時間弱。料金もお手頃。

 しかし私には土地勘がなかった。イベント前日、やたら「最強」と謳われる寒波が到来するなか、広島への下道をひた走る。そして予約した宿が近づいてきた頃に気付いてしまった。今日の宿、峠を越えた場所にあるではないか。

 時刻はちょうど日没。ピタとやんでいた雪が、再びチラホラと降り始めていた。生まれてから九州にしか住んだことがなく、雪への耐性も知識も乏しい私は一抹の不安を抱えながら峠を登る。案の定、どんどん景色が白くなっていく。まだ車通りはあり、スリップもしない。だか「明日宿を出られるのか」というのが切実な問題に思えた。

 一旦車を停め、宿に電話を入れてみる。目的地がどの程度の標高なのかも未知数だ。非常に感じのよい男性スタッフ(恐らく70代)が言うには「大丈夫」とのこと。しかしその口ぶりから、私は逆に覚悟を決めた。あの感じの人がいう「大丈夫」には「死にはしないから」という単語がセットで続いているように思えたからだ(偏見)。

 本格的に冷え込む前に宿につき、荷物を下ろしてから窓を明けてみる。目の前には美しい真っ白な世界が広がっていた。美しいだけでなく、やけにしんとしている。雪が音を吸うのだろう。そしてその景色を見ながら思った。明日はフリマどころじゃない。生きて下山するのが目標だと。

 翌日、おそるおそる外の様子を確認しに出る。天気は快晴だが、家屋の屋根や歩道はバチバチに真っ白だった。しかし、アスファルトだけはすでに雪解けしている。あれが熱を帯びやすい素材だというのは本当のようだ。実際、雪景色に囲まれながらも、危なげなく峠を下ることができた。宿の人ありがとう。

 そんなこんなでようやく1日が始まるのだが、もうすでに充分書き殴ってしまった。今回の遠征を一文字で表すとしたら「雪」になってしまう。前日からハラハラし続けたからか、当日は全ての出来事にありがたみを感じた。

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ナナシナタロウ
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