妄想 カレー西域記(1) ガンダーラはどこに

わたしが子どもだったころ、ゴダイゴが好きだった。そして、テレビドラマ「西遊記」のエンディングテーマが、ゴダイゴの「ガンダーラ」だった。
何度も再放送されたようだが、ドラマを見る機会は実はなかった。ただ、ボーカルのタケカワユキヒデが甘い声で歌う歌詞は、折り折り耳にしていた。

♫ そこへ行けば、どんな夢もかなうというよ。

そこが、ガンダーラなのだという。なんて素敵なの。
「ガンダーラ」という土地の名は、どこか物淋しいメロディーとともに、子どもの胸に刻まれた。

子どもは高校生になった。
世界史の教科書でガンダーラと再会した。古代インドの仏教美術・ガンダーラ様式は、ボロボロの、壊れかけの、鼻の欠けた石像として、白黒写真として紹介された。天然色の夢がモノクロームになった。かつてユートピアだった土地の残酷なリアルだった。
ガンダーラへの関心は失われた。

あれから56億7千万年相当の時が流れました。
わたしと友人は、超高速で、北関東は群馬県の館林市へ車を走らせました。目的地はパキスタン料理店、パミールマートです。
前の予定が押して、店にはランチタイムを外した時間に着いたのですが、それが幸いして、シェフのウスちゃん特製「ペシャワリチキンカラヒ」(写真下)をいただくことができました。「ペシャワリ」とは、「ペシャワール地方の」といった意味です。

画像2

これがまことに美味しかった。
ので、自分でも試作しようと、ネットでレシピをあさりました。
そうこうするうちに、なんということでしょう。
ペシャワリチキンの本場ペシャワールが、「ガンダーラ王国」の首都だったという記述が、目に飛び込んできたではないですか。
「まじすか」。

パキスタン通にはそんなこと常識なのでしょうね。
でも子ども時代から、わたしは信じていたんですよ。
そこがインドにあるって。
だって、甘く歌ってたじゃないですか。
タケカワさんが、こんなふうに。

ィンガンダアーラ、ガンダアーラ、
デイセーイッッワーズィニーンディア
ガンダアーラ、ガンダアーラ、
ダプレイソブライ ガンダアーラ

ねえ、そこは、インディアなんでしょう? 

1978年の楽曲です。インド・パキスタンの分離独立が1947年。
愛の国ガンダーラは楽曲が生まれる30年も前から

「パキスタン」やないかーい。
        ないかーい、
        ないかーい……(←エコーからのフェイドアウト)

もし、ガンダーラがパキスタンにあるのなら、パキスタンのある北関東や富山のイミズスタンに、ガンダーラがあっていいはずではないですか。
おや、これは青い鳥はこんなところにいたんだね的な、やっぱり我が家がいちばんいいねえ的な? 長い旅してたつもりだけどお釈迦様の手のひらね、みたいな? 
そういうことなんですか? 三蔵法師さんよお、ゴダイゴのみなさんよお。ミッキー吉野さんよお。

to be continued


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