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旅する道、雪降る長野へ
子どもの頃は寒波が来るたび、今夜雪が積もるか積もらないか、それだけが最重要案件だった。
朝窓の外を見てまずチェックするのは、あそこの植木の草に手付かずの雪があるな、駐車場の車のボンネットからもけっこうな量を確保できるな…など。とにかく脳内で雪の入手方法について考えを張り巡らせる。そしていち早く遊びに行くのだ。
大人になってからはどうだ。
正直、車の心配しかない。基本的に公共交通機関から離れた土地に住んでいるため、唯一頼れるのは自家用車である。ちっぽけな普通自動車、しかも二駆である。職場までは凍結路が心配されるポイントが少ないためスタッドレスは履いてないが、とにかく身構えてしまう。
それに比べて、よく食べる人は雪道を走るのが好きである。スタッドレスを新品にした年などは嬉々として山へドライブへ行くのだ。
ということで、その嬉々とした、短めのドライブ記録です。
山賊焼でエネルギー補給
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雪の心配がない中央道を突っ走り昼頃に松本に到着。小牧JCTから休憩挟んで3時間ほど、交代で走る。高速自体に積雪はなかったが、運転しながら雪景色はちらほら見えたので、作業車が頑張ってくれてるんだろうな〜と思った。ありがたや。
向かいながらランチ会議。お蕎麦か山賊焼かと話し合った結果、長野の地鶏を使った山賊焼に決めた!大きくて衣さくさくで美味しかった〜。お米も美味しいし、なんともいいスタートを切った。
美麻へ走る
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松本市から大町明科線に乗り込みひたすらまっすぐ走る。最初は町だったのがだんだん田園風景、そして山道に入っていく様が楽しい。雪も北上するたび深まっていく。
写真のような本格的な山道に入って、美麻の中山高原へ向かって車を走らせる。道が広く、勾配少なめなので、スタッドレスの四駆であればわりかしスムーズに走れた(油断は禁物です)。
油断はしていなかったが、この道の側道で完全に雪にハマってしまった車が立ち往生していて、40分ほどロスった(仕方ない)。
素敵な喫茶店へ🏠
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この雪山の中来たかったのが、美麻珈琲☕️
雪道の中さらに1本道の坂を上がったところの高原の中、孤独に佇んでいる喫茶店です。
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凍えながら中に入ると、空気が全く違って震えた。冷えきった頭の先から足先まで、一気にぬるま湯をかぶったような感覚に陥る。
温かい。温かいが過ぎる(日本語がおかしくなる)。その正体はこの暖炉である。
定期的にお店の方が薪を焚べており、やっぱりものを燃やす炎の暖かさは格別だなあ、なんて思った。電気ストーブやエアコンだけじゃこんなにぬくぬくした気持ちにならないもの。
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自家製のお菓子たちが書かれたメニューを見て迷いながらも選んだ、サントアン・トリフという名前のケーキ。お家の形をした可愛らしいチョコレートケーキである。見た目からしてこっくり濃厚なんだろうな……ということが伝わってくる。ちなみに気になってサントアンという単語を調べたら、フランスにサン=トゥアンという地名に辿り着きました。関連しているかどうかは分かりません。
旅館のお夕飯を控えていたので二人で半分こしようという話になり、それぞれ珈琲とカフェオレ、ケーキを一つ頼むと、フォークを二つつけてくださった。優しさも温かい。
フォークをさした瞬間にずっしりとした生地を感じる。絶対美味しいやつじゃん。
生チョコっぽさのある部分と、ココアスポンジの相性が素晴らしくって、なんでこんなドンピシャなチョコレートケーキが、こんな家から遠いところでしか食べられないんだ…?という気持ちが生まれ始める。メゾンボングウのシュークリーム然り、ロミユニのスコーン然り。『ここのが一番好きなのにまあまあ遠い現象』、食べる旅をしているとたびたび起こるから怖い。食べるためだけに何百キロも移動してしまう自分が怖い。
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ドリンクについてくる小さなお菓子が、まあまあボリューミーなスコーンでした。日によって変わると思いますが嬉しかったです。
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夏はきっと一面の若葉色で迎えてくれるであろう高原を眺める。また夏休みに来たいと思いつつ、雪の中の暖かい静寂を味わってしまったら、もう一度冬にも訪れたい、そう思える場所だった。
ちなみに敷地のお隣に一棟貸しのはなれがあるので、そちらもまた訪れてみたい……!
白骨温泉に着!すぐに夕餉!!
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ロスタイムもあり、予約チェックインの時間を過ぎてしまった(本当にごめんなさい)ので、到着するなりすぐにお夕飯のお部屋へ。2年ぶり白船荘の会席料理だ〜〜!!
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ひとつひとつの料理が美味しいのはもちろん、季節のものと地のものをふんだんに使われているのがいい。旅館のお夕飯って、日本の最高文化すぎるよね。最後は根菜たっぷりのお蕎麦で〆てごちそうさままで、目も舌も癒されまくった。
そのあとは一息ついてお風呂を楽しんで、来る明日のためにぐっすり寝た。
お宿もいくつかあるので気になる方はぜひ♨️冬は運転が大変なのでお気をつけて。
雪降る諏訪大社へ❄️
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次の日、雪の山道を下り松本市街地を抜け、諏訪湖へ。車を降りて本宮へ向かって歩きながら、ずっと雪景色で、自然の力がひしひしと積もっていくのを見ていた。こんな神々しいって感じたの、今までないや。雪がしんしんと降るって、こういう場面だったんだなあ。
実はこの日、行き道に雪山のトンネルでトラックと観光バスのすれ違いができず、30分以上通行が遮断されてしまい両方向渋滞というトラブルがあった。極寒の中で交通整理をしたため体も心が疲れていたのだが、こんな風に美しいものを見るとどうでもよくなるもんなのだな。でもこっちが頑張って交通整理してる時にスマホで動画撮ってた若い兄ちゃんは許さん。雪だるまに食われる夢を見ろ。
まだまだ私は仏にはなれないと悟った。以上です。
また神々しいところ
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諏訪大社からそのままツルヤへ。気付いたら晴れてる。長野は天気が変化してるというより、標高差で天気が簡単に変わる、この混乱を楽しむのも長野の醍醐味。
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ツルヤといえばジャム棚の陳列に興奮するのが恒例ですが、カレーの棚もそそりますね……。この前買ったレトルトカレーがめちゃうまだったので今回も買いました。非常食にしたいけどすぐ食べちゃいそう。
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諏訪湖に来たら太養パン!そして牛乳パン🥛ツルヤで飲むヨーグルトを買ってはむはむと食べる。長野はパン屋がどこも美味しくて素晴らしい。この日は夕方まで長野を満喫して、山梨へ向けて車を走らせた。少しうとうとしてると雪景色はいつの間にか消えていて、だから冬の長野は幻みたいなんだなと思った。
雪降る長野を走る旅でした☃️
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旅行記としては一泊二日なので短めですが、雪山ならではのトラブルや感動に見舞われる大忙しな旅でした。
ヴィーナスラインなんかは閉鎖してるし、豪雪地帯だと夏だけ営業の場所も珍しくないけど、雪の中でひっそりと、うんと部屋を暖かくして待ってくれている人たちがいる。どんな気持ちで薪をくべているんだろう。
今回泊まった宿も、国道から外れたあとは細い県道だった。地域の旅館の方々が除雪車を走らせていなければ、2mは積っているに違いない。おもてなしというには軽すぎる、なんだか言葉にできないや、と投げ出したくはない。そんなじーんとした気持ちになる。
今回はいっそう道を感じる旅でした。また違う雪の降る土地へも足を運びたいな。では旅する道、これにて!