スタジイが見せた、原生林の森
肥後細川庭園を抜けて行く永青文庫は、石の丸門が入り口です。通用口でしょうか。
正門にはスタジイの大木が1本、出迎えるように立っています。傾きながら雨風を防ぐかのように覆いたつそのスタジイは、スタジイの森(香川県の豊島てしま)を思い起こさせました。
豊島のスタジイの森は、原生林の植生がそのまま残っている貴重な森です。瀬戸内国際芸術祭2010の公式ガイドブックに紹介されるや否や、「まるでトトロの森のよう」と大勢の観光客が立ち入るようになりました。スタジイの根が踏まれ、植生が乱れてきたので豊島の人はやむなく立ち入り禁止にしました。素晴らしい場所を見てもらいたいけれど、森を守りたいと。
芸術祭の参加アーティストが、スタジイの森を会場に作品を展示したいと言う動きがありました。豊島の長老が、アーティストに頼まれて土地の所有者に紹介した話も聞きました。
入り口には蔦に覆われたハウスの残骸があり、ひっそりと森に同化していてます。実はガラスでできたハウスで、花卉栽培に使われていたのです。まるで風化した作品のように見えます。
スタジイの森は、正式には「豊峰(とよみね)権現社の森」、香川県の県指定自然記念物です。子どもの頃、小学校へ行くのに毎日スタジイの森を駆け抜けていった、と言う開拓団に暮らした人の話も直接聞きました。朝はいいのです、下りだから。帰り道はちょっとやそっとでは帰れなかったと言います。登り道を道草しながら行く、子どもの後ろ姿が思い描けます。永青文庫のスダジイは、豊島のスタジイと繋がっているかのようでした。
さて、永青文庫。館内は撮影禁止。twitterで中の様子が紹介されています。
永青文庫は、昭和5年(1930)に細川家の事務所として建築された「家政所」を、美術館として利用しています。
https://twitter.com/eiseibunko/status/1365467270084841472
細川のお殿様、自慢のコレクションの回でした。