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豊島と移住者のソーシャルディスタンス
豊島(てしま/瀬戸内海)のおかあさんと電話で話すと「ひとっ子ひとりいない」と言います。おとうさんと車で豊島を一周しても、誰とも会わないそう。
「静かなもんよ」
豊島事件の住民運動を婦人会で支え、公害調停成立後は豊島事件を学びに来島する大学生に食事を作り、地域の集まりでは郷土料理を振る舞うなど料理上手で社交的なおかあさんは、変わらず元気です。ひっそりとした島の暮らしにのびのびとしているかも。2019年はトリエンナーレの瀬戸内国際芸術祭で、豊島は異常な賑わいでしたから。世界が賞賛する、一度は旅したい瀬戸内海ですから。
ラスト豊島は3月。この時は、おかあさんとすみ子お姉さんとドライブをして地中海料理のARUEIでパスタランチ。すみ子お姉さんのところでお茶をしました。
豊島の🌸はまだまだ蕾、咲き始めた木もあります。島内を🚗、唐櫃ルートで2回も登坂をバック、一方通行だった⁉️
— やましたなみ (@yamashita73) March 21, 2020
お茶受けに、甘いからつぎはこれね、とだしてくれたオリジナルミックス瓶、カラムーチョとなんか。いいなあ💕 #豊島 #teshima pic.twitter.com/Qva0pUvDmP
豊島事件の跡地は今、どんな風になっているでしょうか。住民運動のリーダーのお一人、石井亨さんに聞くと「会議が開けないんですよ」と言います。技術検討委員会や弁護士との協議、いずれも自粛です。それでも、現場は水処理を続けています。海風の音や青い空、掘削跡地に立って長老たちが勝ち得た「原状復帰」「完全無害化」を定点観測できないことが残念です。
太陽光問題も凍結。島内で集まりが持てないのです。ソーシャルディスタンス。島内に光は来ていますが、スマホではない携帯電話ではウェブ会議はまだまだ。そんな中、移住して来た方達を中心に、島へ来ないでキャンペーンがローカルテレビに取材されました。豊島の総意と解釈していいのでしょうか。ゲストハウスなど宿泊業が営業しているから観光客は泊まることができるのです。観光客向けに営業している店舗があって、かたや移住者が総意のように「島に来ないで」とSNSで拡散する乖離。
豊島を共同体として研究する石井さんに聞きました。
ーここ2ヶ月のムーブメント、自粛という強要について、発信する側と受け手である国民の状態に感じることはありますか?
この状態は2波3波が来て、1年ぐらいは続くと思います。大学の後期にゼミの授業を担当する予定で、豊島からオンラインになりそうです。そして、若い人の意識が大きく転換するでしょう。すでに気付き始めていますから。
意識の転換。それは、移住者のパフォーマンスとは違うのだろうと思います。緩やかにひたひたと日常が変わっていく中、豊島事件の今を整理していかなければと思っています。